大人になるということ、それは、成長すること
悩もうと思ったが、結局一瞬で答えは決まった。
俺は高木に電話した。
「ああ、メール見たけどよ。あれはダメだ。六花は俺の大事な部下で、重要な仕事もしてるんだよ。お前と付き合ってるヒマはねぇんだな」
「そうですかぁ。残念ですが、石神先生がそうおっしゃるのなら、キッパリ諦めます」
こういう男だった。
異常なほどの面喰いで、会うたびに一目惚れする。
しかし、相手が拒絶すると、驚くほどにあっさりと身を引く。
本当に惚れてるのか、とも思うが、本当のようだ。
四六時中、その女のことを考え、ため息をもらしている。
よく分からない奴だが、いい奴であることは確かだ。
変態ではあるが、女のことも大事にする。
以前にこんなことがあった。
「石神先生、ちょっとお願い事がありまして」
「ああ、なんだよ」
高木は性病検査をして欲しいと言ってきた。
自分じゃねぇ。
可愛らしい女性を連れてきて
「この子のこと、どうかよろしくお願いします!」
と言う。
費用は全額自分が出すと言う高木を、検査の間に連れ出し、詳しい話を聞いた。
「ホテトル嬢なんですよ、あいつ」
なんでも、高木が頼んでやって来たのがあの子だったらしい。
「先生も見たでしょ? あんなに可愛くて、あんなに優しそうで。あんな子は風俗なんかしてちゃダメだ。俺はホテルで散々話して、ホテトル嬢をやめる約束をしたんです」
「そうか」
「でも、もしかしたら性病とかで今後苦しむかもしれないじゃないですか。だからちゃんと検査して、治すもんは治して、新しい生き方をしてもらいたいんです」
「そうか」
「ところでさ」
「はい!」
「おまえやったの?」
「はい、やりましたけど?」
しっかり楽しんで、その後で説教したのかよ。
まったく呆れ返るほどバカと言うか純粋と言うか。
それでも、信じてもらえたんだから、やっぱりこいつは大したもんだ。
高木は女の子がまともな会社に就職できるまで、彼女を援助し続けた。
あの後は一切、身体にも触れなかったらしい。
俺は響子の病室へ行き、一通り響子に構ってから六花を連れ出した。
「一応な、お前にも言っておくけど」
「なんでしょうか?」
「不動産屋の高木に会っただろう」
「はい」
「あいつがお前のことを好きになったって言うんだよ」
「はあ」
「でも、俺が断ったからな。お前の気持ちは何も聞かなかったけどな」
「はい、それで構いません」
「そうか。話はそれだけだ」
「私は石神先生だけですから」
「はい?」
「分かってます。私なんか気持ちの悪い顔ですからね」
「そんなことはないぞ」
「いえ。響子も可愛そうに、あんなバタ臭い顔に生まれてしまって」
「お前、ちょっと待て」
「でも、響子が可愛がられてるんですから、私にもワンチャンあるんじゃないかと」
「いい加減にしろ!」
ああ、気分転換がしたい。
俺は家に帰って、双子の部屋に遊びに行った。
二人とも風呂に入り、パジャマになっている。
「あ、タカさんだぁ!」
「いらっしゃい!」
俺は二人をベッドに押し倒し、ほっぺたをグリグリし、その後交互に投げ飛ばして遊んだ。
キャーキャー言って喜ぶ。
亜紀ちゃんが何事かと部屋に来た。
「ちょっとあんたたち、静かに、あ、タカさん」
「かかれ!」
双子は亜紀ちゃんに抱きつき、俺は三人抱えてベッドに投げる。
「ちょっと待ってください!」
亜紀ちゃんがさけぶが、俺は亜紀ちゃんを押さえ込んでほっぺをグリグリしてやる。
双子はあきちゃんの脇をくすぐっている。
涙目で亜紀ちゃんが笑う。
「もう、なにしてるんですか」
「みんなかわいくってなぁ」
「何言ってるんですか」
「皇紀ちゃんは?」
ハーが言う。
「そうだよな」
俺たち四人は皇紀の部屋を襲撃した。
机に向かっていた皇紀を俺がベッドへ投げ飛ばす。
「ウワッ、なんなんですかぁ!」
俺が笑っていると、三人が皇紀を押さえ込んだ。
「やめて、なになになに!」
抜け出そうと抗う皇紀を、三人は必死で押さえ込み、くすぐろうとする。
もうそろそろいいだろうと、俺が近づいたとき。
「あ、あ、あー、それはやめてぇー」
一際大きな声で皇紀が叫んだ。
ルーは皇紀のパジャマの下を降ろし、ついでにパンツまで引き下ろした。
皇紀の股間が、丁度亜紀ちゃんの目の前にあった。
「あ、皇紀、毛が生えてる」




