いせかい!
書き溜めなしで見切り発車しているため、3連休は気合で毎日投稿しますが、それ以降は週2位が限度かもです。ほかに書いている作品が行き詰って息抜きに書き始めましたが、とりあえず区切りがいいところまでは完結させるので、気楽にご覧いただければ幸いです。
夏の日差しが窓から差し込み、車内を照らしている。風景は一面の山。バスの揺れに合わせて座席が微かに揺れる。窓の外には延々と続く緑が広がり、遠くには青い空と白い雲が見える。
「うわっ、うるるちゃん見てみて、山だよ山!!」
一人の少女が興奮気味に窓の外を指さす。
「ノノカうるさい。1時間以上ずっと山道」
「仕方ないじゃないですか、ユウ先輩、景色がずっと変わらないんだし、無理やりにでもテンション盛り上げてかないと!!うう~、早く宿に着いて絶景スポットで撮った画像SNSにあげたい~」
ノノカはそう言うと、これみよがしにスマホをかかげた。
「ははっ、こんな山奥じゃSNS映えする写真も撮れないもんね。そうだ、道の駅で買った牛の鼻輪スマホリング、これ使えば田舎に来たって感じするし、構図次第で良いの撮れるんじゃない?弟達のも買ってあるからちょうど人数分あるし。ほらっ、ノノカちゃん、うるるちゃん、リョウも窓のほうにギュッ~っと詰めて詰めて。写真撮ってあげる」
暇を持て余した後輩の姿を見て、このみは救いの手を差し伸べるかのように言った。
「出た。このみの甘やかし。全人類を駄目にする悪魔の囁き」
ユウはからかうような口調で呟いた。
「ダメになってるのはユウだけでしょ!!」
「このみ先輩ホントにそれ買ったんですか!?これ鼻に当てて写真撮るとか、甘やかしというより無茶ぶりな気が…」
ノノカはこのみから受け取ったスマホリングをまじまじと見つめ、意を決し鼻に当てる。
「…うへへ、カワイイ」
「生きてたか、うるる」
ユウは椅子の間に巣を作るように丸まっていた声の主を強引に引き寄せると、柔らかな両の頬にスマホリング押し当てる。
「うるるドーナツ出来上がり。いや、アンパンマンか…」
「うぅ、ユウ先輩やめてください、私の最高級シルクのような肌に間抜けな跡が…」
「はいはい、じゃれるのはそこまで!!じゃあ、撮るよ。はい鼻輪っ!!」
写真を撮り終えると少女達は声を押し殺して笑い、自分の席に戻る。
「都内の名門高校に通う美少女清楚系女子高生をのせ、険しい山道を進む一台の路線バス。美術部の名を借りたゆるゆるイベントサークルは遊び半分で合宿を企画するが、彼女たちを待ち受けていたのは想像すらしていなかった凄惨な光景だった。猜疑、怨恨、憎悪、嫉妬。様々な感情が交錯する極限状態において、彼女達が見たものは…」
「うるるちゃん、怖いナレーションつけないで!!」
「美少女清楚系女子高生………照れる」
「ユウが照れる必要ないよ、清楚要素0だし。だけど、日が暮れてきたし、人里離れた合宿所に泊まるって考えると、ちょっとホラーとかサスペンスっぽい展開なのは分かるかも。それに…」
このみは目くばせをし、口に手を添える。
「見て、一番後ろの席。帽子かぶってて顔が見えないけど、私たちのすぐ後に乗ってきてからずっといるでしょ。服装とか私たちと変わらない位の年齢に見えるけど、少し怪しくない?」
4人はめいめいに後部座席に視線を送る。
「ただの野良変質者でしょ」
「野良変質者って何ですか!?」
「…天才美少女清楚系女子高生の後をつけるようにバスに乗り込む謎の女。その正体は日本転覆を目論むCIAが送り込んだ凄腕エージェントだった。世界のパワーバランスを変えうる力を持つ大量破壊兵器の設計図の在処が知るされた鼻輪を巡り、少女と世界の命運を賭けたゆるふわサバイバルが今始まる…」
「ゆるふわ要素どこ!あとこの鼻輪投げ売りされてたけど、そんな重要だったの!?………でも気になりますね。ひょっとしたら行先一緒かもですし、あの子も他の合宿とかに後から合流するのかも。ちょっと声かけてみます」
ノノカはそう言うと揺れるバスの中、慎重に席を立った。
「出た、陽の暴力。暴走コミュ力モンスター。ほらっ、知らない人と絡む恐怖で、うるるが泡吹いて失神したでしょ。慰謝料として私にピン札の渋沢わたして」
「こらっ、ユウ、サラッと金銭要求しない。ノノカちゃんも山道で立つと危なっ…おわっ!!」
「きゃあっ!!」
突如バスがグラリと揺れ、ノノカが悲鳴をあげる。
「大丈夫!?」
「いてて、お尻ぶっちゃったけど、大丈夫です。もう、運転荒いですね。スピードもドンドン速く…」
「おかしい、いくら何でも速すぎる。ひょっとして峠最速目指してる?」
「冗談言ってる場合じゃないでしょ。あの、運転手さん、転んだ子がいて席に戻れないので、スピード緩めてもらっていいですか」
僅かに恐怖に震える声が車内に空しく響き渡る。運転席からの返答はなく、坂道を進むバスは一層激しく車体を揺らす。
「運転手さん!!」
このみは不安を抑えきれず運転席へと駆け寄るが、彼女の視界に映ったのは、まるで魂を抜かれたかのようにハンドルにもたれかかり、ピクリとも動かない初老の男性の姿だった。
「このみ、どうなってるの!?」
「わかんないよ!!みんな、なんでもいいから掴まって!!」
「…ノノカちゃん………ノノカちゃん」
