表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
星の家族:シャルダンによるΩ点―あるいは親友の子を引き取ったら大事件の連続で、困惑する外科医の愉快な日々ー  作者: 青夜


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

69/3161

買い物

 病院へ来たアビゲイルに、俺は響子の扱いについて、簡単に説明した。

 体力がないので、歩かせないこと、そして休憩をこまめに取ること。

 食事は消化の良いもの、冷たいものはダメ、など。

 そして、看護師が同行するから、必ず彼女の指示に従うこと。


 「一色六花です、宜しくお願いします」


 六花はアビゲイルに挨拶をする。今日は私服だ。薄い黄色のパンツスーツで、濃紺のネクタイまで締めている。

 意外と趣味がいい。

 ちょっと宝塚の雰囲気がある。


 「ほお、これはまたお美しい方ですね。こちらこそ、今日は宜しくお願いします」

 英語だから、六花は褒められたことが分からない。

 俺は響子に大事なことは通訳してくれと頼んであるが、8歳の子どもにどこまでできるか、不安はある。

 しかし、基本的には響子のためにならないことを止めろと六花に言っているので、そこは大丈夫だろう。

 何しろ、度胸だけは誰にも負けないからな。


 




 送り出した俺は、子どもたちにプレゼントを買いに行った。ケーキも注文しなければ。

 咲子さんから事前に連絡があり、あまり高価なものは与えないで欲しいと釘をさされている。

 大丈夫なつもりなんだけどなぁ。





 最初に帝国ホテルでケーキを注文し、俺はそのまま昼食をとった。

 早めに済ませたいので、レ・セゾンでサーロインのポワレを頼み、前菜を適当にと注文する。デザートを聞かれたので、白桃のジュレを頼んだ。

 

 次はプレゼントだ。

 亜紀ちゃんにはロロピアーナのマフラーを。皇紀にはゼニスのオープンハートを。ルーとハーにはそれぞれにファーバー・カステルの36色トリプルセットを買う。


 皇紀に時計はまだ早いかとも思ったが、まあいいだろう。



 響子はベッドで音楽を聴くことが多いので、ヘッドフォン「HIFIMAN / SUSVARA」を。



 栞はどうしようかと思ったが、ジャックマリーマージュの美しい青のグラスを入れたものを頼んだ。






 ついでに食材なども手配し、俺は帰宅した。





 家に着いて間もなく、響子から電話が入る。

 

 「おう、どうかしたか?」

 「タカトラ、あのね、六花もクリスマスに一緒に行ってもいいかな?」

 「どうして連れて来たいんだよ」

 「あのね、なんかね、六花が一緒に行きたいって言ってたの」

 「アハハ、そうか。うん、いいよ。じゃあ、俺から誘っておこう」

 「お願いします」

 「今日はいい服を買ってもらったか?」

 「うん!」

 「じゃあ、楽しみだなぁ」

 「エヘヘ」


 俺は電話を切った。


 

 響子がここまで他人に気を遣うのは珍しい。

 余程、六花のことが気に入ったのだろう。




 そういえば、響子が前に言っていた。


 「六花だけが私を叱る」



 一度、六花が響子の頭に拳骨を落としたことがあった。

 彼女にしてみれば、聞き分けのない子どもに軽く注意した程度だったろう。

 だが響子の身体は免疫系も弱っており、内出血が額にまで拡がり、しばらく消えなかった。


 もちろん、俺の指示ミスであったが、六花は響子に泣いて謝り続けた。

 それ以来、細心の注意で響子の身体を扱うようになったが、叱責だけは続いていた。

 響子はそれが嬉しいらしい。


 ワガママは言うが、六花が本気で叱る場合、響子はすぐにやめる。


 いい関係が築けているようだ。

 俺も六花を響子の専任にして良かったと思っている。






 俺は翌朝、六花に連絡し、土曜日の礼を言い、クリスマスに来てくれと言った。

 

 「響子が一緒に来たいと言うんで、少し驚いたよ。ずい分、仲良くなったなぁ」

 「はい、いいえ。私から頼んだんです、すみませんでした」」 

 「そうなのか?」



 「はい、病院内であれば少しは安心していられるのですが、外で響子の体調に万一があった場合、自分がついていた方が良いのではないかと思いまして。石神先生のお宅ですから、もちろんそんな心配も無いとは思ったのですけど、すみません」



 そういうことか。


 「分かった。響子のことをよろしく頼むな」

 「はい、お任せください!」




 俺は電話を切り、頭を下げた。


 あいつは英語が苦手なのに、休日でも買い物に付き合ってくれた。

 自分が邪魔者になると思いながらも、響子のために行きたいと言ってくれた。



 ありがたいことだ。

お読みくださって、ありがとうございます。

もしも面白かったら、どうか評価をお願いします。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