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星の家族:シャルダンによるΩ点―あるいは親友の子を引き取ったら大事件の連続で、困惑する外科医の愉快な日々ー  作者: 青夜


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りっかちゃんハウス

 「ねぇ、六花」

 起きて顔を洗い終えた響子が言った。


 「なに、響子?」

 六花はベッドを直しながら応える。



 「タカトラとお風呂に入るとね」

 「それ、もうちょっと詳しく!」


 六花は取り替えたシーツを放り出して駆け寄る。


 「うん、なんて言っていいのかな。タカトラの手って堅いのよね」

 「うんうん!」


 「だから身体を洗ってもらうと、ときどきちょっと痛いの」

 「はいはい!」


 「でもね、それが気持ちいいの」

 「ブファッー!」


 「痛いのに気持ちいいってなんでかなぁ」

 「……」


 「ねぇ、六花きいて、え、鼻血でてるよ!」





 六花は、白い看護服の前を赤く染めていた。






 六花は新年早々に引越しをした。


 場所は病院近くのマンションで、ホテル・オークラの本館近くだ。


 5LDKの間取りで、非常に豪華な部屋だった。

 住人は大使館員など、外国人も多い。


 六花は、そのマンションを「与えられた」。

 賃貸ではない。六花名義のものとして、いただいたのだ。


 石神からは、数千万円単位でお金が動くと言われて驚いた。

 しかし実際にはその10倍以上のお金が、六花のために使われた。




 引越しの荷物は少なかった。

 家具や服などは、ほとんど不要だった。

 ただ、大量の「資料」のダンボールだけだ。



 家具はすべてマンションに揃っていた。

 高級なもの、としか六花には分からない。


 服も、専用の部屋にクローゼットにかかり、またタンスに仕舞われていた。

 下着まで大量にあった。


 「一体、誰が用意してくれたのかな」


 服はすべて六花のサイズに合わせられていただけではない。好みまで考慮されている感じがする。

 下着もすべてシルク素材などの高級品で、中には非常にきわどいものまであった。


 サイズはわかる。事前に病院の小部屋で全身を計測されたからだ。


 「あ、下着は脱がなくて結構ですから!」


 六花はうなずいて、履き直した。


 「びっくりしたぁ」


 メジャーを持った女性の呟きが聞こえた。




 大量の服は、ありがたく、買い揃える手間も省けて、非常に助かった。


 他の部屋には収納が多くあった。

 特に、寝室には大きなベッドの他に、周囲の壁全面に、天井までの収納の棚が並べられていた。


 「お前は「資料」が多いから、収納を多くしてもらうよう頼んでいるからな」

 六花は石神にそう言われたことを思い出した。


 「ああ、「大事な資料」は、全部寝室に置けよ! 他の部屋はダメだぞ!」

 その時、石神から何度も念を押された。


 その寝室の収納棚は、すべて鍵付きの扉がついていた。


 キッチンの戸棚には、多くの調理器具、食器が入れられている。

 大型の冷蔵庫には、ご丁寧に当座の食材までが入っていた。


 食材もそうだが、飲み物などはすべて六花の好みのものだった。

 ハイネケンのビールは、幾つかの箱が別途置いてあった。



 リヴィングには、80インチの大型テレビがあった。

 それを見たとき、六花は5分ほど硬直し、次いで涙を流した。


 「尊き……」


 六花は、テレビ前の部屋のソファの位置を動かし、何度も微調整した。

 他の部屋は、まったく置かれたとおりに使った。



 支度金として、5千万円渡された。


 「もう買うものもないのに」


 六花の名義の新しい口座を与えられ、その中に入っている。

 それから、一切手を付けられなかった。


 




 引越しをして一週間後、石神が六花のマンションに来た。

 仕事帰りに一緒に来たのだ。


 「荷物も片付いたろうと思ってな。どうだ、新しい家には慣れたか?」


 石神はいつも六花を気遣ってくれる。

 本当に優しく、毎回惚れ直してしまう。

 今日はもしかして……




 マンションの部屋に入ってもらい、とりあえずリヴィングへ案内した。

 石神がコーヒーを好むことは知っているので、初日から用意してある。


 ソファに座っててください、と言ったのに、何故か石神は立ったままだ。








 「あの、石神先生、どうか座っててください」

 自分の声が聞こえなかったのかと思い、六花はもう一度声をかけた。











 「お前、これはなんだよ」

 「あ、すいません、ちょっと片付けますね」


 六花は、貯金を崩して購入した千枚近い数のDVDと、電動マッサージ機を隅に寄せた。 

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