Act.1 花嫁救出・5
ネルガレーテが3度目に口を付け、大きく長い息を吐いた矢先、前の扉が唐突に開いて、飾毛も派手なビコーン(二角帽)を縦に被り、黒の制服にタルワール(短刀)を佩用した禁中宿侍が入って来た。
しょっちょこばった歩き方で玉座の横に立つと、視点の定まらない目付きで宙を仰ぎ、今上陛下のお出ましである、分を弁えて控えあれ、と先触れを述べた。ネルガレーテが足取りも重そうに、玉座の手前3メートルほどの位置に歩み寄ると、丁寧に片膝突いて顱を垂れた。
宿侍が入って来た口に、人の気配が立つ。
緩やかな衣擦れの音がして、玉座に座る気配がした。
「陛下には拝顔の栄、誠に恐れ入ります。このドラグゥン・エトランジェ(傭われ宇宙艦乗り)、グリフィンウッドマック、この度は御料宙船ラ・ボエムを回航して参りました」
ネルガレーテがゆっくりと顔を上げる。肩越しの白橡色のハイレイヤー・ヘアが、ふわりと踊った。
「さては無事ラ・ボエムを届けてくれたそうな。まったくの足労、幸甚の至り」
頬の肉が緩んではいるものの老齢と呼ぶにはまだ少し早すぎる、壮健な目付きに白い口髭を蓄えたテラン(地球人)が、堂に入った態度で玉座に座っていた。
クリームイエロー地に細やかな白の刺繍が全面に入ったカズラ(貫頭衣)を着て、サシヌキと呼ばれる、足首まで隠れるゆったりしたガーネットレッドの袴は、内側のアンクル・カフスでぴちっと留めてある。首元にはゴールドのストールを巻いている。
冠こそ頂いていないが、紛れもなくアルケラオスの今上陛下、フロースガール・アーネ・クアトロポルテ国皇だ。
「フロースガール皇陛下、お会いできて光栄です。ドラグゥン(傭われ宇宙艦乗り)ごときへのお声掛け、痛み入ります」
「そう遜らんでも良かろうに」フロースガール皇は上半身を肘掛けに預け、ネルガレーテを斜に見下ろしながら言った。「わが息エッジセーク皇の治世の折り、影に尽力してくれたのは、確かそなたたちと記憶しているが」
ネルガレーテの柿色の瞳が一瞬曇った。
「はい。祖父エラン・グリフィンウッドマックも、アルケラオスの発展に寄与できたことは、他界するまで誇りに思っておりました」
「ほう、そなたの祖父とな」老皇が僅かに身を乗り出した。「──そなた、名前は?」
「ネルガレーテ・シュペールサンクと申します」
「うむ、ネルガレーテ。そなたを筆頭に、皆しばらくはアルケラオスに滞在するのであろう。是非ともそなたたち皆の顔を見る機会を作るとしよう」
「グリフィンウッドマック、ありがたき幸せ」ネルガレーテは昔話に戻らぬよう、さりげなく話題を変えた。「──それにしてもあのラ・ボエム、ほとほと美しい船です、陛下。あれほど優雅な船は、銀河中見渡してもそうそうございますまい」
「ドラグゥン(傭われ宇宙艦乗り)とやらも世辞が言えるとはな」
「どうかドラグゥン(傭われ宇宙艦乗り)の武骨な嗜みと、お目こぼしください」
「うむ。そなたも聞き及んでおろうが、間もなく我がアルケラオス国中が、至福に包まれる。婚儀を控えるたった1人の孫娘メルツェーデス姫への、余からの祝儀とするつもりなのでな。とにもかくにも間に合って、胸を撫で下ろしておる」
「その大切な御料宙船を傷つけようとする無粋な輩もいるようで、皇陛下の胸中、さぞ苦々しい思いでござりましょう」
気遣う気持ちにうっかり口を滑らせてから、ネルガレーテは臍を噛んだ。出来るだけ早々に、尻に帆掛けてこの場を離れるつもりだったが、そうも行かなくなってしまった。
「何やら来た早々、難儀に遭遇したようだが、さすがはノルニル強っての名指しを受けた者たち、称賛に値する」
