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星の家族:シャルダンによるΩ点―あるいは親友の子を引き取ったら大事件の連続で、困惑する外科医の愉快な日々ー  作者: 青夜


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ケポリン

 水曜日。


 響子の様子がおかしい。

 何かを隠している。

 しかし、それが何かが分からない。

 俺が風呂に入れてやろうとすると、嫌がる。

 ベッドに寝転がると、俺から距離を取る。

 おかしい。




 六花に聞いても、思い当たらないと言う。

 何度か隠れて菓子を大量に食べていたが、そういうものでもない。


 六花とくすぐりの刑にしたが、吐かない。

 

 「いやぁー、やめてー! へへへへへぇ!」


 カワイイだけだ。



 最終手段だ。




 「響子、俺はクビになるそうだ」

 「エッ!」


 「来週にはクビになって、病院には二度と来れない。院長からそう言われた」

 「なんでぇ!」


 「お前の悩み一つ解決できないボンクラはもういらないってさ」

 「そんなことないよー!」

 響子が泣き出した。

 カワイイ。



 「響子、元気でな」

 「タカトラー! 行かないでぇー!」


 「ダメだよ。お前は俺なんかに頼ってくれないだろ?」

 「そんなことないよー!」


 「じゃあ、悩みを聞かせてくれるか?」

 「うん!」



 響子が語り出した。



 「あのね」

 「なんだ?」


 「いや」

 「おい」


 「あのね」

 「なんだよ?」


 「あの、出てきたの」

 「何が?」


 「だからね」

 「うん」

 

 「やだ」




 「六花! 響子を押さえろ!」

 「はい!」


 「いやぁーーーーー!」


 「パンツを降ろしちゃうぞ!」

 「絶対やめてぇー!


 「じゃあ、言え!」

 「パンツはダメだよー!」

 「パンツはどうでもいい!」

 「だって、見られちゃうもん!」


 「「?」」


 散々見ている。


 「毛が生えてきたのー!」


 「「!」」





 「おい」

 「はい」

 「そうなのか?」

 「いえ、気付きませんでした」


 


 「響子、それは大人になってきたということだぞ?」

 「やだー!」


 「みんなそうなんだよ。俺だって、六花だってそうだろう?」

 「やだー!」


 「六花!」

 「はい!」

 

 響子は抵抗したが、俺たちに敵うわけがない。

 簡単に下を脱がせた。


 「おい」

 「はい」

 「いつも通りじゃねぇか」

 「ツルツルですね」


 「タカトラのばかぁー!」


 カワイイ。





 「なんだよ、全然生えてねぇじゃねぇか」

 「ちょっと期待しましたよね」

 俺は六花の頭にチョップを入れた。


 「生えてるもん!」

 「ねぇよ」


 響子が指をさした。



 「なんだ、コレ?」


 ヘソから毛が生えてる。

 一本だけ、チョロっと。


 俺と六花は大笑いした。


 「タカトラのばかぁー!」


 「お前、変わったところに」

 「全然気付きませんでした」


 響子は猛烈に怒っている。

 カワイイ。


 「なんで見るのよー!」

 「いや、だって。お前がカワイイから」

 「ばかぁ!」

 「悪かったって。じゃあ抜いてやろうか?」

 「え、折角生えたのに?」

 「大事なのかよ?」

 「うーん」


 何を考えているのか。


 「恥ずかしいけど、なんかカワイイ」

 分からんでもない。


 「じゃあ、このままにしておくか」

 「うーん」


 結局、保留になった。



 「よし! 俺が名前を付けてやろう」

 「ほんとに!」


 「命名! ケポリン!」

 「やったぁ!」


 なんか喜んだ。






 ようやく俺と一緒に風呂に入るようになり、響子はしょっちゅうケポリンを撫でるようになった。


 「ケポリン、おはよう」

 「ケポリン、元気ですかー」

 「ケポリン、おやすみー」


 仲良しだった。

 風呂でも、自分でケポリンを洗う。

 俺と六花は、笑って見ていた。




 「ギャァーーーーー!」

 

 ある朝、六花が着替えさせようとすると、響子が叫んだ。

 見ると、ケポリンが下着に貼りついていた。


 慌てて六花が俺の部屋に飛び込んでくる。


 「ケポリンが、大変です!」

 「あ?」


 ケポリンは、響子の下着の上で寝ていた。

 響子は大泣きだった。



 「響子、お墓をつくってやろう」

 「うん」


 

 一緒に外でケポリンを埋め、小さな石を建てた。

 三人で手を合わせる。









 俺は結構忙しいんだが? 

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