フェルベールとクリスティーナのお茶会①
今回のお話は少し遡り、フェルベールとクリスティーナの婚約直後のお話です。本編は駆け足で完結しておりますが、書籍版では二人のラブラブエピソードが追加されます。
そして今回こちらのWEB版が200万pvを達成しておりました事を記念して特別編を書いてみました。本当に沢山の方に読んでいただけて感謝の気持ちで一杯です。特別編が何話か続きますので、この後もお立ち寄りいただけると幸いでございます。
公爵家の一室、お茶会のメンバーはエメリアーナとクリスティーナ、そしてフェルベール。(ハリー)
婚約を報告してからはこのメンバーで集まる事が多くなり定例会ともなってきている。経緯としては、フェルベールと二人きりになる事に慣れないクリスティーナがエメリアーナに泣きついた事が発端であり、面白がったエメリアーナ達がそれにのっかった......もとい、心配したエメリアーナ達が協力する事となったのである。
最初の頃フェルベールとクリスティーナが二人でお茶をした際、宣言通り殊更にクリスティーナに甘くなったフェルベール。しかし思い出して欲しい......この二人はお互い恋愛初心者なのである。それなのにフェルベールはクリスティーナを膝に乗せ甲斐甲斐しくケーキを口に運ぶのだ。
(待って!恋人同士とは普段こんな事をするの?二人の時だけ?え?どうするのが正解なのぉ)
クリスティーナは初めての体験を味わっていた。マルコムとのお茶会の時を思い出してみるが、勿論全くと言っていいほど全てが違うのだから戸惑い慌ててしまうのも仕方がない。
マルコムとは何を話していたか?どんな感情だったか?クリスティーナは現実逃避したいわけではなかったが、ふと過去に意識を飛ばしていた。しかしそれに気付いたフェルベールがクリスティーナの顔を覗き込む、至近距離だ。
「クリスティーナ?どうした?もう食べられないか?他のがいいか?そうだ!プリンも用意しているからそれにするか、早速準備をさせよう!」
「ち、違いますフェルベール様!こちらだけで結構です、そのように沢山は食べられません」
『え?プリン?プリンなら....食べたい......でも面倒をかけてしまうからお断りしなくちゃね』
「フッ、フフッ......クリスティーナ?実は俺はな、他人が考えている事が分かるんだ。それも君の考えている事は特にだ、だから隠し事をしても無駄だぞ?プリン、食べたいのだろう?」
彼が言っている事は事実で、フェルベールは他人の心が聞こえる力を持っていた。それは建国の女神であるフリッグ様の加護であり王族の系譜に連なる者に現れる特殊な能力であった。本来ならば口外無用であり、無論フェルベールもエメリアーナもそれを固く守っていた。しかしフェルベールは相手が信頼するクリスティーナであった為、半ば冗談交じりに話したのだった。それに話したところで信じないと思っていたのだ。
「まぁ!では父が言っていた事は本当だったのですね!さすがフェルベール様ですわ、でもわたくしプリンを食べたいなどとは思っていませんわ!」
プリンを否定するクリスティーナを更に愛おしく感じたフェルベールであったが、クリスティーナが言った父親であるランドルフの言葉が気になったのでそちらの事を聞いてみた。
「クリスティーナ?ランドルフ殿は君になんと話していたんだい?」
「ええ、父はフェルベール様の事をとても鋭く読心術に長けた方と話しておりました。対峙する度に心を見透かされ、考えている事が筒抜けかのように感じるとも」
「読心術?ランドルフ殿は俺の事をそのように感じていたのだな、元々警戒心の強い方ではあったが......鋭い上に的確に分析されているとはさすがだな」
自分の事を的確に言い当てられたフェルベールは素直に感心していた。これまで自分に対して向けられる評価は大抵が、気持ち悪い・気味が悪い。それか己の浅ましさを認めない傲慢な人間か、見透かされている事に気付きもしない愚か者。こういった貴族達ばかりだったからだ。
「はい、その読心術とは相手の視線や表情、仕草などから感情や思考を読み取るそうです。父は商人という事もあり様々な国の方達とお会いし、それらの事に精通する方から詳しく話を聞き父も実践しているそうです。なんでも商談などでとても役に立つそうです。そんな父がフェルベール様のそれはその読心術に近いが更に卓越しておられたと、とても感心しておりました。お若いのに素晴らしい鑑識眼だとも」
『わたくしもフェルベール様の前で、まるで口に出していたのかと思うほど考えを言い当てられる事が多いから、お父様の言う事にも納得してしまうわ。さっきのプリンの事だってそうだし......』
フェルベールは初めからクリスティーナの事もランドルフの事も信頼できる人間である事が分かっていた。しかし、自分の能力を知ったり疑った人間が気味悪がったり警戒して離れていく事も知っていたし、これまで何度も経験してきていたので少しだけ不安がよぎっていたのだが、やはりこの二人に関しては大丈夫だったようだと、とても嬉しく感じてそれから初めて他人に対して安心感を覚えた。
フェルベールはそんな高揚感そのままにプリンを大量に運ばせ、クリスティーナを驚かせ(喜ばせ)たのであった。
『もう!フェルベールさまったら、違うと言ったのに!......え、このっこのピンク色のプリンはどいう事?ふむふむ、果物の味のプリンという事ね。理解したわ、理解してしまったわ......ではこちらのプリンは私の大好きな苺と大好きなプリンが合体し、更にその頂に苺そのものを冠しているという最強のプリンと言う事になるわね!』
フェルベールは可笑しくて堪らなかった、表ではメイドの説明を冷静に聞いているつもりのクリスティーナの心の中は、鼻歌を口ずさみながらダンスを踊っている勢いなのだ。クリスティーナの頭の中も心の声も、ピンクの苺プリン一色に染まりフェルベールの存在さえも忘れるのだから、可笑しくも複雑な心境になりながら口を開けるクリスティーナにプリンを運ぶフェルベールなのであった......。
いかがでしたでしょうか?この後クリスティーナはフェルベールの猛攻に耐え切れずエメリアーナに助けを求めます。次回あのコンビも登場いたしますので、皆様のお越しを心よりお待ちしております。
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年末となり、皆様お忙しいとは思いますが体調などを崩されないようお気を付けください。 雪原の白猫より最大の感謝を込めて!




