16.
本日二本目の投稿となります。
お楽しみにいただけると幸いです( ˙꒳˙ )ノ
「と…言う訳なのです…。フェルベール様の思惑がどうであれ…周囲は勝手に意味を持たせてしまいます…。フェルベール様の地位を考えると噂ごときとも思うのですが、初めてのパートナーがわたくしでいいのかと不安なのです…。きっと見た方達は相応しくないと不満に思い、そんなわたくしを選んだフェルベール様の審美眼まで疑われるのではと……。
しかしエメリアーナ様からのお口添えがあれば、フェルベール様もさすがに正気に戻ってくださると思うのですが…」
「要するに、クリスティーナ次第って事ね?
え?そうでしょう?だってあの子が決めたのなら…相応しいも相応しくないも関係ないでしょうに…。
まぁそれでもクリスティーナが不安に思うのなら…周囲に認めさせるしかないわねぇ…「流石フェルベール卿はパートナーの女性も素敵だなぁ」とね!」
パチンと蠱惑的な瞳でウィンクする夫人は立ち上がり宣言をする…。
「クリスティーナ、心配いらないわ!このわたくしが公爵家の威信をかけて、貴女をとっておきのレディに仕上げて見せます!」
フフフ…とフェルベールと同じ様に、不敵な笑みさえも気品溢れる笑顔で…戦の指揮官もかくやと次々に指示を出していくエメリアーナ夫人……。そんな彼女に意見など出来るはずもないクリスティーナはフェルベールの言葉を思い返していた。
(あぁ…フェルベール様が仰っていたのはこの事だったのね……盛大に荒立ててしまったわ……)
ここでもクリスティーナは頭を抱え、今後の行方を不安に感じつつも…エメリアーナに店舗の新商品や依頼されていた刺繍の進捗具合を報告して、授業の為部屋に向かったが、案内されたのは小ホールで制服からドレスへと着替えダンスレッスンが始まった。
おさらいが終わると、無難に踊るのではなく指先、足先…視線、そして揺れる髪の動きでさえも優雅に魅せてこそだと…急ピッチで叩き込まれてゆく、それらの教えは厳しいものであったが、これまで同様クリスティーナは決して弱音を吐かなかった。
自分達の事に巻き込んでしまったフェルベールの汚点となる訳にはいかないと、必死だったのだ。
しかし遅れて合流したフェルベールは、「目立つ事が目的ではないし、ましてや大会でもないのだからそれよりも慣れて呼吸を合わせよう」とその日以外でも…時間の許す限りクリスティーナの練習に付き合った。
(マルコムとは何年も踊っていなかったからかしら…ダンスがこんなにも楽しいだなんて忘れていたわ!)
楽しむ事でみるみるダンスも上達し、パーティーのマナーも学び、社交面でも確実にスキルアップしたクリスティーナが父にドレスの相談をすると、心配いらないと言われたので任せる事にした…。
本当は少しだけ…自分で選んでみたいという気持ちもあった。色や形、流行りのデザインに…身に着ける装飾品…。しかしパートナーが公爵家とあっては父に頼らざるを得なかった。父も驚いてはいたが…「それに見合う準備をしなくてはっ」と言っていたからきっと良質の物を用意してくれるだろうと安心していたのだが………。
満を持してのパーティー三日前、ブロワ伯爵家に荷物が届いた。クリスティーナは父親から応接間へと呼び出され、この一週間ドレスはまだかと父親を問い詰めていたものがようやく届いたのだろうと、足早に向かったのだがその先に待ち構えていたのは……
「クリスティーナ嬢、遅くなってすまない!君への贈り物だ、どうか受け取ってくれ」
顔を引き攣らせた父親と、公爵家で顔馴染みとなったデザイナーとお針子さん達…そしてたくさんの箱の山。
「っ!?……えっと……これは?……何故フェルベール様が?」
「俺が選んだのだ…きっと君に似合うと…君を思い浮かべながら。若干母にも口を出されたが……いやっ、それよりもパートナーにドレスを贈る楽しみを初めて知ったんだ…こんな幸せな経験が出来た事に礼を言うよ、ありがとうクリスティーナ嬢。
だから…どうか何も気にせず受け取って、パーティーではこれらを身に着けた姿を見せて欲しい…」
楽しみにしているから…と、颯爽と帰っていったフェルベールだったが…デザイナー曰く、「試着姿を見るのを我慢されたのですよ」と教えてくれた。
クリスティーナの黒髪とは対照的な、淡いスミレ色のドレスに銀糸の刺繍が施されたとても上品で品質の良さが一目で分かる最高級のドレスにブルーサファイアとプラチナで統一された装飾品…。
「これって……もしかして…」
何かに気付いたようなクリスティーナにデザイナー達が満足そうに頷いている。
「やっぱり、ラファールの銀糸ね!ウェンティーナからの購入ですよね?ありがとうございますっ!
とても繊細で素敵なデザイン…なんて素晴らしいのかしら、もう全てが夢みたいっ!それにこちらの装飾品もプラチナだからとても相性が良くて…最高の組み合わせだわ!」
うっとりと贈り物を眺めるクリスティーナにデザイナーが、コホンッと声をかける…
「間違いなくこちらに使われている刺繍は隣国ラファール産の銀糸でクリスティーナ嬢が経営されているウェンティーナから卸していただいた物ですが……それより他に何か気付かれる事はございませんか?」
うっとりキョトン顔のクリスティーナに父親のランドルフが助け舟を出す…。
「孤高の銀狼と呼ばれている彼の髪色と…麗しの青薔薇だったか…彼の瞳の色だな……」
自身の色を贈る事の意味をクリスティーナも勿論知っていた…。髪の色や瞳の色など、大抵は控え目にどちらか一色を贈る事が多い…独占欲の丸出しと思われるからだ。しかしフェルベールはその両方だ…。
なのでデザイナーやお針子達に揶揄われつつ試着や調整を済ませ…その後も飾られたドレスを見る度に動悸、息切れを繰り返しながら…パーティー当日を迎えるのであった……。
学園のパーティーにしては本気度が凄すぎて…マルコムの事より大事にならなければいいが…と心配する父ランドルフなのであった……。
大事になる予感しかありません…( ˙꒳˙ )ノ
クリスティーナは楽しむ事が出来るのか?
マルコムはクリスティーナに気付くのか?
フェルベールはマルコムに嫉妬するのか?
気になった方はまた遊びに来てください( ˙꒳˙ )ノ
あ…ソフィーは……なんかやらかすのか?