老皇の口元は綻んでいたが、双眸が鋭くネルガレーテを凝視していた。
「何を。まずはエスコート(随伴護衛)に来て頂いた、武勇名高い国軍の方々に、怖れをなしたのでしょう」
さすがにネルガレーテから一方的に、話を打ち切る訳にもいかない。当たり障りのない会話で、誤魔化し凌ぐしかない。あの話題に針が向かないことを祈って──。
「おそらくは自由の未来とか申す、国の安寧を脅かす賊徒。このスピノザも開拓されて200年は経つものの、いまだ半分以上の領土が掌握しきれておらぬ。彼奴らは腹立たしい事に、そのような未踏の地に潜んでおるので、ウェーデン卿も手を焼いている」
そんなネルガレーテの胸中を見透かすように、フロースガール皇が見詰める目線がネルガレーテを射貫いて目を逸らさせなかった。
「ウェーデン卿といえば、たしかメルツェーデス皇女殿下のお相手と聞き及んでおりますが」
「わが息エッジセーク皇が薨去して以降、このアルケラオスに新たな発展の時代をもたらした傑物。なかなかに食えん男だが、な」
「・・・・・・」
ネルガレーテは思わず絶句してしまった。
ここでエッジセーク皇の名が出るとは想像もしていなかった。マズい展開になりつつある──逡巡するネルガレーテに、フロースガール皇が畳み掛けるように言葉を継ぐ。
「エッジセーク皇が、せめてシン皇子でも手元におれば、メルツェーデスにはもう少し違う人生を歩ませてやれたものを・・・」
“やはり、あの悲劇の事の顛末を、直接に尋ねたかったのだ、フロースガール皇は──”
恐れていた、シン皇子の一件に、真っ直ぐ言及してきたアルケラオス国皇に、ネルガレーテは知らずのうちに、苦渋の皺を眉間に寄せていた。
「もう16年になるのだな、エッジセークが身罷って」
ネルガレーテを見詰めながら、国皇が2度ゆっくりと目を瞬かせた。
「──あの折りも、そなたたちグリフィンウッドマックが、最後までわが皇の傍におったと耳にしたが、それは真実か?」
“やはり知っていたんだわ・・・!”
ずばりと言われ、ネルガレーテは心臓が飛び出しそうだった。フロースガール皇の、静かだが、ネルガレーテを真正面から見据える目が鋭かった。
「シン皇子付きの勇敢なる東宮衙衛隊の者も、最後までその責を全うして斃れたと聞く」
「・・・・・・」
黙り込んでしまったネルガレーテは、口を開くタイミングを失してしまった事もあるが、何より何と言えばよいのか、どのように話せばよいのか、混乱に次ぐ混乱で、いつものネルガレーテらしくないほど動揺し、言葉そのものを失っていた。
「宇宙軍創建の楚を築くのに、多大な助力を施してくれたのがその方たちであろう。その縁で、あの創建祝賀にもわざわざ駆けつけてくれたとのこと。そしてあの観艦式次第に、最後まで添うてくれていたのが、そなたたちだであろう?」
こんなに押し込まれるネルガレーテも珍しい。アディやジィクも見たことがない姿だ。
黙ってしまったネルガレーテを咎める訳でもなく、フロースガール皇は淡々と独り言のように話をしている。まるで封印していた思いが、一気に膨発してしなわないように、少しずつ静かに言葉を送り出していた。それが余計に、ネルガレーテの言い逃れをし難くして行く。
「我が息であるエッジセーク皇と、まだ幼き皇子シンを手にかけた匪賊は、太陽系クワインに逃亡したが、我が宇宙軍旗艦アンボワースの手によって誅された」
そしてネルガレーテが一番恐れていた、最も核心への問いが投げ掛けられる。