「あれ…うるるちゃん。ここは………そうだ、合宿。バスで移動してて……………どうなったんだっけ」
目を覚ましたノノカは身体を地面に横たえたまま、ゆっくりと辺りを見渡す。
「真っ白………ここは………天国?思い出した、私たちのバス、崖から落ちちゃったんだ」
記憶のピースをひとつひとつ拾い集めるように言葉を紡ぐと、頬を伝う熱いものに気づく。
「泣いてるの?」
「だって…もう起きなかったらって………よかった…………よかった………」
ノノカは力の入らない腕をなんとか持ち上げ、震える指先で涙を拭う。
「ほら、ノノカが『邪魔だよ、どきな!!』って顔殴ろうとしてる。力を取り戻す前にどかないとボコボコのボコにされるよ」
「しませんよ、そんなことっ!!」
「思ってたより元気。新ジャンル寝起きツッコミも見れたし満足」
「こら、ユウ、怪我人で遊ばないの!!大丈夫?痛いところはない?起き上がれる??」
ノノカがこくりと頷くと、このみは身体の下に腕を差し込み、グイっと身体を起こした。
「………ここって病院ですか?」
「ううん、わかんない。私達も気が付いたらココにいたの。どれだけ声をあげても誰も来てくれないし、出ようと思ってもドアも見当たらない。バスも何処にもないし、大事故だったはずなのにみんな怪我ひとつない。ごめんね、こんな事になっちゃって…」
このみはそれだけを言うと、口を閉じうつむいた。
「うるる、ノノカも起きた事だし、この状況をお得意の即興短歌で表現して」
「えっ、やったことないです!!………吟じます。崖落ちて 意識戻れば 白い部屋 どう考えても 異常事態…だyo」
「吟じるって、ジャンル違わない?それに内容も見たまんまじゃない………ふふっ、なんだか力抜けちゃった、ありがとう」
ノノカの笑い声につられるように、真っ白で何もない空間に笑顔が満ちていく。
「全員目を覚ましたみたいだね」
「えっ?」
突如上空から聞き覚えのない無機質な声が降り注ぐ。
「スピーカー?だっ、誰ですか。わ、わかりました、天才薄倖美少女清楚系女子高生専門の誘拐クラスタですね!?そうだったら、私以外該当しないので、解放してあげてください!!」
「あっ、いや、誘拐クラスタ?………ごめんごめん、このままじゃボクの姿は見えないんだった。どうだい、これで君たちにも視認できるようになったかな」
何もない空間の輪郭が歪み、液晶が剥がれ落ちるように虚空に一つの姿を浮かび上がらせていく。
「……ぬいぐるみ?」
「犬とか猫じゃないですよね………ウサギのぬいぐるみですか?ははっ、このみ先輩、私ってば頭おかしくなっちゃんですかね。さっきまで何も無かった場所から、いきなり喋るぬいぐるみが出てきたように見えるんですけど」
ノノカはこのみの腕をギュッと抱きしめ、目の前の謎の存在と仲間の顔を交互に見る。
「失礼だな、ボクを下界の下等生物と混同するなんて。自己紹介が遅れたね。ボクは………そうだな『アールピー』とでも呼んでくれ」
アールピーと名乗ったウサギのぬいぐるみのような何かは、何もない空間に前足を伸ばすと、虚空から小さな台座を取り出し、その上にチョコンを飛び乗った。
「アールピー………あなたは一体何者なの?ぬいぐるみ?機械?ホログラム?それとも………」
このみは怯えるノノカを自分の背に隠すと、その得体のしれない存在に向け大きく一歩踏み出し、問いただすように言った。
「僕かい?僕は君たちが『天使』と呼ぶ存在。そして、これから君達が出演する神界の人気番組『ゴッドブレス』のプロデューサーさ。ヨロシクね」
自らを『天使』と名乗る異形の存在は、その固まった表情を塗り変えるように、愛らしい笑みを浮かべた。
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1コメ神)待ってました新シーズン!!そして安定の1コメ!!
2)また皆で盛り上げてこう
3)待望の17シーズン
4)今回の子たちカワイイし期待
5)初見
6)キューピーさんの番組が見れるのはゴッドブレスだけ
7)アールピーさんだ間違えるな
8)1コメ神おつ
9)色々見てるけどやっぱりゴッドブレスが一番面白い。前回消化不良だっただけに新シーズンも楽しみ
10)消化不良(意味深)
11)前回のアレで打ち切りにならなくて本当に良かった
栄養神)突然の展開に戸惑う女子高生からしか得られない栄養がある
13)栄養神、栄養神じゃないか!!すっかり瘦せ細りやがって…遠慮するな、好きなだけ栄養取れ
見逃さない神様)餓死して当然の栄養の偏り、俺でなきゃ見逃しちゃうね
15)初見だけど評判を聞いて
異国の神)彼女たちは混乱しているけど、無秩序に喚き散らしたり、険悪な雰囲気になっていなくて好感が持てる。新シリーズが僕たちにとっても彼女たちにとっても良いものであることを祈ってるよ
17)オレ、いつか異国神のような知的なコメントをするんだ…
18)今しろ定期
19)予告映像はここまでか。1話全部公開されるの今日の夜からだっけ、飯食って待つわ
本作は今回のように本編パートと番組を視聴している神々のコメントパートで構成する予定です。
そのうち、コメントパートだけで1話消費とかしだすと思いますが、ご容赦ください。