13.
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フェルベールに甘く元気づけられたクリスティーナは、午後から公爵家の家庭教師から教育過程を聞き、その質の高さに感動と興味が湧いた。不安もあったが、純粋に"やってみたい"と思い、興奮冷めやらぬまま伯爵家へと帰宅するのだった…(山ほどのプリンを持って)
クリスティーナの父親であるブロワ伯爵は帰ってきた娘の変わり様にまず驚いた。
いや、報せを受け…屋敷に戻り待機してるところへ、ヴェントラー公爵家の嫡男であるフェルベール自ら送り届けてくれた事にも…驚きと動揺を隠せなかったが…豪華な馬車から、そのご令息にエスコートされ降りてきた娘を見て…息を飲んだ…。
これまでの顔を隠すような長い前髪もなく…こちらを見て「ただいま帰りましたお父様」と張りのある声と満面の笑みで胸に飛び込んできたからだ。
慌てて抱き止め、諌めるべきか躊躇しつつフェルベールの方を窺うと、
「私の事は気にしないで、どうかクリスティーナ嬢を叱らないでください。詳しい事を説明したいのでお時間をいただけますか?」
と、以前自分が見かけた姿や、噂で聞いていた人物像と全く違って、穏やかな印象のフェルベールに恐縮しつつも…何が起きているのか頭の中ではパニックだったが、様々な顧客達と渡り合う商会会長でもある父ランドルフは動揺を隠しひとまずクリスティーナを離して返事をする。
「もっ勿論でございます、寛大なお心に感謝申し上げます。どうぞこちらへ…」
父親がフェルベールを応接間に通している間自室に戻ったクリスティーナは…
「それでねサーシャ、公爵家の方々は皆様優しくて、調度品もそれはもう素晴らしいの一言なのよ!授業内容も専門知識や知らない事も沢山あって…マナーの先生は王家に仕えてる方なんですって!そんな方に教えを乞う事が出来るだなんて…本当に夢みたいな事なのよ!何よりっあの公爵夫人様がお名前をお貸しくださったの!信じられる?」
サーシャは我が主人が先日登校した時も多少の変化があったのは気付いていた。そして悲しみを乗り越えようとしているクリスティーナを応援し見守る気持ちであったが……しかしここ数日は幼い頃に逆戻りするのではないかと心配するほど塞ぎ込んでいたから時間がかかるだろうと思っていたのだ…。
それなのに一体どうしたのか…見た目だけでなく楽しそうに話し、声を出して笑っているのだ…いや、これまでも家族や自分の前では多少素の部分を見せてくれてはいたが……と、主人の変わりように驚きはしたが、その輝く笑顔を見て…サーシャも涙を滲ませながらも、同じ様に笑顔で話を聞いたのだった。
「それは素晴らしい経験をなさいましたね!お嬢様も本来のお姿に戻られて私も嬉しいですっ!」
姉のような、母のような存在のサーシャに抱き付き二人でキャッキャッしていると、別のメイドが応接間へと呼びにきたのでクリスティーナは足取り軽くそちらへと向かうのだった……。
一方…応接間では人当たりの良い笑顔を浮かべながら…背中には滝のような汗を流している父ランドルフと、穏やかな表情のフェルベールが和やか(?)…に隣国ラファールのお茶を飲んでいた…。
ランドルフはフェルベールより、一から事の顛末を説明され…更にクリスティーナの店に母親が出資する事に不都合がないか?だとか、クリスティーナが公爵家にて教育を受ける事などの許可をくれと笑顔で請われていた。
爵位を持たないとはいえ、相手は公爵家の嫡男だ…勿論ランドルフに否やの選択肢は無いのだが…娘が我が胸で泣いたのはつい一昨日の事なのだ…たった1日で何があったのか、フェルベールの話を聞いても理解が追いつかないのだった…。
しかし隣に座った娘は、笑顔で公爵家の好意に甘え、挑戦したいとやる気を漲らせている…その娘を見るフェルベールの視線が気にはなったが…ランドルフはフェルベールへと頭を下げてクリスティーナの事を頼んだ…。
ランドルフの返事を聞いたフェルベールは神妙に「お任せください」と返事をするが、ところで…と言葉を続ける。
「他家の事情に口を出すつもりは無いですが…マルコム・ハンセン伯爵令息について……今後何かあれば、クリスティーナ嬢を守る権利を与えていただきたいのです。これについても是非伯爵の許可をいただければと思うのですが…」
「ご配慮いただきありがとうございます。しかしこの件で娘には影を増員しましたので、ある程度の証拠や対処は出来ると思います。それにご好意とは言えこれ以上公爵家の方々にご迷惑をお掛けする訳には…」
「いや…うちの影を使う話ではなく…その…部外者なのは承知してますが…
クリスティーナ嬢があの男に嫌な思いをさせられた時、私は黙って看過出来ません。なので事前に彼らに口を出し、私自身が彼女を守る許可が欲しいのですっ!」
「「は?」「へ?」」
真剣な表情のフェルベールに対し、余りにも気の抜けた言葉を発してしまった父娘であったが、フェルベールはその姿勢を崩さない。
彼は医務室で、マルコムとその浮気相手の下品かつ下劣な話を聞いていて、それがクリスティーナの相手だったと聞いた時から内なる怒りを持て余していたのだ…
ランドルフは、フェルベールの口ぶりから…静かなる怒りを感じ取り、ありがたくも…何故そこまで?と思ったが、娘が自ら繋いだ縁を享受すべきと先程の様に頭を深く下げてクリスティーナの事を頼んだのであった…。
自分の手で守りたいっ!…と、そう父親に宣言してしまったフェルベール…
次回、
「(作者に)忘れられてた婚約者(仮)ついに再登場」
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