「ネルガレーテ」有無も言わせぬ厳しい目付きだが、目の前の皇の口調は極めて穏やかだった。「改めてそなたに問う」
アルケラオス国皇の一言に、ネルガレーテは生唾を呑み込んだ。
「エッジセークは本当に死んだのか?」
「──残念・・・ながら」
ネルガレーテはそう口にするのが精一杯だった。
フロースガール皇は大きな溜息を吐いて肩を落とし、瞑目した。
息子への思いに沈み込む老皇の姿に、ネルガレーテは言葉が出ない。重たい沈黙が二人を包む。
アルケラオス国皇はずっと心に秘めてきた蟠りを、端から問い質すつもりで召したのだ。ネルガレーテは針の筵に坐らされているようで、罪悪感さえ覚え始めていた。
どれほどの時間が経ったのか。
俯き加減に目を薄く開け、重そうに開いた口から出た老皇の声は、本当に絞り出したかのごとく酷く嗄れていた。
「では、シンは?」
「・・・・・・」
ネルガレーテは思わず目を閉じ顔を背けてしまった。
「何故答えぬ」今までで一番厳しい、国皇の口調だった。「ネルガレーテ、何故応えぬ? そなたに聞いておる」
「・・・・・・」
「当時シンはまだ2歳だった。だがその末期を見届けたものは、実は誰もおらぬ、というのは真実か?」
文字通り問い詰められ、ネルガレーテは切羽詰まった。
言い逃れや言い訳はもう出来ない。かと言って嘘は吐けない。真実を喋るか、それとも黙り通すか。ネルガレーテがゆっくりと老皇に向き直る。
「それはどういう事なのだ?」
「・・・・・・」
「まさか・・・」
「・・・・・・」
それでも口を開かないネルガレーテは、瞬きもせずただ真っ直ぐフロースガールを見返すのみだった。それはネルガレーテの、いま取り得る精一杯の真摯な態度だった。
さすがに業を煮やしたのか、フロースガール皇は一瞬目を吊り上げ腰を浮かせたが、すぐさま座り直して小さく嘆息を漏らし、徐に声を上げた。
「──誰か、誰かおらぬか」
皇が入室してきた扉の片側だけが僅かに開き、滑り込むように側仕えが入って来る。
「この者は当分この城に逗留する。良い部屋を宛行い、客分として丁重にもてなすのだ」皇は下座に控えるキュラソ人のレギオ・デューク(編団頭領)を一瞥し言葉を継いだ。「──ただし、余が声を掛けるまでは、この者を部屋から1歩も出してはならん。宿侍は勿論、外の衙衛隊にもそう申し付け、戸口の警護を怠らぬように伝えよ」
それを聞いたネルガレーテは、深い息を吐き出し、改めて顱を垂れた。
抵抗するつもりはないし、その気も端からなかった。
それは老アルケラオス皇の古傷であると同時に、ネルガレーテの心に刺さった棘でもあり、何時か抜かなければならない時宣が来ることも解っていたからだ。ここで一過的に取り繕っても、いずれは回り回って、同じ羽目に陥る──そんな予感しかなかった。
「静かな部屋で、熟慮するがよかろう。さすれば考えが変わるか、さもなくば忘れていた記憶も甦るかもしれぬ。余はそう望んでいる」
アルケラオス皇の言葉に従い、ネルガレーテは静かに腰を上げると、側仕えに促されしずしずと退出した。扉が閉まった後、フロースガール皇が再び憂えた溜め息を吐いたのを、ネルガレーテは知らなかった。
いつの間にか現れた、飾毛の付いたビコーン(二角帽)を縦に被り、タルワール(短刀)を佩用した禁中宿侍と思しき2人に背後から付き添われ、靴音だけが谺する厳かで重厚な廊下を延々と歩いてリフトで3階へ上り、綺麗に手入れされた広大な中庭を見渡せる渡り廊下を通って、迎賓用の一室へと案内された。
側仕えが恭しく一礼して下がる。扉が閉まる際に目を走らせて垣間見たが、戸口の両側には付いて来た禁中宿侍が、きっちり仰々しい姿勢で立哨していた。
