クリスマスは家族で
12月中旬の日曜日。
俺は午前中の掃除が一段落した亜紀ちゃんに声をかけた。
「なあ、亜紀ちゃん」
「あ、タカさん、お茶を入れますね!」
いや。
俺の前にコーヒーのカップが置かれた。
亜紀ちゃんは来客のときは俺に聞くが、普段の俺がコーヒーを好むことを知っている。
自分はホットミルクか。
「相談なんだけど」
「はい?」
亜紀ちゃんは厚手の白のタートルネックに、ジーンズを履いている。
スタイルのいい亜紀ちゃんに本当によく似合っている。
「部の連中から打診されてるんだけど、もうすぐクリスマスじゃない」
「あ、ええ」
「それで、うちでパーティはどうかと言ってるんだよ」
「えっ、ああ、いいんじゃないでしょうか」
亜紀ちゃんは一瞬返答を詰まらせた。
よくねぇんだな。
「そういえば、去年まではクリスマスはどうしてたんだ?」
「家で家族で祝ってました。安いケーキと鳥モモ肉とかだけですけど」
俺はちょっと考えていった。
「ああ、だったらやっぱり、俺たちだけでやろう」
「そうですか! あ、花岡さんなんかどうでしょうか?」
「え?」
そうだった、亜紀ちゃんは栞が大好きだったよなぁ。
「それじゃぁ、予定を確認しておくよ」
「あ、彼氏とかと過ごすんなら、こっちは遠慮してください」
「ブフォッ!」
「タカさん、大丈夫ですか?!」
俺は翌日、栞にクリスマスパーティをやることを伝えた。
「絶対に、親が死に目でも行きます!」
眼光鋭く、肉食獣が獲物を狙うかのように即答した。
俺は思わず、一歩退がる。
「じゃあ、そういうことでお願いします。うちの子どもたちとですが、響子も連れて行きますので」
「え、うぅ…………モ、モチロン、ソノホウコウデ」
トラは、一層眼光を鋭くして言った。
俺は早々に薬剤部を出た。
俺は響子にも伝えた。
喜んで俺に抱きついてくる。
「じゃあ、お祖父ちゃんにも連絡しなきゃ!」
「おい、アビーは連れていけないぞ?」
「違うの、新しい服をおねだりするの!」
俺が買ってやってもいいのだが、興奮した響子が熱でもだしても可愛そうだ。
アビーも孫と過ごせて嬉しいだろう。
「ああ、花岡さんも来るからな」
「あ、そう」
あれ、もうちょっと反抗するかと思ったのに。
俺と栞との関係は、なんとなく感じているようだったから。
「花岡さんがいても大丈夫か?」
「うん、羽虫程度、なんとも思ってないから」
お前はすげぇ女だ。
俺は六花にも伝え、買い物に同行できないかを聞いた。
「はい、まったく構いません!」
二つ返事で了承してくれる。
ちなみに、六花の父親の葬儀以降、六花は俺に抱いて欲しいということは言わなくなった。
非常にありがたいことだが、その代わりに忠犬のような態度になった。
俺に会うとキラキラした目で見てくる。見えない尻尾が思い切り振られているような気がする。
それと、あちこちで俺のことを褒め称えているようだ。
そっちはありがたくもないが、その話題で他の人間と仲良くなっているようで、俺も止める気はない。
まあ、他人からどう思われても構わないしな。
部下たちには計画は却下だと告げると、みんなしょんぼりしていた。
「じゃあ、年末年始ですかねぇ」
一江が言う。
やらねぇよ!
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