表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
星の家族:シャルダンによるΩ点―あるいは親友の子を引き取ったら大事件の連続で、困惑する外科医の愉快な日々ー  作者: 青夜


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

485/3164

一緒に寝よう!

 俺は子どもたちを集め、千両のことを話した。


 「俺の靴を舐めて泣いて頼むんで、仕方なく受け入れた」

 亜紀ちゃんが笑う。


 「でも、俺はヤクザの親分じゃねぇからな!」

 「「「「はい!」」」」

 「ここは大事なとこだ。試験に出るからな!」

 子どもたちが笑う。


 「本当に何でもないことだ。あいつらが勝手に下に置いてくれと言うんで、そうするだけだ。別に特に関わるつもりはねぇ」

 「「「「はい!」」」」




 午後の予定はない。

 俺は中断した六花とのツーリングも考えたが、結局やめた。

 来週は鷹と別荘に行く。

 だからこの休みは子どもたちといよう。


 俺は双子を連れて散歩に出た。

 手を繋いで歩く。

 俺は誰かと手を繋ぐのは嫌いだ。

 腕を組むのはいい。

 先端を自由にしていないと、落ち着かないのだ。

 しかし、双子だけは違う。

 両手を繋ぐと気分が良くなる。

 不思議だ。


 「お前らってやっぱり、「気持ちいい光線」とか出してるよな。

 双子が喜ぶ。


 「私たちもタカさんと一緒にいるのがいい!」

 ルーが言い、ハーも頷いている。


 「今日はどこへ行こうか」

 「タカさんの行きたいとこでいいよー」

 「いつものコースでいいじゃん!」

 「お前ら、カワイイなぁ!」

 「「アハハハ!」」


 俺たちはいつもの公園へ行った。

 いつものベンチに座る。

 ルーが缶コーヒーを買ってくる。

 自分たちは好きなジュースだ。

 大金持ちのくせに、俺にねだる。

 カワイイ。


 まったりした。


 「ああ、千両がな」

 「「うん」」

 「「虚震花」を刀で斬ったらしいぞ」

 「「エエッーー!!」」


 「それで斬と仲良くなったらしい」

 「ありえないよー!」

 ルーが言った。


 「反物質をどうやって斬るの!」

 「「斬る」っていうのは、概念的なものもあるからな」

 「どういうこと?」

 「信じる力だよ。刀がただの鋼だと思ってる奴には、そういうものでしかない」

 「ええ?」


 「岩を斬ると信じた奴だけが斬れる」

 「そんなことってあるの?」

 「予定調和的なものだな」

 「ライプニッツ?」

 「そうだな。人間の信ずる力というのは決して侮れない。量子力学の「観測者」と同じことだな」

 「なるほど!」

 双子の理解は早い。


 「千両さんは信じたってことですか?」

 「そうだな。あれは極めた人間だからなぁ。「斬る」ということに関しては化け物だ。俺たちだって危ういかもしれん」

 「でも、タカさんだって信じる力はあるでしょ?」

 「そういうことだ。その力でもって、物事のすべての勝敗が決まると言っても過言ではない」

 双子がジュースを飲み干した。

 もう一本とねだるので、金を渡した。


 「じゃあ、信じたら何でもできるの?」

 「理論的にはな。でも、人間はやっぱり信ずる限界が自ずとしてあるからな」

 俺はナポレオンの話をした。


 「昔は戦争は貴族と傭兵のものだった。その時代にナポレオンは平民として軍隊に入った。ナポレオンのスゴイ所は、その時点で自分が元帥になると信じたことなんだよ」

 「へぇー」

 「普通は絶対に信じられない。貴族以外は士官には絶対になれない時代なんだからな。無理なんだよ。でも、ナポレオンは本当に信じたから元帥になり、ついには皇帝になった」

 「すごいね」

 「でも、ナポレオンの信ずる力も、そこまでだった。後は凋落する自分を信じてしまった」

 「それも信じるということなんですね」

 「そうだ。負けを信じてしまえば負ける。それが人間の限界なんだよ。まあ、それでいいんだけどな」

 「どこまでも上る自分は信じられないんですね」

 「そういうことだ」




 俺たちはJR中野駅の近くの『猫三昧』に顔を出した。

 ロボが元気なことと、いただいたオモチャの礼を言いに行った。


 「猫神様!」

 「石神だぁ! お前ら絶対わざと言ってるだろう」

 店長とタマが笑った。

 わざわざ来てくれてと言い、中へ案内されそうになったが、散歩の途中で寄っただけだと言った。


 「猫神様たちは、いつでも無料ですから!」

 「ロボに浮気を咎められたくねぇ」

 「なるほど!」



 

 俺たちはいつもの店でソフトクリームを買った。

 双子が店員に「根性入れて盛れ!」と言っていた。


 「俺はこういういつもの日常でいいんだけどなぁ」

 「そうですねー」

 「でも、毎日楽しいよ?」

 ルーが言った。


 「そうか?」

 「うん。だって、タカさんと一緒だもん!」

 「そうだそうだ」

 俺は二人を抱き締めた。

 勢いよく抱いたので、二人のソフトクリームがこぼれた。


 「「ギャーーーー!!!」」


 俺は慌てて二本買った。

 根性入れろと凄んだ。

 店員が笑っていた。


 帰り道。

 俺たちはロボのどこがカワイイのかを話した。


 「目が薄い緑じゃん」

 「ああ、そうだな」

 「キレイだよねー」


 「真っ白の毛もいい」

 「長いしっぽも?」

 「スラっとした体形」

 「ああ、前はデブだったよな」


 「あと、あんまり鳴かないね」

 「そうだなぁ。おとなしいよな」

 「タカさんが何か言うと鳴くよね」

 「返事するよな」

 「口をあけたり」

 「ちっちゃい牙がまたカワイイよな」


 「寝てるときは?」

 「ああ、俺も寝てるから知らねぇ」

 三人で笑った。


 「私たちも一緒に寝たいな」

 「お前ら寝相が悪いからなぁ」

 「そんなことないよ!」

 「じゃあ、今度頼んでみろよ」

 「「うん!」」






 家に帰って、双子がロボに一緒に寝てくれと言った。

 ロボが後ろ足で床をこすった。

 絶対嫌らしい。  

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