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星の家族:シャルダンによるΩ点―あるいは親友の子を引き取ったら大事件の連続で、困惑する外科医の愉快な日々ー  作者: 青夜


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再び、六花と風花 Ⅴ

 子どもたちも勉強を終え、食事の準備に加わる。

 六花は、ロボと遊んでいる。

 ロボは六花が相当気に入ったようだ。


 「よいですか、ロボ。私は石神先生の二号です。お前よりも偉いのです」

 なんか言い聞かせている。

 ロボが六花の鼻にパンチを入れた。


 「イタイです、ロボ」

 六花はロボを転がし、腹の匂いを嗅ごうとした。

 ソファに寝転んだロボが、六花の頭にネコキックをかましている。


 「イタイイタイ」


 「お前ぇ! 黙ってりゃ調子に乗りやがってぇ!」

 ロボは六花の前で尻を振って逃げる。

 逃げるロボを六花が追いかける。


 「タカさん、あれ何やってんの?」

 ハーが聞いて来た。


 「ドーブツのやることは分からん」

 「なんか楽しそうだよね」

 ロボは巧みに逃げている。

 小回りがきく分、六花に捕まらない。

 しかしやがて、六花の本気の体術でついにロボが捕まった。


 「ハッハッハァー! 所詮お前はネコ! 私はタイガー・レディだぁ!」


 「大人げないね」

 「ああいう大人にはなるなよな」

 「うん」

 六花は前足の下を持って、暴れるロボの腹に顔を埋めた。

 

 「あー、石神先生の匂いがするぅー」

 「「……」」

 「おい! ホコリがたつから大人しくしてろ!」

 「ロボ、怒られました。一緒にテレビを見ましょう」

 六花とロボは一緒にソファでテレビを観た。

 時々六花がロボの匂いを嗅ぎ、ロボに殴られていた。




 風花も見ている。


 「なんか、昔からの友達みたいですね」

 「羨ましくはねぇけどな」

 「あ、また怒られましたよ」

 「謝ってるなぁ」

 「肩に手を置かれました」

 「慰められてやがる」

 「肩組んでます」

 「あれでいいんだろう」

 「はぁ」


 「さあ、料理を続けるぞ」

 「はい!」


 俺たちは、人間の文化に戻った。



 




 

 「風花、もっと煮立ったところをすくえ」

 「はい!」

 大分コツを飲み込んだようだ。

 アロゼを理解した。


 「野菜は肉よりも火が通りやすいからな。火加減に注意しろ」

 「はい!」

 「素材の味とソースを付けた時とを分けるんだ。だからソースは上にかけずに、脇にする」

 「きれいです!」

 風花は、俺が皿に描く模様を見て喜んだ。


 「これを練習すれば、好きな男もイチコロだぞ!」

 「アハハハ」

 俺はまた、魚介類の種類によっての火加減のコツを教えていく。

 魚の骨の抜き方も教えた。


 「なんでパイに包むのかと言えば、蒸した魚は実が崩れやすいからだ。それにパイに包むことによって、香りを閉じ込める。だから反対に魚臭くならないように……」

 亜紀ちゃんはひたすら肉を焼き、皇紀と双子はスープを作って行く。

 終盤に向かって、双子は洗い物に専念していく。





 食事の準備が出来た。

 俺は最後に、風花のためにシャトーブリアンのいい肉を焼く。

 一度全体を軽く炒めた塊を、オーブンに入れてある。

 比較的低温で焼いていた。

 そうすることで、肉の旨味を逃がさない。

 そしてオーブンで焼いた肉を、大胆に切り落とす。

 中心のルビー色の部分を皿に盛り、周囲にソースで模様を描く。

 俺と六花の分も盛った。


 食事を始め、子どもたちはステーキの大会だ。

 相変わらず忙しない。

 次々に喰い終わった皿を俺に見せ、次の肉を乗せて席に戻る。

 六花はシャトーブリアンに感動している。

 風花もだ。


 「ごんばぼびびいぼにぐ」

 「こんなの初めてです!」

 ロボも味付けしていないシャトーブリアンを食べている。

 ウーゴーという唸り声が聞こえる。

 美味いらしい。

 子どもたちが肉を争っている間に、俺は風花に魚介類のフレンチを勧めた。

 ハマグリのバターソースに、刻んだ浅葱と極細の千切りの紫キャベツと鷹の爪。

 スズキのパイ包、香草入り。

 スモークサーモンのキャビア乗せ。

 伊勢海老のテルミドール。

 その他サラダなど。


 一度には覚えられないだろうが、とにかく一緒に作った。

 風花は楽しそうだった。

 また、自分が加わったものを食べる喜びも味わった。


 「こんなに作って、ああ、大丈夫ですよね」

 俺は親指を立てた。

 子どもたちには、フレンチは人数分あるから、まずはステーキを片付けろと言ってある。

 六花も、ステーキを食べながら、フレンチを一緒に食べる。

 ロボ用の肉もたくさん焼いた。

 空いたロボの皿に、俺が時々肉を入れてやる。

 ロボはそのたびに俺を見て短く鳴いた。

 礼を言っているのだろう。

 俺にも、それくらいは分かる。






 俺と風花は逸早く食事を終え、ドライブに誘った。


 「ちょっとまたドライブに行くからな」

 「「「「はい!」」」」

 六花もステーキを齧りながら立ち上がったが、俺は食ってろと言った。

 ロボに足を叩かれた。


 「またフェラーリですか?」

 「おい、その名前は俺の前で言うな。今はランボルギーニのアヴェンタドールだ」

 「そうなんですか」

 風花は車のことは詳しくない。

 しかし、ガレージを開けるとアヴェンタドールの威容に驚く。


 「これに乗るんですか!」

 「そうだよーん」

 俺は笑ってエンジンをかけ、風花のためにシザードアを開けてやる。

 風花は目を丸くして硬直した。


 「早く座れ。ああ、儀式があるんだけど、省略する」

 「はい?」



 



 俺たちは出発した。 

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