表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
星の家族:シャルダンによるΩ点―あるいは親友の子を引き取ったら大事件の連続で、困惑する外科医の愉快な日々ー  作者: 青夜


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

71/3160

クリスマス・パーティ Ⅱ

 午後五時。

 テーブルに並べられた料理を前に、クリスマス・パーティを始めた。

 コタツは別にあるが、どうせ鍋になれば戦場になることは目に見えている。

 だからテーブルで、まずは会食らしい会食を、と俺が考えたのだ。


 メインのすき焼きのために用意した霜降りは20キロ。

 単純に一人当たり1キロを超えるわけだが、これが多すぎると言う奴は、うちの食事を知らない奴だ。

 この量で下手をすれば殴り合いの喧嘩になるんだからなぁ。


 これまでに、皇紀は二度ほど亜紀ちゃんに顔面パンチを喰らい、10回以上は双子に蹴りを入れられている。

 双子は亜紀ちゃんに20回以上頭をはたかれ、双子同士は百回以上掴み合をしている。

 皇紀だけは手を出していない。

 


 ターキーのローストは、最初はもの珍しさから子どもたちもせがんだが、好みの味ではなかったようだ。

 大人たちでゆっくりと食べられる。

 カナッペは100種類以上あるので、その組み合わせを求めて争奪戦になった。

 同じ種類で20個ほどもあるのだから落ち着いて食べれば良い、と思うのが浅はかな大人の考えだ。

 子どもたちは「至高の組み合わせ」の存在を信じ、さらに上位の組み合わせを独占しようとしているのだ。

 響子はローストを少し口に入れ、カナッペを数枚食べた。


 俺は響子にコンソメスープをよそってやる。

 俺が作った辰巳芳子直伝のものだ。


 俺は以前に辰巳先生のスープ教室に通ったことがある。

 脳腫瘍で食欲の落ちたお袋に、最後の最後まで口に出来るスープを作ってやるためだ。


 今はネットなどで簡単なレシピが見られるが、教室で教わるのはとんでもなく難しい。

 食材が限定されるのだ。京都のどこそこの人参、大根は静岡の○○農場のもの。

 それを手に入れることから始まる。

 しかし、教えの通りに作ったスープは、絶品になる。



 「おいしい」

 響子はため息と共に漏らした。

 ロックハート家ではさぞいいものを口にしていただろうが、このスープはそれに負けないはずだ。

 辰巳先生の下には、多くの料理人が教えを請いに来る。

 それほど食を極めた方なのだ。






 大変手間がかかるので、量をそれほど作ってない。

 大人達にカップ1杯ずつ配った。

 

 「ほんとうに美味しい」

 栞が感動した。

 「ウガァ!、ゴオオオオゥッってぇ!」

 六花が何言ってるのかわからない。多分感動している。


 俺は争奪戦の亜紀ちゃんを呼んで、残り少ないスープを飲ませた。

 亜紀ちゃんは目でカナッペの減りを追っていたが、一口飲んでカップに釘付けになる。

 「なんですか、これは!」


 「もう、それで終わりだからな」

 「エェー!」

 「作るのが本当に面倒だから、もうしばらくは作らないからな」

 「そんなぁ、死んじゃいますぅ!」

 死なねぇよ。



 子どもはまだ味蕾も未発達の上、味覚も覚束ない。

 皇紀あたりならもう分かるかもしれないが、自分たちを差し置いて皇紀が美味いものを食べたと知ったら、恐ろしいことになるからなぁ。

 


 その時、皇紀が叫んだ。

 「ゴフゥッー!!」

 あ、食べたな。

 栞と亜紀ちゃんが目を合わせて笑っている。

 自分のジュースを取りに、慌ててこちらへ戻る皇紀。


 カワイそうになぁ。でも盛り上がったぞ。


 爆弾があることを知った双子は、手を止めた。

 「亜紀ちゃんー!」

 「いや、栞さんも作ってるのよ!」

 

 「ちきしょー、でかいオッパイでわるだくみかぁー!」

 ひでぇことを言う。


 「もぐぞ!」


 「え、なにをー?」


 六花は幸せそうな顔でカップを握っていた。


 響子が明るく笑っていた。

読んでくださって、ありがとうございます。

もしも面白かったら、どうか評価をお願いします。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