エピローグ 〜幸せになろう〜
いよいよの続編最終回です。
登場人物それぞれに思い入れのあるキャラ達です。
広いお心で読んでいただけると幸いです。
【 孤高の銀狼、ついに結婚! 】
そんな見出しの学園新聞が掲示板に貼り出された事で、学園中がパニックに陥った。
一年前、学園のパーティーでフェルベールがクリスティーナに、婚約を申し込んだ時の比ではない程の盛り上がりに、その日は授業どころではなかったと…教師達から苦情が出たとか出なかったとか。
とにかく…昨今では、幼少期から婚約を結ぶ事も少なく…早くてもお互いの卒業を待って、卒業後に結婚する者が多くなっていた為、尚更…公爵家嫡男の学生結婚に周囲が盛り上がりを見せたのだった。
…勿論愛し合う二人であったのは間違いないのだが…一年早く卒業するフェルベールが、婚約だけでは足りないと…少しだけ強引に、クリスティーナ本人と周囲を納得させ入籍をゴリ押ししたのであった…。と、これが真相なのである…。
「なぁキリアン、マルコムの奴どうしてるかな?あいつの事何か知ってる?結局どうなったんだろうねあの後の二人って…。
……あっそうだ!俺ねやっと婚約者が出来そうなんだ〜彼女・・・でね・・・俺は・・」
教室がお祭りムードに包まれる中、ダニーが話を続けていたが、俺は既に聞いていなかった。こいつは結局マルコムの事なんて気にしてはいない、だが俺はマルコムの事を知っている。
当時少しだけ…ほんの少しだけ責任を感じていたから。
工事現場で見かけた彼は、随分と逞しくなっていた。表情も変わっていたから最初はマルコムだと気付けなかった。
あの頃あいつが俺達を見下していたのを知っていたから…俺はわざと強く止めなかったんだ。破滅の二文字が見え隠れして、危うい二人を自業自得だと…心の中で密かに笑っていたのかもしれない。
そんな卑怯な心が滲み出てしまっていたのか…俺も婚約者に逃げられ制裁を受けてしまった。最低限の付き合いしかしていなかったからそれこそ自業自得なのかもしれない。
でも俺にはまだ残された道が沢山ある、次は間違えない。元の婚約者には悪いとは思うが…よい勉強になったと思うしかない。
婚約者…いや身近な人を大切に思う事、あのお二人を見ていると特にそう思える…。幸せそうなお二人の未来はとても輝いていそうだ、そんなお二人にあやかりたいと願いながら、俺はダニーにそうか、頑張れよと返事をしたのだった…。
「貴方達、結婚式はいつするの?」
「ブッ…母上、我々籍は入れましたが結婚式はクリスティーナの卒業後です、そう言っていたでしょう?」
今夜は両家を交えた恒例の食事会だ、食後とは言え…勿論義父上も参加しているのに直球過ぎる!しかも豪速球だ!
「えぇ、あの時はそう同意すれば話が進むと思ったからそうしたまでで、現実的に考えてご覧なさい?学園でも情報が漏れたのでしょう?早いに越した事はないわ!それこそクリスティーナが身籠ったらどうするのよ!」
「ゴフッゴホ!」←フェルベール
「ガチャンッ!」←閣下
「ガタンッッ!」←ランドルフ
「………ッ!?」←クリスティーナ
「奥様っ!!!食事中ですよっ!もう少し時と場所と相手を考えてくださいませっ!」
「何よっ!ハリー、あなたもわたくしに賛成したじゃない!みんないるし、大事な事よ?ねぇクリスティーナ?」
「フェルベール卿?ま…まっまさか…」(プルプル…)
「お義父上やめてください!私はまだ死にたくはありません!私達は健全ですっ!卒業するまではクリスティーナに指いっ………キス以上の事は致しません!誓います、なので有りとあらゆる拷問で責め立てる妄想はおやめくださいっ!」
「これは君が悪いよエメリア、ランドルフ殿に謝りなさい…クリスティーナも驚かせてしまったね」
「あなたまで!では言わせていただきますが、これはみんなに言える事ですが…結婚を許した時点で覚悟をなさいっ!
伯爵には申し訳ないですが、クリスティーナはうちが貰います!伯爵が未だ補佐しか育ててないのはクリスティーナの子をと考えているからでしょう?ならば早く認めてしまえばいいのです!
