最悪の再開
全身鳥肌がたち、足が震える。行かない方がいいと思っていながら、急いで行けという矛盾した考えが頭の中で拮抗している。
「この地図によるとあっちの方には剣と槍がクロスしているマークか・・・」
でも行く気しかない。
「はぁはぁはぁ」
俺は走った全力で走った。
「なんだこの匂いは」
あまりにもひどい匂いに俺は鼻をつまんだ。恐る恐る進んでいくと
「うっ」
人の死体がそこにはあった。顔は引き裂かれて誰かわからなかった。
「こんな惨い死に方ありかよ・・・」
俺は悲壮感にくれた。しばらくしてこの仏を埋めてあげた。
「誰だが、わからないが成仏してくれ」
そう祈りを捧げて出発しようとした時に目の前に布切れが飛んできた。
「これはこの人の遺品・・・」
俺はその布切れにデザインされていた顔に見覚えがあった。
「これ、もしかして明菜か・・・」
俺は荒川から家に来てほしいと連絡がきたので向かった。
「荒川来たぞー。何の用だ?」
「待っていたでござる」
荒川は腹をボーンっと出してきた。
「なんだ?ダイエットに成功したのか?」
「違うでござる。見て欲しいのはお腹じゃなくて、Tシャツでござるよ」
荒川のTシャツには可愛らしい女の子が弓を構えている姿がプリントされていた。
「誰?」
「明菜たんでござるよ。工藤氏に漫画貸したでござろう?」
やべぇ一ページも呼んでねぇ。
「このTシャツは単行本買ったらついてくる応募券で抽選300名限定のTシャツでござるよ」
「そうなんだ」
「これはその中でもレア中のレアでござるよ」
「そうなの?」
「300のうちXXLはなんと3着しかないのでござる」
「よかったな」
「ところでなぜ・・・」
やばい、なんとか誤魔化さないと
「悪い最近調子悪くてな」
「そういえば予防接種してから変だと言っていたでござるな」
大会が東南アジアで行われるから打った方がいいと言われて予防接種してから体質が変わった気がする。
「そうなんだよ。電車やバスで酔いやすくなったし、肉食べた後なんか特にな」
「ベジタリアンに転職した方がよいのではござらんか?」
「俺、肉嫌いじゃなんだけどな」
「嘘だよな?お前、荒川じゃないよな?」
墓に向かって聞いてみたが当然返事はなかった。
「300枚あるんだ他の人って可能性もあるよな?」
本当はわかっていた。一年間同じ釜の飯を食い、同じテントで寝て、温泉にも何度も一緒に入った。だから顔で判別できなくても体格や雰囲気で荒川だってことはわかっていた。だが俺はそのことに目を背けていた。そこに決定的な物が出てきて自分の確信を誤魔化せなくなっていた。
「荒川・・・荒川・・・」
俺は墓の前で涙を流していた。