クリスマス・パーティ Ⅰ
12月24日。
簡単に昼食を食べ、俺たちは栞と響子たちを待っていた。
双子は朝からそわそわして落ち着かない。
何度もリヴィングに飾ったツリーを見に行き、ライトの確認、飾り付けの追加などを検討している。
もういいだろう(笑)。
午後二時になって、チャイムが鳴る。
亜紀ちゃんが出迎えに行こうとすると、双子がダッシュで玄関へ走った。
「こんにちは」
栞だった。
淡いベージュのチェスターコートに、下は薄いブルーのセーター、下は白のパンツだった。
子どもたちを相手にするから、動きやすい服で来たのだろう。
それにコタツで鍋だと伝えてあるから、スカートでは支障がある。
ピンクのキャリーケースは俺が預かり、部屋へ運んだ。
亜紀ちゃんは栞の手を取り、リヴィングへ引っ張っていく。
双子はその前にダッシュで階段を昇っていった。
興奮が収まらないらしい。
三十分後、響子が六花と一緒に来た。
俺が迎えに行こうと思ったのだが、六花がタクシーで連れてくると言うので、任せた。
響子は六花に抱かれていた。
オフホワイトのフリルのたくさん付いたドレスだ。膝下から厚手のタイツが見える。
響子の身体にピッタリだが、まさかオーダーメイドか?
まあ、あの一族だからなぁ。
六花は黒のシャツに黒のジーンズ、バーバリーのトレンチを着ている。
靴はごつい編み上げのレッドウィングだ。
シンプルな組み合わせだが、175センチの六花が着ると、モデルのようだ。
また双子がダッシュで来る。
子どもたちは六花は初めてなので、まず挨拶をした。
「きれい!」
「芸能人?」
双子は正直な感想を言う。
六花は不思議そうな顔をしている。褒められる理由が分からないのだ。
こいつはなぁ。
「あ、目の色が違う!」
ルーが気付いた。
「あ、魔法使い!」
子どもアニメでそういうのがいる。
「びびびびびび」
六花が突然、右手を上に向けて謎の言葉を吐いた。
「お前、なんだそれ?」
「いえ、光線的なものを出せばよいのかと」
「「「「「「「…………」」」」」」
俺たちは無言になった。
とにかく入れよ、と勧めると
「石神先生、すみません」
と響子を預けてくる。
六花は丁寧にブーツの紐を解き、お邪魔しますと丁寧に頭を下げてから家に上がった。
自分の世界を持ってる奴だなぁ。
俺が料理の下ごしらえを始めると、エプロンを付けて栞と亜紀ちゃんが手伝ってくれる。
クリスマスらしく、ターキーのローストを作るが、別途すきやき鍋もある。
俺はローストの下ごしらえをし、栞と亜紀ちゃんにはひたすらカナッペを準備してもらう。
本当はその場で食材を乗せても楽しいのだが、どうせ大量の食材を乗せて何を食べてるのか分からなくなるのが目に見えている。だから、事前に見た目よく作っているのだ。
食事時には人格が変わる亜紀ちゃんだが、調理中につまみ食いをすることはない。
どういうシステムなのか、俺にも分からない。
見ていると、相変わらず仲良しで、二人でキャーキャー言いながら楽しんで作っている。
「花岡さん! それ辛子が多いですよ」
「大丈夫よ」
不安な会話も聞こえるが、どうせ皇紀が食べるのだろう。
「あ、亜紀ちゃん、ワサビなんてダメよぅ」
「大丈夫です。肉大盛りにみせかけると、皇紀が食べます」
「えぇー」
皇紀、がんばって盛り上げてくれな。
栞が俺に近づいて耳打ちする。
「石神くんが食べそうになったら、私が止めるから!」
ありがとうございます。
リヴィングを見ると、ソファで双子が六花に付ききりで話している。
オッドアイのことを聞いているようだが、六花は丁寧に答えているようだ。
以前であればキレるか逃げ出していただろう。
「ねえ、りっかちゃん。何で目の色がちがうの?」
「私にも分かりません」
「見えにくくないの?」
「別に何も問題はありません」
「左目だと、青く見えるの」
「そんなことはありません」
「どうしたら、そんなきれいな目になるの?」
「さあ、綺麗でしょうか?」
「「きれいだよぉ!」」
大変だな、六花。
外見の美しさのためが大きいが、性格がこれまでにないタイプで、大いに双子の興味を引いているようだ。
響子はその横でソファで寝ている。
六花のコートが響子の上に乗せられている。
響子は、心地よい温もりの中で、幸せそうに眠っていた。
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