フェルベールだって婚約だけでは足りないと、自分が先に卒業した後が不安だからって、囲い込みの域を飛び超えて強引に入籍したんでしょうがっ!我慢するだなんて言ってますけど、あなたのその…皮の盾程の防御力しかない理性が、どこまで本能の猛攻を防げるか楽しみねっ!
クリスティーナに、美しいドレスを完璧な姿で着せてあげたいとは思わないのですか?!子を身籠ったら体型が変わり、子が産まれたらそれこそ母親は自分の事を後回しにするのです!落ち着いてから、なんて悠長な事…わたくしお婆ちゃんになってしまいます!
貴方達!孫をその手に抱きたくはないの?………
スーッ!『勝機を見誤るなっ!今こそ決断の時ぞっ』」
ガタンッと立ち上がり片手を腰に当て、もう片方を前に突き出し声を上げる勇ましい夫人の姿は…まさに軍神そのものであった……。
シーーーーーンッ!
「閣下…申し上げたい事がございます…。私がクリスティーナを授かったのは……十九の時でございました。えぇ、…お察しください。なので……断腸の思いではございますが…夫人様のご配慮をありがたくも頂戴し、全ての決を閣下に委ねさせていただきます」
「ふむ……お爺ちゃま……あっいや、ンンッ…ランドルフ殿がそう言ってくれるのであれば……後は若い二人に任せようではないか!
『今ここに…愛と豊穣の女神フリッグ様の祝福をっ』」
フェルベール・ヴェントラー、齢十八。
彼は大きな体で、更に逞しい体をした父親に全身、それも全力で抱き付いたのであった…。
始終顔を覆って俯きプルプルしているクリスティーナの耳や首筋は真っ赤で、いつ気を失ってもおかしくはない状況であり、ランドルフは手帳に挟んでいつも持ち歩いている妻の姿絵に涙ながらに話し掛けている。
そしてこの件の立役者、軍神エメリアーナは、早くもシャンパンを準備させて祝杯をあげていた…。
しかしここで一番暗躍していたのは…夫人と策を練り、学園に情報をリークしようと提案した執事のハリーだったのかもしれない…。
公爵家の庭園にて、クリスティーナをその腕に抱き…囁き掛けるフェルベール。
「クリスティーナ、心配しないでいいから…俺は君を心から愛している。だから君が嫌がる事はしないと誓うし…君のやりたい事を応援するよ!
学園を卒業するのも、経営を続ける事も、なんなら俺が婿入りしてもいいぞ?実は昨年義父上に許可はもう貰っている。
君は自由なんだ…母上の事だって気にしなくていい。誰の望みよりも、俺はいつだって君を一番に優先すると約束する。だからそれを忘れないでいてくれ」
「フェルベール様…貴方はわたくしが、心から愛した初めての人なんです。後にも先にも貴方だけなんです。好きなんです!心から…貴方だけが愛おしいのです…。なので……怖くありませんっ!……あのっ…、その事…だけでなく、これからの人生全てにおいて…と言いますか……へぶっ」
「可愛いっ!可愛いクリスティーナ!そんな可愛い事を言わないでくれ!いやっもっと言ってくれ!いやっやっぱりだめだ我慢できなくなる!あーっ!もう…どうしてくれよう!このっこのっ!」
庭の片隅でチュッチュッとイチャつく若夫婦…。
案外近い未来、公爵家と伯爵家に…可愛く元気な声が響き渡る毎日がすぐに訪れるのは……ここだけの話。
〜完〜
これにて完結ですが…いかがだったでしょうか?
沢山の皆様に応援していただき、ランキング3位という夢の様な幸せな経験をさせていただきました事を、ここに深く感謝し御礼申し上げます。
また皆様と繋がれる事を願い、今後も作品を書いていければと思っております。
読んでくださった皆様、感想でお声を掛けてくださった皆様、ポイントやいいねで評価してくださった皆様、報告で協力してくださった皆様、活動報告にてご感想くださった皆様、ご要望くださった皆様!
全ての読者様に心から最大の感謝と愛を贈らせてください
最後までお付き合いいただき本当にありがとうございました。 とってもとっても楽しかったです( ˙꒳˙ )ノ
雪原の白猫




