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星の家族:シャルダンによるΩ点―あるいは親友の子を引き取ったら大事件の連続で、困惑する外科医の愉快な日々ー  作者: 青夜


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しょうもない話

 12月に入り、急に都内は寒くなった。

 天気予報によると、明後日は雪になるそうだ。




 俺は院長室に向かった。




 「一つ許可をいただきたいのですが」

 「なんだよ」

 「明後日は未明から大雪になるようです」

 「ああ、そうだってな」



 「それで、地下鉄口から病院までの歩道の雪かきをしておきたいんですが」

 「おう、俺も丁度考えていたんだよ!」


 ウソつけ、ゴリラ!


 「まあ、外来の患者さんとかが転んでも大変だからなぁ」














 まあ、そういうことで許可を得た。

 計画の詳細はあとで文書にして報告するが、大丈夫だろう。

 俺は各部署を回って、雪かきの人手を確保した。

 また営繕担当部署に、雪かきの道具を確認し、経理に補正予算の中から新たな道具の購入の許可を得た。


 近所の雑貨屋にあるもので、購入は賄えた。










 当日。


 朝8時の集合に全員が遅刻なく集まった。

 俺が総指揮を執り、各班に分かれて、二つの地下鉄口から病院までの歩道の雪かきをする。


 都心にしては結構な降雪で、各班10人ほどが、交代で雪かきを始める。





 実はこの雪かきは、昨年俺が見た光景によっている。




 その日も大変な雪が降った。

 俺はタクシーで出勤したが、歩道の雪かきをしている集団を見たのだ。


 「どこの方々だろうか」


 気になった俺は、一江に確認させた。






 「部長、ハリマン屋の人たちでした!」

 寒さで顔を赤くした一江がそう言った。


 ハリマン屋は関西に本店を置く和菓子の老舗で、病院の近くに大きな東京支社のビルを建てていた。

 俺もときどき買いに行くが、さくさくとした堅くない煎餅が大好きだ。


 創業社長が社員教育に熱心なことでも有名で、いつ買い物に行っても、非常に気持ちの良い接客をしてくれる。




 その日の雪かきは自分の店だけではなく、うちの病院の入り口までやってくれた。

 もちろん誰も頼んではいない。


 後から俺が買い物がてらお礼を言うと、マネージャーが出てきて挨拶してくれた。

 改めて御礼を申し上げると、



 「通院の方々が大変だろうと思いまして、勝手をやらせていただきました」



 そう言われた。








 やはり、あの会社は立派だなぁ。










 今回は、うちの病院でハリマン屋の前の雪かきをさせてもらう。

 そう思っての今回の手配だった。




 あちらは11時の開店なので、この時間に始めれば、社員さんの手は必要なくなるだろう。

 もう雪は止んでいるので、一度雪をどかせばそれで終わる。





 すると、あちこちにスコップなどの雪かきをする人たちが現われる。

 まだ時間は8時半だ。全然雪かきは終わってねぇ。




 一江に走らせると、やはりハリマン屋の方々で、本当は9時集合だったのだが、みんなその30分前に集合していたそうだ。

 それで俺たちが先に始めたものだから、慌てて出て来たのだと。




 「おい、一江、お前ちゃんと今回はうちでやるって言ったんだろうな!」

 「言いましたよ部長! 「それはそれは」って偉そうな人にお礼を言われたんで、帰ってきました」



 「うーん……」








 結局、ハリマン屋の方々も雪かきをし、俺たちは慣れない作業で手際が悪く、ハリマン屋の方々が主に道を作った。

 本当に申し訳なく、俺は再び一江に謝罪に行かせた。


 俺はデパートに甘酒を10本ほど買いに行かせ、それを手土産にさせた。






 一江が帰ってきた。

 様子を聞こうと自分の部屋を出ると、一江の後ろで知らない男性二人が、ダンボールを抱えている。




 「おい、一江、どういうことだ?」

 すると、後ろの男性が言った。


 「石神先生! 御高名は伺っております。この度は弊社のために雪かきなどに尽力くださったそうで、本社の社長が大変に感激しております。ささやかではありますが、これをみなさんで……」




 一江ぇー、お前、お使いも満足にできねぇのかぁ!






















 いただいた煎餅を響子に持っていくと、カレー味のものを喜んで食べた。


 まあ、いいか。

お読みくださって、ありがとうございます。

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