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星の家族:シャルダンによるΩ点―あるいは親友の子を引き取ったら大事件の連続で、困惑する外科医の愉快な日々ー  作者: 青夜


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四度目の別荘 XXⅥ

 翌朝、朝食を食べ終えて、俺は別荘でのノルマ達成の報告を子どもたちから聞いた。

 今日は全て自由時間にする。

 もちろん、勉強をしても良い。

 亜紀ちゃんから、食材の報告を受けた。

 柳が持って来てくれたものもあり、買い足しは主に肉だけで良さそうだ。


 双子は写生している。

 別荘を描いていた。

 俺が見に行くと、やはり上手い。

 俺がやったファーバーカステルを使って、水彩で描いている。

 同じ構図だが、二人の性格の違いが少し分かって面白い。


 亜紀ちゃんは六花と走りに行った。

 無茶はしないで欲しい。


 皇紀は御堂家の防衛システムを考えていた。

 柳にも見せ、意見を聞くように言った。


 響子は俺と一緒に散歩に出た。

 まあ、俺が大体肩車をするのだが。

 ミルクセーキの入った水筒を用意している。


 「響子、楽しいか?」

 肩の上で、響子が俺の頭に抱き着いている。

 なるべく振動を与えないように歩く。


 「うん。でもタカトラと一緒の時間がないかな」

 「そうだなぁ。俺も寂しいよ」

 二人で笑った。


 「今度、二人で旅行するか」

 「ほんと!」

 「ああ、また話し合おう」

 「うん!」

 俺たちは歌を歌って歩いた。


 ♪せーんのなーかのー ひーとーつーのーちゃんすー♪


 「クルダの傭兵は一騎当千!」

 肩の上で響子がポーズを決めている。


 「わが影技にかなうものなし!」

 また違うポーズだ。

 面白い。


 「『シャドウ・スキル』は気に入ったようだな」

 「うん!」

 ゴキゲンだ。


 「私もクルダの傭兵になるの!」

 「そうか。響子は誰が好きなんだ?」

 「エレ・ラグ!」

 やはりな。


 「タカトラはヴァイ・ローね!」

 「そうかよ」

 

 「六花は?」

 「エレ・ラグがいいんだって」

 「かぶっちゃったな」

 「そうなんだけど、六花ならいいや」

 二人でアニメの話をしながら、倒木の広場に着いた。

 響子にミルクセーキを注いで渡す。

 少し冷やしてある。

 暑い中を歩くことを考えてだ。


 「おいしい」

 「二人で飲むと一層だよな」

 「うん!」

 「今回もいろいろ食べたなぁ」

 「そうね」

 「肉だろ、それと肉。あとは肉かぁ」

 「アハハハ」

 響子が笑った。


 「夕べ、亜紀ちゃんが「私、そんなに食べてますかぁ」って言ったんだよ。怖かったな」

 「コワイね」

 「響子も食べられないように気を付けろよな」

 「やだー」

 俺は響子を寄りかからせた。


 「だって、響子は美味しそうだから心配なんだよな」

 「おいしくないよ」

 「そんなことないぞ。俺は毎日ペロペロしてるから知ってるよ」

 響子が立って俺の頭を下げろと言う。

 立っても俺の顔に届かないためだ。

 低くしてやる。

 俺の頬を舐めた。


 「タカトラも美味しいよ」

 「そうかー、じゃあ俺も気を付けなきゃな」

 「アハハハ」





 俺は響子にオロチの話をした。


 「親友の御堂の家に行ったらな。軒下から大きなヘビが顔を出したんだ」

 「へぇー!」

 御堂家の守り神であり、俺に懐いてペロペロされた話をする。


 「すごいね!」

 「ああ。ヘビだけどカワイイ奴でなぁ。俺がちょっとしたエサをやったら、火を噴くようになった」

 「ほんとに!」

 「ああ。御堂の家を襲った悪い奴を追い払ってくれたんだ」

 「いいヘビね!」

 「最高だよな!」

 響子が見てみたいと言った。


 「そうだな。御堂の家の大事なヘビだから、許可が出たらな。後で電話してみよう」

 「よろしくー」

 俺は足技を中心の演武をした。

 響子が手を叩いて喜んだ。

 俺が隣に座ると、響子がミルクセーキを注いでくれた。

 少し零す。

 ヘタクソと言うと、笑って誤魔化した。


 「エヘヘヘ」

 俺は一口飲んで、響子が注ぐと美味しいと言った。


 「ねえ、タカトラ」

 「なんだ?」

 「私もね、タカトラのためになにかしたいの」

 「お前が笑ってくれるのが一番いいな」

 「私もそうなんだけど、それだけじゃいや」

 「そうか」

 

 「ねえ、タカトラ」

 「なんだ」


 「私のことを大事にしてくれるのは嬉しいんだけど、タカトラの大事なことを先にやって」

 「なんでだ?」

 「それが私が今できること」

 俺は響子を抱き締めた。


 「お前は最高の女だな」

 「エヘヘ」

 

 「俺には大事なことが二つある」

 「うん」

 「一つは響子を守ることだ」

 「うん」

 「もう一つは、俺が俺自身であることだ」

 「うん」

 「お前を守り、幸せにすることは、俺の最も重要な存在意義だ」

 「私もタカトラと一緒に生きることが大事なの」


 「じゃあ、大丈夫だな」

 「そうだね!」


 「六花たちも守ってね」

 「もちろんだ。それが「俺が俺自身である」ということだからな」






 俺たちはカップを片付け、別荘へ帰った。


 響子はずっと、俺の頭に顎を乗せていた。

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