「黄昏のウィーン」、全然関係ありませんが、何か癒しガ欲しくて
子どもたちに早く寝るように言い、石神はハマーに乗り込んだ。
あいつらは本当に。
頭痛がする。
一江のマンションのドアの前で、深呼吸をする。
物音は聞こえない。
ドアを開けると、前と同じように大森が玄関で手を伸ばして倒れている。
一江がその向こうで仰向けで転がっていた。
その横には、大量の吐瀉物がかかった、鋭利な切り口の一升瓶が転がっていた。
「なんだ、こりゃ」
奥へ進む。
靴は脱がない。冗談じゃねぇ。
まともなマナーなんか必要ない連中だ。
栞が空の一升瓶を抱えて寝ていた。
それはいい。
理解の範疇だ。
「問題はコイツだな」
六花が下半身丸出しで潰れている。
そしてセーターが首までたくし上げられ、下着を剥ぎ取られた胸に、左手を置いている。
電動マッサージ機が右手に握られ、身体の横で「ブーン」という音を立てている。
ちょっと小便臭い。
「ハァー」
俺はため息をついて、四人の服を脱がせ、浴室へ運んだ。
幸い広めのバスルームで、浴槽に女たちを突っ込む。
シャワーヘッドを中へ入れ、ぬるま湯を頭から浴びせながら湯船に溜るようにする。
今日は桁違いに飲んではいないようだ。じきに目を覚ますだろう。
俺は部屋に転がる一升瓶の数を確認していた。
院長へ電話する。
「おう、石神かぁ。どうした」
「また集団食中毒です」
俺と院長の間の隠語になっている。
「そうか、大丈夫か?」
俺は院長にメンバーと状態を簡単に説明した。
「分かった、上手くやってくれ」
「はい、こんな時間にすみませんでした」
電話を切り、部屋を見回してタオルなどを探していると、浴室から騒がしい声が聞こえた。
誰かが目を覚ましたらしい。
俺はキッチンのガス制御盤のところへ行き、スイッチをオフにした。
「ぎゃー! つめてぇ!」
俺はまたため息をつき、ありったけのタオルを手に浴室へ向かった。
一江には裸のままで出るように言い、全員の服を用意させた。
「部長、セクハラですよ」
そう言う一江に
「それは人間様が言う台詞だ!」
俺はついさっき、子どもたちに神様の話をしてたんだぞ。
それがどうして直後にうじ虫の面倒を見てるんだ。
「お前らは、どうして毎回毎回!」
俺は頭を小突き、殴り、顔を蹴飛ばしながら四人に説教をした。
キッチンに正座させている。
女たちが倒れるたびに、ゴンと音がする。
その後、四人に部屋の掃除をさせた。
「おい、六花、お前は俺にコーヒーを煎れろ! 不味かったらぶっ飛ばす」
「ひゃ、ひゃい!」
一江たちはバケツと雑巾を持って行く。
この後、栞と六花を送らなければならない。
帰りに、ちょっと響子の寝顔でも見るか。
明日は一日寝ていよう。




