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異世界ケモナー奇譚  作者: ねこミャンマ
3/6

ストーカーのそれ。

(替え玉…遅いなぁ……)


とかく居るには居るらしいそのネコちゃん。


 UNKNOWNの話によるとあちらも俺の存在を望み受け入れてるとのこと。


 とりあえず―


「―あんたって呼んでいい?」


『僕のこと? 好きによんでくれて構わないよ。UNKNOWNでもなんでもね。』


 まーそもそも今更呼び方どうこう取り繕ったところで、心とでも言うべきか、考えてることじたいモロバレ状態だ。


 お言葉のとおり許可も得られたので好きに呼ばせてもらおう。


「あんたには見えてるの? 居るには居るんだよね? そこらへんに。あのおっきなネコちゃん。」


『ああもちろん。私のすぐ横で君をじっと見ているよ。』


 先程、自分は橋渡し的な存在どうこうと言っていただけあってUNKNOWNにはこの場にいるらしいネコちゃんの姿がしっかりと確認できているようだ。


「ふーん、そうなのね……え?」


 ちょっと待って! え? ネコちゃんには俺のこと見えてるの? 俺には見えてないのに? 


「―あんたさっきお互い認識出来てないとかなんとか言ってたくない?」


『あぁ、未だ互いに認識出来ておらん。』


「でもそのネコちゃん、俺のことじっと見てるって言ったよね? それはどうゆうことよ?」


『そうだねぇん、どうゆうことだろうねぇん? 色々あたしも混乱しているよぉん。』


 …ネコちゃんは俺を認識出来ていない、それにも関わらず何故こちらを見ているのか? 見ることが出来ているのか? 

 

 俺の頭で考えつく理由としては、UNKNOWNの視線の先を追った結果、こちらを見ている、だとかそのくらいだ。


 しかし―


「―ネコちゃんにも俺にもあんたは同じように見えてるの?」


『ん~? それはど〜ゆうこと〜?』


「見えたところでその…あれだよ、あれ! 何も形容出来ない? …厳密に言えば、同じように見えてても同じようには見れないような……なんというか……とにかくあれだよ、よくわからんような感じに見えてるのか? …的な? ……ああっもう! 頭こんがらがってくるな!」


『あーそれなー多分そやろなーそんな感じに見えとるんと違うかなーこの獣ちゃんも。』


 ヘラヘラとした受け答えしやがって…まぁいいや。

 しかし、だとすると謎だ。


 ならばネコちゃんは何故こちらを見つめていられるのか? 何をもってこちらを見つめることが出来ているのか?


 先程考えついたUNKNOWNの視線の先を追ったという可能性、これは恐らくない。


 ネコちゃんにも俺と同じようにこの正体不明のUNKNOWNが見えているのなら視線の先を追うなど出来るはずもない。


 何故ならこのUNKNOWN本当によく分からん存在だからだ。


 男か女か、年若いのか老いているのか、アジア系なのか欧米系なのか? 性別、年齢、人種、何から何まで、すべからく判然としない。


 そういった要素からもちろん、どこに視線を向けているのかなんてのも分かるはずがない。


 【存在】という言葉の意味すら、はたしてこのUNKNOWNに当てはめていいものなのか…とにかくよく分からん怪しい【存在】なのだ。


 以上の点からしてUNKNOWNを介して俺を見つめているという可能性はほぼゼロだ。


 一体どうしてネコちゃんはこちらを見つめていられるのだろうか? ……だめだ分からん。


 推測しようにも推測するための素材がなさすぎてまるで検討もつかない。


 となれば、もう俺の考えうる可能性としてはこれこの一つだけだ。


「……愛の力?」


『…まだ野生の勘の方がしっくりくるぜよ。』


「……ネコちゃんへの俺の愛、その力ゆえ…か…」


『…ねぇそのネコちゃん今どうなってるとおもう?』


 えらく嘲るような言い方だな……っまさか―


「―ってめぇネコちゃんに何した? ああ?」


 右ストレートでぶっ飛ば―


『―っち、ちょっと待ってちょっと待ってってば! ぼ、僕はなんにもしてないって! やめてよ物騒なことはっ!』


「あぁ? てめぇが不穏なこと言い出したんだろうが、あぁん?」


『どうなってると思う? って聞いただけやろがっ!』


「御託はいいからさっさとどうなってるか言えよ。事と次第によっちゃぁ―」


『―逆立ってるの! 毛が! それはもう全身の毛が! あんたが愛云々どうこう言ったあたりから急に! なんでかわからないけど急に!』


「あ? 何だそれ? てめぇなんだ? そりゃ俺のせいとでも―」


 ―俺の……


『……俺の、なにさ?』


「…いや、いい気にするな、なんでもないから。それより他に変わった様子はないか? いや、今は? 今は一体どんな様子なんだ?」


『他? 他には特にないかな? 今はもう逆立ってた体毛も徐々に収まっていってるよ。』


 そうか、それならば―


「―そうか、安心したよ、特に命に関わるようなことじゃなくて。俺の愛を直接伝えられないなんて事になったらそれこそもうあれだよ。全て壊してしまうかもしれないしね。それこそ狂ってしまうと言っても―」


『―あっちょっと待って! 今いきなり収まりだしてた毛がまた逆立った! 一瞬で! さっきよりもすごく逆立ってる! …あっ瞳孔も開いてるよ!』

 

 確信した。


 やはりネコちゃんは俺からの愛を受信しているのだ。

 それによってこちらの位置を割り出しているのだ。


『あ、さっきまであんさんの方向いとった獣さん、急にそっぽ向かはりだしましたわ。』


 ほら、つぶさに受信してる。


「大丈夫だよ。照れてるだけだろうし。それよりもさっきはごめんね? 物騒なこと考えちゃって…あと殴ったりもしてごめんね?」


『…え? あ…うん…』


 何か物言いたげな雰囲気なUNKNOWNだが放置しておこう。


 それにしても、いや〜なんて素晴らしいんだろう! 俺のネコちゃんへの愛はいまもなおしっかりと伝わっているようだ!