まあ、体の良い軟禁だ。
だがさすがに皇宮だけあって、軟禁状態だろうと宛行われた部屋に居る限りは天国だった。天井が高いのに比して窓も大きく、部屋の中はとても明るい。窓から抜け出すのは造作もないことだが、ネルガレーテはやはり逃げ出せなかった。
今にして思えば、ノルン人がこの単純単調極まりない、誰がやっても問題ない仕事に、態々グリフィンウッドマックを指定したのは、こう言う含みがある事を、こうなる事を予見していたのかも知れない。否、“こうなるように”仕組まれたのかも知れない。
広い銀河の中でも、最も特異と言って差し支えないノルン人のこと、あながち穿ち過ぎた考えとは思えない。
“だとしたら、やはり逃げる訳にはいかないのね・・・”
そう覚悟を決めようとするネルガレーテだが、やはり暗澹たる気に心が滅入る。
ただその日届けられた少し早い夕食は、目を見張るものだった。
白ワインで煮込んだアーティチョークとベーコン、合鴨のロースに白身魚と海老のソテー、カリカリに焼いた茄子、それにバローロ・レーベルのワイン(葡萄酒)が添えてあった。
* * *
眼下に見える覚えのない景色に、ここはトスカ半島のモンテフィアスコーネ城に違いない、と機上のメルツェーデスは確信した。
ローズブァド城近郊の廃虚で襲われ、衙衛隊から奪った専用機に乗せられ1時間弱、どこかの地方空港へ降り立ち、そこから更に別のロータークラフト(回転翼機)に乗せ替えられた。機体に描かれたクレスト(紋章)は、城門城塔に脇侍の獅子──間違いなくビガー家のクレスト(紋章)だが、オロフ・ウェーデンのクレスト(紋章)は両脇の獅子が剣を握っている。この剣を持たないクレスト(紋章)を現在も使っているのは、レディ・ヘアルヒュイド・ウェーデンしかいない。
ヘアルヒュイドが用意したと思しきロータークラフト(回転翼機)には、先程のワシ獣人も同乗して来て、さらに1時間半を飛行した。
トスカ半島はローズブァド城から離れること約1500キロ、南北100キロ東西60キロの逆瓢箪形をしていて面積1万2000平方キロ、居住人口110万人だが、実はこの半島全体がモンテフィアスコーネ城であり、110万人の人口も城内従事者と同義語だ。
ヘアルヒュイド専用機は、どこかの屋敷の屋上にあるリフター・パッド(垂直離着床)に着いたが、雰囲気からしてヘアルヒュイドの本宮館ではない。
トラ男とワシ男に挟まれて、メルツェーデスは階下への階段に導かれ、そこから大きな応接間のような一室に案内された。有無を言わせぬ態度だが、扱いはとても丁寧で、押されたり小突かれたり手荒な真似をされた事など一切なかった。
2人の異形の獣人が慇懃無礼に退いて扉が閉まると、メルツェーデスは室内を見渡して思わず眉を顰めた。ここは多分コテージ風の賓客用領邸の一室だろうが、調度品は高級品だがデザインは下品の一言に尽きた。ゴテゴテしていて統一感もなく、装飾は豪華というより単なる派手好き趣味だった。
天井から下がったシャンデリアも、よく見るとクリスタルの部分が人の腕の形をしていたり、窓のカーテンは紫に金のアラベスク(幾何学的文様装飾)、壁に掛かる絵はどれもこれも縄に縛られた女性ヌード絵画で、残虐性すら帯びている。窓の外は、青々とした樹木と垣根の庭に囲まれていて、平屋建ての一室からでは見通しが利かない。
手近な、何の革で出来たか分からないソファに腰を沈めた矢先、部屋の扉がノックされた。
反射的にメルツェーデスが立ち上がり、身を硬くして振り向いた。
