別れる?
俺はクマを埋めて墓を作った。
(成仏してくれ)
「さて」
クマに襲われていた女性のところに駆け寄り手を差し伸べた。
「大丈夫?立てる?」
「あ、あり、が・・・ます」
恐怖が残っているみたいだ。
「立てる?」
コクンっと彼女は頷いたので彼女の手を掴んで立たせた。
「怪我はない?」
彼女は頷いた。ここだとまた襲われるかもしれない。セーフティゾーン目指して移動しよう。
「俺、工藤・ノール・亮。よろしく」
「私は鹿草七海です・・・」
かぐさ?珍しい苗字だな。
「鹿草さんはどうしてここに」
「あの・・・その・・・」
「あっ、ゆっくりでいいから」
「はい・・・」
彼女もどうやらスーツの連中に誘拐されたらしい(来たのは女性だったみたいだが)。
「君も『世界サバイバル選手権』に申し込んだの?」
「なんですかそれ・・・」
世界サバイバル選手権を知らない?誘拐されたのはあの大会かと思ったが違ったのか?
「あの・・・」
彼女がさっと体を庇った。
「ごめん。女性に対して失礼だったよね?」
「・・・」
やばい、俺今完全にセクハラしてたじゃん。出会った人間の体を見て観察する癖が出てしまった。あっ、建物が見えてきた。ここからなら一人で行けるな。
「じゃあここでお別れだね?」
「えっ?」
こういう状況で男と二人っきりは女性にとって襲われないか怖いのだろ。現に体が小刻みに震えているし。
「あそこに建物が見えるでしょ。あそこがセーフティゾーンだから」
地図を見ると自分とセーフティゾーンが重なって見えるし。俺は彼女から離れて歩き始めた。
「⁉」
いやな気配がする方をみるとクマがいた。
「鹿草さん、クマがいるセーフティゾーンに走るんだ」
鹿草はキョロキョロ周りを見渡した後、クマの方向に走って行った。
「ちょ、なんでクマの方向に走るの?」
すると彼女は立ち止まった。もしかして目が見えないのか?
「ああもう」
俺は鹿草さんの方に走って
「つかまって」
「うん・・・」
鹿草さんの手を握ってセーフティゾーンまで走って行った。
(やばい、鹿草さんの足じゃ追いつかれる・・・)
「ごめんね」
「えっ?きゃっ」
俺は鹿草さんはだっこして走った。
「うぉぉぉぉぉ」
全力で走り、建物の中に入ることができた。