くらす!(3)
「えーっと、桃子の説明で概要は理解してくれたかな。では進めるよ。この異世界においては実に数百のクラスが存在する。クラスは基本職、中級職、上級職に分かれていて、君達はこれから基本職を選ぶことになる。ここまではいいかな?」
「ふふっ、それだけ?隠してる情報があるんじゃない?きっと上級職の更にうえに特殊な条件で獲得できる最上級職が………んぐっ、何するのよ、ちょっ………」
「あははっ、2人とも元気だね。アールピー、続けて」
ユウが再びマシンガンのような勢いで話出そうとした桃子の口を塞ぐと、このみがアールピーに促す。
「こほんっ、君達が選ぶことの出来る基本職がコチラだ」
アールピーが一度左右に大きく尻尾を振ると、空を覆わんばかりの巨大な半透明なモニターが上空に現れる。
画面にはビッシリと基本職の名称と簡単な特徴が書き連ねられ、前衛•後衛などのカテゴリー事に並んでいる。
「壮観だね」
「この中から選ぶんですか………どうしよう、全然わかんないです」
ノノカはこのみに返答するわけでもなく、表情を曇らせ一人呟いた。
「たしかにここから選ぶとなると一苦労だね。アールピー、オススメのクラスを聞くのはルール的に大丈夫?」
「残念ながら期待には答えられないな。クラス決めは序盤のメインディッシュだからね。どう考え、何を選んだか、君達の知恵、感性、戦略、そういったものの発露こそがこの番組の醍醐味でもあるのさ」
「ケチ。詐欺のお詫びにヒントくらい出すべき」
「あれは君達への配慮であって、不利益になるような事は一切発生していないわけだし、詐欺の構成要件は満たしているとは言えないな。ただ攻略という視点を抜きにヒントを出すとすれば、勇者、戦士、僧侶、魔法使い、盗賊と言ったようなオーソドックスなパーティーは視聴者である神々に必ずしもウケが良くないという事実はあるね」
「どうして?」
「飽きているのさ、王道に。転生者の中には大抵一人くらいゲームや小説、コミックを通して剣と魔法のファンタジーというやつに詳しい子がいるんだけど、その知識を元にパーティーを組み立てるとどうしても構成が似通ってしまってね。前衛に後衛、物理に魔法、探索や罠解除まで、バランスよくこなせるのは魅力だけれど、エンタメ性という観点からすると面白みに欠けるのは否めないね。他に質問はあるかい?」
アールピーの問いかけに、このみは静かに首を横に振った。
「ないなら、1時間猶予を設けるから、君達で話し合ってそれぞれのクラスを選んでくれ。そうだ、もうひとつアドバイスしておこう。クラス選択を後日に持ち越すという対応も可能ではある。実際、過去には中盤まで敢えて選ばないという作戦を取った参加者もいた。しかし、クラスの成長は時間経過やクエストの進行による習熟度が大きく影響するんだ。よほど明確なビジョンを持っていない限り、クラス選択を遅らすのはお勧めはしないよ。さて、ボクは編集に戻るから、決まったら声をかけてくれるかい。では」
アールピーは手を振るように尻尾を動かし、時空の切れ目に溶けこむように消えていった。
誰のものなのかため息が漏れ、安堵と焦燥が入り混じった混沌とした空気感だけが場を支配した。
「まさに暗中模索ってやつだね」
「このみにしては知的」
「ははっ、こう見えても現代文は悪くないんだよ。あーっと、あんまり無駄話してる時間は無いかな。単刀直入に聞くけど、皆はなりたいクラスはある?私は全くイメージが沸かないから、不足しそうな役割を補うよ」
「私もこのみ先輩と同じで良いですか?むしろ『ノノカはこれ』って指定してくれた方が嬉しいです。自分が何に向いてるかなんて、全然分からないし」
「却下」
ユウが短い言葉で二人の提案を否定する。
「ユウ、ひょっとして、なにか良いアイデアでもあるの?」
「もちろん」
ユウは自信満々に応えると、続け様に言った。
「神様が見てる番組なら、クラス決めも神様に手伝って貰えばいい」
「「「神様に!?」」」
ピタリと重なる声に、ユウは不敵な笑みを浮かべながら、ピンと親指を立てた。




