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フェルベールとクリスティーナのお茶会②

間が空いてしまい申し訳ございません。

今回のお話は少し遡り、フェルベールとクリスティーナの婚約直後のお話の続きです。

フェルベールの甘やかしに戸惑い困ったクリスティーナがエメリアーナ達に相談する場面です。


「と、言う訳なのです。エメリアーナ様?わたくしはどのようにしたら良いのでしょうか?」


 刺繍の図案を広げたテーブルとはまた別のテーブルでお茶を飲み、世間話をしていたエメリアーナとクリスティーナの二人は新作のスイーツを食べながら、先日のフェルベールとのやり取りを話していた。


「最近あの子ったら、うちに菓子専門の料理人を雇い入れたのよ!なんでも王都でお店を出していた、ええとなんて名前だったかしら......パ、パテ......」


「パティシエでございますよ、奥様。坊ちゃまはクリスティーナ様の為とおっしゃって、特にプリンを美味しく作る者を募ったようでございます」


「そうそう、そのパティーよ!あの子ね?うちの人間を使って何やら最近忙しくしていると思ったら、王都に出向いてそのパティーを探していたのですって!それで雇う人間が決まったからそれで終わったと思っていたのね?でもそれで終わりではなかったの。それがなんとあの子ったら王都にそのプリンの......」


「奥様!いけません!それ以上話されては坊ちゃまのサプライズがサプライズではなくなってしまいます。せっかく坊ちゃまが秘密裏にプリン専門店を立ち上げ、クリスティーナ様に驚いていただこうという計画が水の泡となってしまいます」


「そうだったわ!ごめんなさいねクリスティーナ、気になるでしょうけどこれ以上はわたくし達の口からは何も言えないわ......あの子に叱られてしまうもの。だから貴女は何も知らないていでサプライズを楽しみにしててちょうだいね?」


「は、はい......頑張って驚きます?」


(どうしましょう、多分だけど計画の大筋を知ってしまったわ。鋭いフェルベール様の前で知らないふりをしたまま上手に驚けるかしら?)


「それで何だったかしら?ああ、そうそう貴女を膝に乗せて食べさせるという事ね?んー、いいんじゃない?嫌いなものを無理やり食べさせられている訳ではないのでしょう?それともクリスティーナはあの子の膝の上が居心地悪いの?それならハッキリと言った方がいいわよ?」


 相変わらずエメリアーナはあっけらかんとした考えで、簡単な事のように言ってくるがクリスティーナにとってはそうではない事がほとんどなので困っていたのだ。


「辞退しても聞き入れてはもらえないのです。勿論嫌などと言う訳ではないのですが......食事をすることなどは自分で出来ますし、何より緊張してしまってフェルベール様の事ばかり考えてしまうのです」


「嫌なら嫌と言いなさい、あの子の事だもの何でも分かるが故にわざと気付かないふりをして、貴女が困っている姿さえ楽しんでいるのよきっと」


「やはりそうでしょうか?わたくしも薄々その様な気はしていたのです!そうですね、エメリアーナ様のおっしゃる通り次にもその様な事がありましたら、わたくしきちんとお断りしますね」


「いけませんクリスティーナ様、貴女様に否定などされては坊ちゃまのライフは即座に無くなってしまいます。あの方には貴女様だけが希望の光であり、女神なのですから......何卒ご慈悲を!」


「ハリー爺や?それは大袈裟過ぎやしないかしら?だってフェルベール様よ?私がフェルベール様の事をお断りしたぐらいでは......」


 ハリーからの進言にクリスティーナが答えていると、ーガチャンーと音がした。そちらを見るとフェルベールが入り口のカートにぶつかったのだろう、そのままゆっくりと近付いてきてクリスティーナの前に跪いた。何事かと驚くクリスティーナであったが、彼の話を聞くと盛大な勘違いをしている事が分かった。


「クリスティーナ、君はまさか俺との婚約を断ろうと言っているんじゃないだろうな?何が悪かったのか教えてくれ!頼む。俺は君以外とは婚約どころか結婚だってしないと決めているんだ」


「お待ちくださいフェルベール様わたくしは決してその様な事は申しておりません、わたくしがお断りしたいのは......」


「いや、待ってくれ、どうか考えなおして欲しい。俺の至らないところは言ってくれていい。でも断るのだけはどうか!」


 孤高の銀狼?学園や巷のイメージは見た目も含めて『完璧』。まさにその二文字が相応しいフェルベールの狼狽する姿にどっと笑いが起こる。しかし事情を知らないフェルベールにとってはそれを気にする余裕はなかった。


「フェルベール?あなた自分の気持ちばかりをクリスティーナに押し付けてはダメよ!フフッフッ、何がダメだったのか少しは自分で考えなさい」


「ククッんんっ、そうですよ坊ちゃま?己の何が悪かったか考える良い機会ですので、ここはクリスティーナ様にお尋ねするだけではなく、ご自分の普段の行動を振り返ってみては?私が散々申し上げていたではないですか」


 クリスティーナが慌ててフェルベールに説明しようとするのを、二人がここぞと邪魔をしてきた。ハリーはフェルベールの分の紅茶と新しい紅茶を淹れながら、エメリアーナはクリスティーナの刺繍を眺めながら笑いを誤魔化しつつフェルベールを焚き付けていく。


「ハリー!お前に言われている事は常に気を付けているし、母上も!笑い事ではありません!公爵家の問題に直結するのですよ?」


フェルベールのこの様な姿は、幼い頃とてそうはなかった為二人とも出来るだけ引き延ばそうとするが、「公爵家の問題」とあってはとクリスティーナが全てを白状してしまった。


残念そうにするコンビとは対照的に申し訳なさそうに話すクリスティーナを見たフェルベールはある事に気付いた。クリスティーナの正直な心の声が聴こえ始めたからだ。先程までは心の声が全く聞こえずその事もあってクリスティーナに拒絶されたのだと勘違いをしてしまっていたからだ。


 自分の勘違いであった事を知らされ安心はしたものの、母親達への不満を募らせると同時にもう一つ不思議に思う事があった。それは、一時的とはいえ何故クリスティーナの声が聴こえなくなっていたのかと初めての状況に戸惑うフェルベールなのであった......。



この作品が完結を迎えて早半年が経ちました。

有り難い事に未だこうして読んでくださっている読者の皆様に心からの感謝を申し上げます。

寒い日が続き、風邪やインフルが流行っておりますので、皆様もどうぞお体をご自愛ください。


ps、先日Ⅹ(旧Twitter)にて読者様に直接お声を掛けていただき、驚きと共に嬉しさが天元突破した白猫でございます。今後も気軽にお声掛けいただけることを夢見て創作に励んで参りますので、この作品共に雪原の白猫をよろしくお願いいたします。

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― 新着の感想 ―
通りすがりの山の下というものです。 作品拝読いたしました。めちゃくちゃ面白かったです。いわゆる「婚約破棄モノ」に分類されるのでしょうか、キャラクターの魅力や優しさの表現が読んでてここちよく、ざまあされ…
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