気軽な気持ち
俺の名前は工藤・ノール・亮だ。大学2年生だ
「おい、工藤いい話を持ってきたぞ」
行き荒く部屋に入ってきた男は宮島浩平だ。こいつは同好会のメンバーだ。
「宮島、合コンなら間に合っているぞ」
この前は無理やり参加されたあげく「好みじゃない」としょっぱなに言われたあげく女子の分も払って最悪だった。
「散々謝っただろうが、オレだってあんな女だとは思ってなかったんだよ。くそ、バイトの先輩の友達の従弟の紹介なんて信じるんじゃなかった」
お前、そんな人間信じるなよ。
「今回はお前にとっていい話だ。これを聞いたら俺に感謝して靴を舐めるかもな」
ドヤ顔でこっち見てくるな。あと、普通にお前の靴は舐めたくない。
「で、どんな話なんだ?」
「これだ」
宮島のスマホには『世界サバイバル選手権(WSC)』と表示されていた。俺は宮島のスマホを取ってスライドしながら内容を見た。そこには世界中から18歳以上27歳以下の人が参加できる大会で体力審査、健康診断をクリアした人が参加可能と書かれていた。
「どうだ?すごいだろう?」
「いや・・・これはやばいやつだろ」
怪しい匂いしかしない。
「なんでだ?」
「優勝賞金100万ドルって・・・」
そうデカデカと100万ドルと書いてあるのだ。
「ああ、すごいよな100万ドルって」
宮島は興奮しているが俺は冷ややかだった。
「これ詐欺サイトなんじゃないか?」
「確かに俺も最初そう思った。だがな工藤。スポンサーを見てみろ」
言われるがままスライドして最後の方にスポンサーを見てみるとC.Uと書いてあった。
「C.Uってまさか・・・」
「そう、カンパニーユニオンだ」
カンパニーユニオン・・・5年前誰もが知っているグローバル企業が業務提供を発表した。これは世界中で賛否の意見が巻き起こったが、明確な反対がなかったのかすぐに成立した。そしてできたのがカンパニーユニオン、通称C.Uだ。
「C.Uの製品はすごいよな俺のスニーカーもC.U製だぜ。軽くて動きやすい。これ履いたら他のスニーカーが履けなくなるぜ」
知ってるよ。勝った時に散々自慢してきたからな。マラソンに優勝できるかもって俺まで巻き込んで大変だった。
「スマホも欲しいな~最新モデルは声だけで操作できるらしいぞ」
「そうか」
俺は今のスマホで満足しているからいいや。
「そのC.Uがスポンサーなら安心だろ」
「勝手に記載してるんじゃないのか?」
「疑うならC.Uのサイト見てみろよ」
俺は自分のスマホでC.Uのサイトを開くとたしかに大会のスポンサーであると記述があった。
「なっ、一緒に参加しようぜ。工藤お前のサバイバル知識があれば優勝間違いなしだぜ」
俺はとある理由でサバイバル能力が高い。同好会のみんなにはサバイバル系のテレビをよく見てるから言っている。本当のことを言えば、引かれることがわかっているから。
「・・・」
俺は昔両親とセスナに乗っていた時に事故にあい墜落した。その時、パイロットと両親は死んでしまったが、近くの村の人が助けてくれた。彼らは両親が死んでふさぎ込んでいた俺の世話をしてくれた。すごく嬉しかった。彼らは俺に森での生き方を教えてくれた。そのおかげで俺はサバイバル能力は高いと自負はしている。だけど、世界で通用するかは自信はないので、返答を迷っていた。
「話は聞かせてもらったでござる」
バーンっと扉を開けたのは荒川重隆だった。こいつはキャンプ漫画に影響されて同好会に入会した男だ。
「荒川、まさか参加するつもりなのか?」
「え?お前、これはキャンプじゃなくてサバイバルの大会だぞ」
「ふっふっふ」
荒川は不敵に笑いながら、バックから漫画を取り出した。
「何々・・・『明菜は今日も生き残る』?」
「そう拙者の今一押しの漫画でござる。作者は、かな先生で、主人公の明菜は乗っていた飛行機が墜落し1人生き残り・・・」
やばい、こいつが語り始めると一時間以上かかる。話題を変えなければ。
「お前、『ふわふわキャンプ』は飽きたのか?」
「そうだぜ。お前のバイブルだろ?」
俺たちに散々語り漫画を渡してきたりしたのに。
「飽きてござらん。飽きてはござらんが・・・この一年音沙汰なしなのでござる・・・」
あ~そういえば新刊が出たって話全然聞いてなかったな。
「工藤氏今までサバイバルを馬鹿にしてすまなかったでござる」
そう言いながら荒川は土下座していた。
「いや、別にいいよ。よく言われるし」
「かたじけない。では来週3人でいくでござる」
「おうよ」
「荒川すごいやる気だな?お前も100万ドル欲しいのか?」
「たしかに100万ドルは魅力的でござるがこの大会にはなんと、加奈先生が参加を表明しているのでござる」
荒川のスマホにはSNSで『世界サバイバル選手権に参加します。応援よろしくね♡』と書かれていた。
「ああ~かな先生に会えたら拙者は感無量でござる」
荒川はすごく興奮しているな。
「荒川、お前まさかかな先生が若い女だと思っているのか?」
たしかに書き込みの文章からは若い女性が書き込んでいるように見えるな。
「⁉そ、そんなことは思っていないのでござる」
同様しているぞ荒川。
「お前、漫画の主人公が女子高生だからって若い女性が書いていると思っているのか?」
「・・・可能性はゼロでないでござる」
「顔写真なし。プロフィールに年齢、性別不詳って・・・これ、すれ違ってもわからないだろう」
「拙者なら一目見たらきっと・・・きっと・・・」
「わかった、わかった。工藤と俺と荒川の三人で行こうな。なぁ工藤?」
「俺も一緒にかな先生探すから」
「工藤氏・・・宮島氏・・・拙者は嬉しいでござる」
「それじゃあ来週、3人で行くぞ」
「「おおおーーー」」
俺たちは拳を天高く上げた。