虎曜日にコショコショ。
月曜日。
俺はいつものように、一江からの報告を聞いた。
「以上です」
「おう、ご苦労!」
「みなさーん! ネコは好きですかぁー?」
部下たちは戸惑っていたが、すぐに「おー」と言う。
今日も反抗勢力がないので安心した。
「部長、なんでネコ?」
「ああ、うちネコ飼ったからな」
「え?」
俺はロボの話をした。
たまに出入りする一江や大森も慣れさせなければならない。
「そうなんですか。ついに獣姦まで」
一江の頭を殴った。
「これだけ女はべらせて、その上メス猫なんて!」
「なんでメス猫だって言い切るんだよ」
「違うんですか!」
「いや、メスだけど」
俺の頭を叩こうとするので、引っぱたいた。
「部長、なんかお祓いとかした方がいいですって」
「うるせぇ! ああ、あとな、先週話した通り、蓮花に会いに行ったぞ」
「その女ともやったんですか?」
「うん!」
頭をひっぱたかれた。
「部長!」
「お前! 上司に向かってぇ!」
ちょっと掴み合いをした。
部下たちが見ているので、肩を組んで笑った。
俺は会議室に連れ出し、一江と大森に蓮花の「家」の話をした。
「そりゃ、とんでもないですね」
「一部は削ってあるが、ほとんどの「資料」を渡したぞ」
「信頼されたんですね」
「ああ」
「やった女だから」
俺は一江の頭を殴る。
「とにかく、今後は共同戦線だ。よろしく頼むぞ」
「「はい!」」
顕さんの部屋へ行った。
響子がジグソーパズルをやっている。
俺は響子の両足を持って逆さ吊りにしてやった。
響子が喜ぶ。
「顕さん、絵の額装が出来ました」
「お! そうかぁ!」
「すぐにお見せしたいんですが、しばらくは小学校で飾るようで」
「うん、しょうがないな。楽しみにしてるよ」
しばらく話し、俺は響子の膝を肩にかけて片手で逆さ吊りにし、片手でセグウェイを抱えて響子の部屋へ行った。
途中で響子がみんなに「どーもー」と挨拶する。
みんな笑っていた。
部屋には六花がいた。
「石神先生、乱暴ですよ」
六花がちょっと怒っている。
こいつは俺には逆らわないが、響子のことに関してだけは別だ。
俺は笑って響子をベッドに寝かせる。
ボサボサになった髪を、六花がブラッシングする。
「おい、響子。うちにネコが来たんだ」
「えー! 見たいよー」
ロボという白いネコだと話した。
経緯は簡単に、『猫三昧』から譲ってもらったとだけ話す。
「おう、見に来いよ。今度家に連れてくからな」
「必ずね!」
俺は笑って響子の頭を撫で、髪の毛をぐしゃぐしゃにする。
六花が怒る。
前にゴールドの時は二人が拒否されたが、ロボならば大丈夫だろう。
俺は六花に昼食を一緒に食べようと言い、部屋へ戻った。
桃花林の個室を予約した。
六花に北京ダックを食べさせたかったので、「龍珠」のコースを頼む。
店の人間が俺のことを分かっているので、どんどん料理が運ばれる。
短い時間で食べられるようにだ。
俺は蓮花のこととロボのことを詳しく話した。
「そうですか。分かりました」
まあ、こいつはこんなものでいい。
ちょっと聖を思い出した。
ニコニコと嬉しそうな顔で食べてくれる。
俺も嬉しくなる。
「おい、ちょっと北京ダック追加しようか?」
「ほんとですか!」
その笑顔を見たかった。
俺は追加を頼んだ。
大満足で食事を終えた。
「北京ダック、最高ですね!」
「そうだな!」
俺たちは一層絆が深まった。
杏仁豆腐を食べている間に、コーヒーを頼んだ。
「そういえば石神先生」
「あんだよ」
「新しい方は、何曜日にいたしますか?」
「あ?」
「いえ、お休み中に増えた方」
「なんでお前が知ってんだよ」
「先ほど一江さんからメールで。私は曜日担当係ですので」
「お前らなぁ」
「それで」
「蓮花はお前らとは違うよ。うーん、フリースペースに入れといてくれ」
「曜日のフリースペース、ええと。じゃあ「虎曜日」ということで!」
「なんだ?」
「虎の自由で設定できる曜日ですね。ああ、こうすれば幾らでも石神先生の女は!」
「おいおい」
「石神先生! 頭いいですね!」
「お前もな!」
よく分からんが、解決したらしい。
「あー! 美味いもの喰ったし、午後の仕事も頑張るか!」
「はい!」
「響子の可愛い寝顔を見てからな!」
「はい! ちょっと起こしちゃいましょうか」
「カワイソウなことするな!」
二人で笑った。
「でも寝てる時になぁ、耳元で「コショコショ」って言うと笑うんだぞ、あいつ」
「それは知りませんでした! 石神先生、頭いいですね!」
「お前もな!」
俺は実際に響子の耳元でやってみせた。
「コショコショ」
「エヘヘヘヘ」
二人で口を押えて笑った。




