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異世界ケモナー奇譚  作者: ねこミャンマ
4/6

UNKNぉうん

へい! バリカタ替え玉いっちょう! お待ちぃ!


『ふむ、そうであるか……―そこの尋常ならざる者よ、よいか?』


 俺が嫉妬の炎にせっせと薪をくべている中、渦中のネコちゃんとの話が一区切りついたらしい憎きUNKNOWNがこちらに声をかけてきた。


「何も良くないけどな。なに? なんか分かったん?」


『あぁ…お主と獣、いまだ互いに認識できえぬ理由だが、今しがた合点がいった。』


 どうやらUNKNOWNとネコちゃんとの話の中で、俺とネコちゃん、出会えるはずの一人と一匹が何故一向に出会う素振りすら見せないのか、その一連の経緯について腑に落ちる理由が見つかったらしい。


「なんでなの?」


『端的に言おう。今俺にだけ視えているこの獣だが俺にだけ取得できる最低限の存在情報だけしか持ち合わせておらん。』


「端的すぎる。わからん。」


 小難しい事ばかり言われても分からん。


『なんというかだな…その……現状、私の持つ権限によってのみ確認できる情報しかないのだ、この獣の存在に内包されている情報は。』


「………」


 殴りたい。


『つ、つまりだな、な、なんと申せばよいのやら……』


 俺の心の内を読み取って焦るUNKNOWN。

 頭を抱えた雰囲気でああでもないこうでもないとぶつぶつ言っている、ような雰囲気だ。


『そうだな……お前に分かるようにするとすれば……お前…シャコって生物知ってるだろ?』


「あ? 知ってるけども?」


 なんで俺がシャコ知ってること知ってるんだよ! なんてことは思わない。

 そんな疑問を持ち出したらきりがないからだ。


『シャコという生物の特徴とでも言うべきかな、それについても君はある程度知っているよね?』


「あーすんげぇパンチ持った奴ね。」


『そっちじゃないね。他にもあるだろう?』


 他にも? 何があったっけ?


『ふむ、それではこれを見てみよ。』


 そう言うとUNKNOWNは右手か左手かをあげ俺にかざしてきた。

 しかし見ろといわれたそれがない。


「なに? 何を見ろって言うの? 何もないじゃん。」


『いいや、あるね、お前が認識できないだけでおいらはちゃんとここにお前の注意をむけてかざしているよ。先に言っとくけど、おいらがかざしている場所をお前が勘違いしてるなんてこともない。』


 UNKNOWNは俺がUNKNOWNの何をも判然としないことを見越して、右手だか左手だかも判然としていないからといって俺がかざしている物とてんで違う方向を向いている可能性を否定してきた。


『ここには君の見たことの無い色がある。君には見えず、シャコには見える色だ。つまりシャコには取得しえる情報で、君には取得しえない情報だ。見る、視えるというのは情報に付随したものでしかないのだ。』


 というと…ネコちゃんはその存在全てが俺の知らないもの、知ることのできないものだけで成立してる状態ということ? これであってるのか?


『しかり。』


「じゃあ俺の知ってるネコちゃんと違うんじゃない? だって俺ネコちゃん見たもん。」


 あの時俺はネコちゃんの細部に至るまでしっかりと瞼の裏に刻み込んだ。

 あのモフモフとした毛も、ピンと立った耳も、鋭く潤った瞳も全部だ。

 この記憶がある限り、視えないなんてこと認めてたまるか。

 そんなの認めてしまったら、あのワクワクもドキドキもトキメキもすべて幻だったなんてことになってくるじゃないか! そんなの…そんなの!


「耐えらんないっ! いやぁ!」


 チラとUNKNOWNの様子を伺ってみる。

 どうせ頭を抱えるこちらを見てやれやれのような、呆れているかのような、そんな感じで佇んでいるのだろうと。

 しかしどうやらそうでもなく、どちらかというとこちらと同じように頭を抱えている、そんな印象が感じられた。


『これは困った…どうしようか…』


 そう言うとUNKNOWNはこちらをまじまじと見つめてきた、みたいに感じた。

 …釈然としなくてめんどくせえ!


「とにかく! 世界を渡るやらなんやら、そんな話の前に、まずはネコちゃんに会わせろ! そうでないと俺異世界なんて行かないかんね! 興味はあるけど! 興味はすごくあるけど! それでもまずはネコちゃんと会わせろ! 話はそれからだ!」


『そ、そうは言われても―』


「もし俺の意思と関係無しにこのまま転移やら転生やらさしてみやがれ! 破茶滅茶にしてややっからな! 俺に対してどんな処理をしようが必ずだ! 必ず破茶滅茶にしてやる! 俺の愛、そしてネコちゃん、おまけにみっちゃんの名にかけて、必ずだ! 何が何でも必ずだ!」


『………あいわかった。しかたあるまい……』


 そう言うとUNKNOWNはおもむろに手をかざした。


「また燃やすつも―っ?!!?」


 あまりにも自然で、しかしあまりにも不自然だった。

 UNKNOWNが手をかざしたのだ。

 ハッキリとせず、何をも釈然としない、目の前に居そうで、居ないようで、居るっぽかったりする、そんな不自然が自然であると受け入れ始めていた俺にとってそれはあまりにもごく普通の所作で、異常で、故に一瞬の間、脳がバグった。

 UNKNOWNが UNKNぉうん くらいになったのだ。

 だがそんなことはどーだっていい子ちゃんだ。


「逢いたかったぜ、マイトゥルー・ラブ・キャット…」


 求めて山なんだぞ…! 誤字じゃないよ! 思いが溢れて山なんだぞ! 


『やむを得ぬ故の特別措置なり。』


 ギラつく双眸、大いなる体躯、モフモフのお毛々! ゆんゆらの尾っぽ! ピロリロしたおミミ! 


『これ! また毛が逆立っておる! やめんか! 恐れておろうが!』


「フギャーーーッ!!」


 待望のネコちゃんがそこにはいた。

 


(バリカタでこんな待たされたん……)

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