「これはこれは、メルツェーデス・アレハンナ・アッンリエッタ・クアトロポルテ殿下──」
深緑の髪をウェービーに肩甲骨まで伸ばした、背の高いテラン(地球人)の女が立っていた。
歳の頃なら40代半ば、豊かなバストに締まった腰のプロポーション。フロントとバック両面がレース編み上げ、これ見よがしに胸の谷間も露なショート(膝上丈)の、ボディ・コンシャスな黒のエナメル(光沢人造皮)のビスチェドレスを着ている。
「遠路を態々のお越しいただき、光栄の至り」
深紫で艶々(つやつや)な口紅を引いた口元に、妙に歪ませた笑みを浮かべる。
「誰かと思えば、レディ・ヘアルヒュイド・ベルタ・ウェーデン」明白な敵意も剥き出しの目付きで、メルツェーデスは言った。「それにしてはなかなに強引なお招き具合。それとも貴女からの招待状を見落としたのかしら」
「さてさて聞けば、腰本を身代わりにしてまで、お忍びでお出かけされたとか。機警隊も気が気ではありませんよ」
剥き出しになった鎖骨を頻りに左手で撫でながら、ヘアルヒュイドが上目遣いに言った。
「リサは腰本などではありません。私の女御官を侮蔑すると、いかなレディ・ウェーデンと言えど捨て置けません・・・!」
「これは失礼な物言い、ご容赦を」
語気を荒げるメルツェーデスだが、それでもヘアルヒュイドは無遠慮に、目の前の若き皇女を頭の天辺から靴の先まで目を走らせた。メルツェーデスは、あの老舗トゥーランドットからピアッツァを伴って出てきたままの、可愛らしい町娘風のディアンドル・ドレス姿だった。
「それにしても、これまた随分とカジュアルな格好でいらっしゃる。庶民の中に紛れ込む新しいお遊びですか? それともまさか、そんな子供だましの形で、護衛の者たちを煙に巻こうとしたのではありますまい?」
「恥知らずな衣装を纏ってでも、媚を売らねば相手にされぬ、どこかの女主人よりはマシと言うものです」
メルツェーデスは硬い笑みを浮かべ、目の前のヘアルヒュイドを睨み返す。ヘアルヒュイドは、あしらうように鼻を鳴らして薄く笑った。
「さて、侮蔑の交換はこれで終わりです、レディ・ヘアルヒュイド」若い皇女は小さく肩を聳やかし、真顔で言った。「──私をここに連れてきた理由を尋ねましょう、その真意を」
「これは単刀直入なお尋ね。さすがはメルツェーデス殿下」
ヘアルヒュイドが鋭いラインの顎先をくいっと上げ、睨付けるように見下した。
「はぐらかすつもりですか、レディ・ヘアルヒュイド。付きの者たちを手に掛けておいて、ただでは済みません」
身にしている服装とは正反対の、口調の厳しさはやはり一国の皇女だった。メルツェーデスは歳を隔てるヘアルヒュイド相手に、一歩も引かない。
「そうそう、それは謝りましょう。何やらお付の衙衛官が、それはたいそうな強者と聞き及びましたので。こちらからのお迎えの者に、万が一にでも粗相があってはなりませんと、相当な覚悟で向かわせましたもの故」
「迎えの者? あの人とも獣ともつかぬ連中が、ですか?」
それ、本気で言ってるの、とメルツェーデスは眉根を寄せた。
「これは手厳しい。しかし私の最も頼りとする、愛しい武官ですの」
ヘアルヒュイドが勿体付けるように手を2回扣き、さあさあ、お入りなさいな、と声を張り上げる。半開きになっていた扉がゆっくりと開き、メルツェーデスが目を見張るような巨躯の人影がぞろぞろと入って来た。
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written by サザン 初人 plot featuring アキ・ミッドフォレスト