 よし! そうと分かれば早いところこの状況から脱却したい。


 そしてはれてネコちゃんに会えた時はこの手で直接触れてみたい、溢れんばかりの俺のこの愛だって直接伝えたい。


 余すことなく身振り手振りで直接、この真心込めた愛を伝えたいのだ。


 電子メッセージより直筆の手紙、直筆の手紙より電話、電話よりも直接会って面と向かっての方が、より真心というのは伝わるものだろう、俺はそう考えている。


『はじまった…』


 俺は愛をささやきたいわけじゃない。

 そんなのは、ささやかれたい奴らに、ささやきたい奴らがささやいてあげればいい。


 あれ? なんだか早口言葉みたいだな?

 まぁそれはそれとして。


 かくいう俺は愛をできるだけ重く、重ぉくして相手に浴びせつけたいのだ。


 だからこそ直接伝えたい、少しでもこの愛を重くする為にも、俺は直接伝えたい、身振り手振りで。


『長い長い! 聞きたくない聞きたくない!』


 それによって相手がどう思おうと関係ないとは言わないが、それでも俺はそうしたいのだ。


 愛してもらえる愛し方なんて、そんな器用なこと俺には出来ないし、する気もない。


 俺の愛とはそういうものだ。


 その時その瞬間の行動を後悔するかもしれないからと躊躇いたくないのだ。


 いつだって6億%の気持ちで、現在進行系、そう! ナウで伝えていきたいのだ。


 その時その瞬間、逐一躊躇うような、そんな生き様で後悔はしたくないのだ。


 ……あれ? なんか名言みたいになっちゃったよ。

 いや、みたいじゃないな。

 間違いなく名言だ。

 我ながらホントしびれる。 


『……終わったかな?』


「ご清聴ありがとう。」


『…はぁ……君の愛ってむしろ呪いとかそういう類いのものじゃないかな?…』


「失礼な! 純愛だよ!」


 それに直接伝える派だって言ってんだろが。

 呪いっつったらあれだろ? 人知れず夜中に山だか林だかで、恨んでる相手の髪の毛だかなんだかを仕込んだ藁人形に釘コンコンするやつだろ!

 すげー間接的じゃねーか! そんなもんと一緒にするなこのバカたれが!


『すみません、もう何も言いません。』


 わかりゃいい。


 さてそろそろ話を進めなければならんようだ。

 いつまでも進展する様子を見せないこの状況を打開しなければ。


 その為にはまず打開する状況をできるだけ細かく把握することから始めなければ。


「それで? 結局いつになったら動きを見せるんだ? まだ分からんこともあるし。そもそもどういうきっかけでここに来たのよ? 俺は?」


『ふむ…といわれてもな…一通りは説明したと思うのだが……私の説明では状況の把握に足りぬのか?』


 いや俺をバカみたいに言うんじゃねーよ。

 え? 足りてると思ってたの? 足りてるわけねーやん? 何言ってんだこいつホントに…色々足りてねーけど、何が一番足りてねーってお前の頭だわ。


『っぐぅ…』


 そもそも何がきっかけとなってここに来たのか、それが分からんと言ってるんだ。


 条件がどうだこうだとか、そういうのとは別に、きっかけというものがあって然るべきなんじゃないのだろうか?


 例えば激しい光に包まれて〜だとか、事故で命を失ってしまって〜だとか、激しい炎に包まれて〜だとかな! ……いや、激しい炎に包まれる程度なんて特に何のきっかけにもならないな…

 実際何も起こらなかったし。


 例えから除外しておこう。


 …とにかくそういった記憶がいくら頭の中を反芻しても見つからない。


 ネコちゃんと出会えて興奮してたら気づけばここにいたんだ。


 例えるならそうだな…まるで夢の途中でいきなり目を覚ましてしまったかのような、そんな気分だ。

 なんとなくやっちまった〜みたいなとこで覚めたっぽいことだけは覚えてる。


 ……本当にバカバカしい。

 むしろ今のこの状況こそ、夢みたいなもんなのに。

 こんな現実いらないんだよ。

 早くネコちゃんといちゃつきたい。


『な、何度も言うようだが先程の現象は決して意味のないものではないぞ? 本来ならあの炎が鎮まり次第、主と獣はお互いの存在を認識しあうことが出来るはずだったのだ。それこそ主のいうこと然り、きっかけとやらであったはずなのだ。』


「いや、実際問題見えませんが? 認識認識言ってるけども、それを説明されたところで俺には今ある事実しか認識できておりませんよ?」


『うぅ……しかし、なんとも面妖な……』


 面妖なのはおめえだよ。


『…くっ……しかし……―ん? なんと?』


 悔しそうにしたかと思えば一転、どこを向いているのか定かではないが、確実に俺以外に向けてUNKNOWNは意思の疎通をしだす。


 ……ネコちゃんかな?


『ふむふむ…っ! なんと! そ、そうであったのか……しかしなんとも―』


「ネコちゃん?」


『―ん? なんだい?』


「今あんたが会話してんのって、ネコちゃん?」


『あ、あぁ、そうだよ。ネコちゃんさ。』


「…ふぅん…」


『なにか気になることでも?』


「いや別に。」


 なんて羨ましいUNKNOWNなんだ……エンヴィーな炎が燃え上がるぜ。



(替え玉たのんだよね? 俺)

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