なかま!(2)
「あれ?うるるちゃんと同じ中学ってことは、私とも一緒だったってこと?そっか、だからさっき………ゴメンね、人の顔覚えるの苦手で」
ノノカは顔の前で顎を挟むように手を合わせると、失態を誤魔化すように笑った。
「仕方ないわ、私もあの時から随分変わったしね。でも、ノノカは変わらないわね、こうして話してると昔を思い出すわ」
「あ………そ、そうだね、懐かしいね。はははっ………」
「あっ、これ絶対覚えてないやつですよね、解説のユウ先輩」
「そうですね、学校の中でも常にカースト最上位で異性同性問わず数多くの友人に囲まれているノノカ氏と、毎年クラス替えの度にデビューしなさなければいけないナード代表の自称なぎさ氏の関係が深かったとは、到底思えません。あいまいな返事で時間を稼いでいるうちに、記憶を辿ってるとみるのが正しいでしょう」
「二人して失礼な解説つけない!!」
「まさか本当に覚えてないの?いいわ、まだ記憶が混濁してるようだし、思い出させてあげる。あれは2年の春、家庭科の調理実習で一緒だった時の話。ほら、ノノカがサバの味噌煮の調味料の量を間違えて持ってきて、違うグループで調理してた私が今にも泣きそうだったあなたに、そっと手を差し伸べてあげたことは覚えてるでしょ。別に恩に着せようと思ってるわけじゃないから安心して、でもあの時は短い間に3回は会話したわね。私と話すのを緊張したのか少し伏し目がちに『真宮寺さん?って料理上手なんだね、すごいね、羨ましいな』って言ったノノカの顔ったら、そんなに褒めないでって私の顔が赤くなるほどだったんだから。それに3年の時、体育で同じグループになったことも3回………ミニサッカーで急遽1回同じになったこともあったから、正しくは4回あったわね。バスケであなたがレイアップはずしたとき『誰だって私みたいに出来るわけじゃないんだから、落ち込まないの』って励ましてあげたら、恥ずかしかったのか何度も私を頭の先から足の先まで見回したあと『冷泉さん?ってバスケ上手なんだね、すごいな、羨ましい』って嬉しそうにしてたわよ。べ、別にこれも恩に着ろってわけじゃないから。ただそういう気軽に話す友達…………間柄だったってことを確認してるだけ」
自称なぎさが呪文を詠唱するかのようにノンストップで言い終えると、時間停止魔法が発動したのかと思わせるほどの沈黙が場を支配した。
「………………こわっ」
「あっ、ユウ先輩、ぼそっと呟くのやめて貰っていいですか、リアルな反応っぽく聞こえるので」
「今の話さ、ノノカちゃん絶対名前書いてあるとこ探しながら会話してるよね、返しもテンプレっぽいし…………」
我慢できなくなったのか、このみもユウとうるるの会話に加わる。
「とりあえず褒めて会話を終わらそうという鉄の意志を感じる。しかし、悲しいことに1日数十人と会話する陽キャと、1週間に数人としか会話しない陰キャじゃ、会話の重みが段違い」
「えへへっ、わかります、ちょっと話すと立派な思い出になりますよね、私にも多くの輝かしき日々が………。あっ、でも吉田さんは会話すると加点方式で好感度が上がる仕様だと思ってるタイプなんで、気をつけてください。多分、他人と話した会話全部覚えてますから」
「中々パンチの効いたボッチ力。うるるも負けないよう研鑽を積むように」
「はい、頑張ります」
「さっきから全部聞こえてるんだけどっ!?陰口なら少しは聞こえないように気を遣いなさいよっ!!だいたい、うるる、あんた私とぼっち対決する位、こっち側の人間だったでしょ!!」
自称なぎさが人差し指をピシッとうるるに向け糾弾する。
「うるるちゃん、そんな不毛なバトルしてたの!?」
「はい、唯一勝てそうな相手に挑まれたんで、受けて立ちました。案の定、圧勝でした」
うるるは珍しく背筋を伸ばし、誇らしげに勝ち誇る。
ワイワイと盛り上がる少女たちの中、アールピーだけが無言で佇んでいた。




