蓮花 Ⅴ
蓮花が用意した浴衣は、黒地に鮮やかな青の竜胆が一凛描いてあった。
それに月とススキ。
どうして俺の好みをここまで知っているのか。
俺の脱いだヒッキーフリーマンの麻のスーツやシャツなどは、持ち去られていた。
俺は自分の部屋へ戻る。
部屋には氷を入れたアイスティーのタンブラーとグラスが置いてあった。
飲みながら待っていると、蓮花が呼びに来た。
「夕食の準備が整いました。お待たせして申し訳ございません」
俺は先ほどとは別の部屋へ案内される。
洋室だ。
下がり天井の間接照明とダウンライト。
8人がけのテーブルの上にライトが置かれており、そこだけ明るい。
下がり天井の中心に、5メートル角の大きなガラスがはめ込まれ、星空が見える。
テーブルに、案内された。
栞は先に座っていた。
配膳も済んでいる。
鯛の焼き物。
サザエのつぼ焼き。
刺身の盛り合わせ。
おぼろ豆腐。
里芋と隠元の煮物。
山菜と魚介類の天ぷら。
山芋と小魚の酢の物。
椀は太刀魚の吸い物。
そして栗ご飯。
「おい、蓮花の分は?」
「私は別にいただきますので」
「ダメだ。家族は一緒に食べるものだ」
「!」
蓮花は自分の膳を持って来た。
俺たちのものよりも少ない。
蓮花の作ったものは、どれも見事な出来だった。
料亭に劣らない。
「蓮花、どれも美味いな」
「ありがとうございます」
蓮花が冷酒を注ぐ。
俺は食事を堪能した。
「蓮花、片付けたらまたここに来てくれ」
「かしこまりました」
俺は自分の荷物から、幾つか取り出して食堂へ戻った。
蓮花がそう時間をかけずに戻って来る。
俺は「α」の粉末と、オロチの皮を蓮花に渡す。
それぞれの説明をする。
蓮花は驚きつつも、黙って聴いた。
「粉末は、ある方の霊力が注がれた土で育てたゴキブリだ。栞も見ているが、30センチを超えるでかさだった。「花岡」の技もマグナム弾も効かない。俺が特別なナイフで仕留めた」
「特別というのは?」
「クザンオダという刀匠に特注した、途轍もなく硬いナイフだ。青い体液が流れ死んだ」
「皮はその粉末を食べさせたヘビのものだ。まあ、そのヘビ自体が普通のものではなさそうだけどな。蓮華が襲わせた軽自動車ごと、熱線で溶かした。俺もヘビが吐く熱線を見たよ」
「そのようなものが」
「そういうものだから、俺も詳しいことが分からない。追試のしようもねぇしな。ゴキブリに関しては、あと二匹いる。冷凍状態で眠らせてある。特に俺たちが「Ω」と呼んでいる個体は50センチ越えだ。まだ何かあるかもしれん」
「分かりました」
「粉末も皮もまだある。必要なら送るから言ってくれ。「Ω」に関しては要検討だ。アレは仕留められないかもしれんからな」
「かしこまりました。ありがたく使わせていただきます」
「それとな。お前の研究資金に、200億ドルの用意がある」
「!」
栞が驚いている。
「ロックハートの資金だ。元が割れないように、幾つかのダミーを通すけどな。「花岡」に関しては俺から話が通っている。業に対抗するために用意されたものだから、お前が存分に使え」
「はい」
「それに俺からもその半分くらいは援助できる。また機材なども今幾つかの企業を買収中だ。必要なものがあれば言ってくれ。優先して手に入れる」
「ありがたきことでございます」
「あとはこれだ。今自力で研究中のものが入っている。兵器やその他の技術だ。あとで確認してくれ。詳しく知りたいことがあれば、俺が人間を紹介する」
「はい」
俺はHDDを蓮花に渡した。
「そのデータは必ずスタンドアローンのPCで見るようにな」
「はい、必ずそのように」
栞は一切口を出さなかった。
俺と蓮花にすべて任せるつもりのようだった。
「これで以上だ。蓮花、コーヒーを淹れてくれ」
「かしこまりました。お酒の用意もございますが?」
「いや、さっき飲んだからいい。今日はコーヒーを飲んだら休ませてもらう」
「はい、そのように」
俺たちはコーヒーを味わい、部屋へ戻った。
蓮花が俺の部屋へ来た。
「石神様は、まだご満足されていないと思いました」
俺は苦笑し、蓮花を中へ入れた。
自分で着物を脱ぎ、ベッドへ入って来る。
俺を世話しようとする蓮花を止め、俺が蓮花を仕上げる。
指と舌で、蓮花は大きな声を上げた。
胸に跨り、蓮花に俺の準備をさせる。
蓮花に突き入れると、一気に痙攣した。
構わずに責める。
何度も声を上げ、気を喪った。
そのまま、蓮花の中へ放った。
10分ほどで蓮花が意識を取り戻し、俺のものを綺麗に舐め取る。
復活した俺を見て、自分で跨ろうとした。
「おい、その辺にしておけよ。立てなくなるぞ?」
「申し訳ございません。いたらない私をお許しください」
俺は蓮花を抱き寄せた。
俺の胸に顔を埋める。
「蓮花、お前は俺のものだ」
「はい、嬉しゅうございます」
「俺はお前を使い潰すからな」
「はい、是非そのように」
俺は蓮花の唇を奪った。
初めての唇だった。
「おやすみなさいませ」
蓮花は襦袢を身にまとい、出ていった。




