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星の家族:シャルダンによるΩ点―あるいは親友の子を引き取ったら大事件の連続で、困惑する外科医の愉快な日々ー  作者: 青夜


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再び、六花と風花 Ⅳ

 「しかし、本当に風花は綺麗になったよなぁ」

 「なにか、恥ずかしいです」

 「何言ってるんだよ。でもそれだけ綺麗だと大変だろう?」

 「どういうことですか?」

 「だって、いろんな男が言い寄って来ないか?」

 「そんなことありませんけど」

 そんなはずはない。

 しかし、職場が女性だけの部署だと聞いた。

 恐らく、塩野社長がそのようにしているのだろう。


 「六花が風花くらいの時はどうだったんだよ?」

 「はい、別に何もありませんでしたが」

 そんなはずはない。

 まあでも、こいつの場合も特殊な事情があったか。

 六花が移動のきっかけになったいじめも、元を正せば男性医師たちが六花を優遇しようとしたせいだ。

 風花も、環境が変われば男性に言い寄られるかもしれない。




 「あ! 忘れてました!」

 風花がスーツケースを持って来た。


 「社長からお土産があったんです」

 スーツケースの中身は、たくさんのハムだった。


 「おい、またこんなの困るよ」

 「いいえ、社長が石神さんにはいつもたくさん買っていただいているからって」

 「それは全然否定しねぇけどな!」

 風花が笑った。

 子どもたちも後ろで笑っている。


 「じゃあ、いただくよ。本当に申し訳ないな」

 「いいえ! ご遠慮なく」

 「お前の土産は?」

 「はい?」

 「手ぶらかよ」

 六花がニコニコしている。

 オッパイを指さした。


 「……」


 自分自身かよ。






 「今日は麻布に行ったのか?」

 「はい! 一緒にハンバーガーを食べました」

 「びっくりしました。お姉ちゃんの背中の文字が焼き印になってて」

 「ああ、俺たちは常連だからなぁ」

 「そうです」

 「お店の人も親切で。写真を撮りたいって」

 「お断りしました。あのお店は石神先生とのものだけしか写真はいけません」

 「まあ、風花まで巻き込めねぇよな」

 「はい」


 「バイクは怖くなかったか?」

 「はい、楽しかったです」

 六花の操縦センスは素晴らしい。

 怖がらないように運転したのだろう。

 俺は六花とツーリングに行ったあれこれを話した。


 「横須賀に行ったりなぁ。あとは六花の地元か。「紅六花」の連中となぁ」

 「はい! 最高の思い出です」

 俺は斬の家でのことを話す。


 「少しずつ風花にも話していくけどな。ある武道家の家と揉めて、落とし前をつけに行ったんだ」

 「わぁー」

 「ちょっと凄い奴でな。物凄い気合で、普通の人間は意識を喪っちゃう技があるんだよ。それをいきなりぶちかまされてな」

 「どうなったんです?」

 「みんな倒れかけた。でもな、六花が「気合を入れろ!」って叫んだんだ」

 「はい!」


 「「お前らの紅を見せろー!」ってなぁ。あれは最高にカッコ良かったぞ」

 「へぇー!」


 六花が腕を組んで立ち上がった。

 俺が調子に乗るなと座らせる。


 


 「ああ、響子にも会ってくれたんだってな」

 「よくご存じで」

 俺はさっき、響子の顔を見に行ったことを伝えた。


 「小さいトラのぬいぐるみを喜んでたぞ」

 「それは良かったです」


 響子の「ケポリン」の話をしたら、爆笑された。


 「毛が生えたってなぁ!」

 「びっくりしましたよね!」

 「そうしたら」

 「「ツルツル!」」

 「アハハハハ!」

 「俺が名前つけてやったら、もう可愛がっちゃってな!」

 「毎日見て話しかけてますよ」

 「カワイイですね!」


 「隠れて菓子喰ってデブになったりな」

 「頭を使うようになりましたよね」

 「ああ、もう「水玉のゾウだ!」って言っても騙されなくなったしな」

 「アハハハハ!」


 「セグウェイじゃ勝てないしなぁ」

 「オセロも相手になりません」

 「俺は勝つぞ?」

 「自信ありげな柳さんもボロ負けでしたね」

 「あいつなぁー」

 柳の話をした。


 「俺の親友の娘で、東大に現役合格するって言ってるんだ。まあ、その実力はありそうだけどな」

 「そうなんですか」

 「そいつが、オセロは得意だって。でも響子に全然勝てねぇの」

 「アハハハ」

 「思わぬところで、響子は侮れないですよね」

 「ツルツルだけどな!」

 三人で笑った。






 「おい、風花」

 「はい」

 「お前、料理は少しは出来るようになったか?」

 「は、はい。少しずつ自分で作るようにはしてますが」

 「よし! じゃあこれからちょっと手伝え。俺が教えてやる」

 「えぇー!」


 「夕飯の準備をするぞ。今日はステーキと海鮮フレンチだ」

 「大丈夫でしょうか?」

 「大丈夫だよ。誰だって始めは大変だ」

 六花がニヤニヤしている。


 「お前、何笑ってんだよ」

 「いーえー!」

 「お前はロボと遊んでろ」

 「はい!」

 六花はロボを撫でた。

 大人しく触らせている。





 亜紀ちゃんにジーンズとシャツを借り、エプロンを付けて風花がキッチンに立つ。


 「じゃあ、ステーキを一枚焼いて見ろ」

 「はい!」

 俺がブロックから切り出したステーキを預けた。


 「まずは筋切だ。こうすると肉が柔らかくなり、火も通りやすくなる」

 風花が包丁を入れていく。


 「深く切るなよ。次に叩く」

 俺は料理用のハンマーを渡す。


 「軽く、何度もな。あまり潰すな」

 「はい!」

 「フライパンに牛脂を敷いて温める。その間に塩コショウだ。両面にな」

 風花が真剣な顔で言われたことをやっていく。


 「よし。じゃあまずは小口を焼け。全体にな。そうすると脂が逃げないようになる。それから片面だ」

 肉の焼けるいい匂いがする。


 「ここでアロゼだ」

 「あろぜ?」

 「油をスプーンですくって、上にかける。フレンチの技法だが、様々な料理に応用できるから覚えろ」

 「はい!」

 「火は下からだ。だから上は冷たい。アロゼすることで、上の温度を上昇させる。そうすると火の通りがまたよくなる」

 「はい」


 「よし、ひっくり返せ。上が冷たいままだと、一気に脂の温度も下がる。そうすると均一に焼けないわけだ。アロゼには、そういう意味もある」

 「分かりました」

 俺の合図で肉を引き上げる。

 俺は素早く肉をカットし、一切れ食べさせた。

 肉食獣たちがこっちを見ている。


 「美味しい!」

 「そうだろう! 梅田精肉店さんのお肉は全部一番美味しく食べないとな!」

 「はい!」

 風花がニコニコしている。


 「あの、みなさんにも」

 「え? そんなもったいない」

 「「「「「エェー!」」」」」

 「ニャ!」


 俺は笑って、カットして喰いに来いと言った。

 ロボには塩コショウ無しの小さな肉を焼いて食べさせた。


 





 「さあ、次は海鮮フレンチだ」

 「はい!」

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