四度目の別荘 XXⅡ
俺はみんなの食事をまだ手を付けていない状態に戻した。
ところどころ、おかしな部分はあるが、あいつは気づかないだろう。
「このまま待ってろ。いいか、まだ俺たちは喰ってない! はい!」
「「「「「「まだ俺たちは喰ってない!」」」」」」
「よし!」
俺は六花を起こしに行った。
やっぱり、寝ている。
「おい、食事だ。起きてくれ」
揺り起こすと、無意識に抱き着いて来る。
「おい、いい加減に起きろ」
六花は薄目を開けた。
しばらく寝ていたせいで、ヘンな雰囲気はない。
「石神先生……」
「よく寝てたな。悪かったな」
俺は微笑んで六花の頬を撫でる。
「大丈夫です。食事ですね」
「ああ」
六花は起き上がった。
少しフラついている。
俺は腰を抱いて支えた。
「後から行きますので、先に召し上がっててください」
「そうか!」
「?」
俺は早く来いよと言って、リヴィングへ向かった。
「六花は遅れてくる! 先に食べよう!」
「「「「「「はーい!」」」」」」
良かった。
あいつを裏切るのは心が痛む。
10分ほどして、六花が来た。
「「「「「「リッカチャーン!」」」」」」
みんなで歓迎した。
六花が嬉しそうに笑い、席に着いた。
俺が率先して給仕してやる。
「大丈夫か?」
「はい、すみませんでした」
「俺たちの方こそな!」
「はい?」
俺は微笑んで、ゆっくり食べろと言った。
また幸せな顔をして六花が食べている。
良かった。
夕食の片づけを子どもたちがしている間、俺は花火の準備をした。
響子と六花が、近くでワクワクした顔で見ている。
柳は食事の片づけを手伝っていた。
みんなが集合した。
「去年と同じだ。バケツの水で完全に消すようにな。今回はゴミ箱に入れない。場所を決めるから、そこに置くように!」
「「「「「「「はい!」」」」」」」
「一杯あるからな。好きなように楽しんでくれ」
子どもたちが群がり、響子は六花と一緒に選んでいく。
柳が俺の傍に来る。
「どうした、お前も楽しめよ」
「はい、あとで。なんか楽しすぎて頭が追いつけないというか」
「なんだよそれは」
俺は笑って柳を隣に座らせた。
テーブルのタンブラーからアイスティーをカップに注いでやる。
「まあ、御堂家とはちょっとだけ違うかな」
「ちょっとじゃないですよ! 川に行ったって、あんな魚の捕り方はありません」
「ハハハハ!」
子どもたちが花火で遊んでいる。
響子が六花と笑っている。
俺に手を振った。
振り返すと喜んだ。
「響子ちゃん、カワイイですよね」
「ああ、最高だ。今日は世話になったな」
「いいえ。六花さん大丈夫なんですか?」
「ちょっと「訓練」をやり過ぎたな」
「そうなんですか」
ルーとハーが、20本ずつの花火を持って飛び上がった。
激しく回転しながら降りてくる。
亜紀ちゃんが50本でやろうとしている。
「やめろー! 付近が吹っ飛ぶだろう!」
「はーい」
やばかった。
炎の竜巻が起きるところだった。
「亜紀ちゃん、スイカの種で石を割ってましたよね」
「あれで本気じゃねぇんだからな。うちはマシンガンはいらねぇんだよな」
「……」
「魚取りをハーちゃんにやらせたのって」
「地形が変わったらまずいだろ?」
「……」
「そういえば、石神さんと亜紀ちゃんがよく言ってる、サイトウセイジって誰ですか?」
「ああ、亜紀ちゃんに惚れて付きまとってた同級生なんだよ」
「へぇー!」
「亜紀ちゃんはああいう美人じゃない。頭もいいし、性格も優しい。おまけに気遣い人間だ。惚れないわけないよな」
「そりゃ、まあ」
「でも、命知らずだよな」
「アハハハハ」
「斎藤誠二が無理に手を出そうとしなくて良かったよ。下半身が分子破壊されてたからなぁ」
「マジですか!」
俺は兄貴が部下だったことを話した。
「喫茶店に呼び出してな。誠二が自慢げに兄貴を紹介したら「あ、斎藤さん」って亜紀ちゃんが言うんだよ」
「アハハハハ!」
「俺が、どうも亜紀の父です、てなぁ。あれは笑った」
俺は柳を連れて、響子のところへ行った。
「響子、ドラゴンに火を点けろよ」
「えー、こわいよ」
「大丈夫だよ。柳が手伝ってくれるから」
柳と手を繋いで、俺が置いたドラゴンに花火の火を近づける。
怖がっていたが、ドラゴンに火が点いた。
派手な火が噴出した。
響子が喜んでいる。
「これでお前も一人前の花火師だな!」
「エヘヘヘ」
「じゃあ、柳の番だな」
「え?」
「ドラゴンと言えばお前だろう?」
「は、はい?」
俺は両手と口にドラゴンを咥え、柳に同じようにさせる。
「ひひがひはん! ふりでふー!」
俺は笑って双子にそれぞれ点火させた。
炎を撒き散らしながら舞う。
柳は口のドラゴンを噴出した。
亜紀ちゃんが笑いながら、拾って消す。
「無理ですってぇ!」
みんなが笑った。
「口から火を吐いてこそのドラゴンだろうが!」
「オロチじゃないんですからぁ!」
柳は響子と六花と一緒に花火を楽しんだ。
亜紀ちゃんが、皇紀に30本のロケット花火で攻撃させている。
そのすべてを叩き落としていく。
テーブルでそれを眺めていると、双子がやってきた。
「喉かわいちゃった」
俺はアイスティーを注いでやると、ゴクゴクと飲んだ。
おかわりを注ぐ。
「タカさーん」
ルーが俺を呼んだ。
「なんだよ」
「なんでもなーい」
三人で笑った。
「タカさん、毎日楽しいね!」
「俺は時々酷い目に遭うけどな」
「「ごめんなさーい!」」
俺は笑って言った。
「でも、本当に楽しいよな」
「「うん!」」
二人の笑顔を見て、俺は幸せになった。




