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星の家族:シャルダンによるΩ点―あるいは親友の子を引き取ったら大事件の連続で、困惑する外科医の愉快な日々ー  作者: 青夜


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四度目の別荘 Ⅴ

 スーパーで買ったものは、また運んでもらった。

 皇紀に電話し、俺たちより先に着いたら受け取っておくように言った。


 「響子は寝てるか?」

 「はい。タカさんたちが出掛けてすぐに」

 起きたら水分を摂らせるように、六花に伝えるよう言った。

 響子のために、睡眠中はなるべく冷房を使わないようにしていた。

 今日は少し暑いから寝汗をかくだろう。

 

 「響子ちゃんのことは、本当に大事にしてますよね」

 柳が後ろで言った。


 「もちろんだ」

 「私にも何でも言って下さい。お手伝いします」

 「ありがとう。頼むぞ。お前何で後ろにいるんだよ。お礼にオッパイ揉めないじゃないか」

 「いいですよ!」

 「ちょっとオッパイこっちに出せ!」

 「いやです」


 別荘に着き、柳は一通り挨拶を済ませた。

 部屋へ案内する。


 「亜紀ちゃんと一緒の部屋だからな」

 「はい。亜紀ちゃん、よろしくね」

 「こちらこそ」

 「そういえば、柳。お昼は食べたのか?」

 「ああ、いえ。朝はちゃんと食べたんで大丈夫ですよ」


 「何いってんだよ。先に言ってくれ。悪かった気が回らなくて」

 「いいんですよ。私も言わなかったですし」

 「ばかやろー! 石神家では食事を抜いたら殺し合いになるんだぞ?」

 「アハハハ」


 俺は柳をリヴィングに連れていき、簡単なものを作る。


 「夕飯もあるから、ちょっと軽めだ。勘弁してくれ」

 「いえ、私こそすいません」

 俺はソバを茹で、その間に薬味を作る。

 10分もかからず、柳に出した。


 「俺たちもソバだったんだ。こんなもので悪いな」

 「いいえ、ありがとうございます」

 柳は箸を手に取った。


 「ところで石神さん」

 「あんだよ」

 「このウインナーとハムって」

 「ああ、うちの薬味な」

 「へぇー」

 浅葱、ショウガの摺り下ろし、ワザビ、刻み海苔、ウインナー二本、ハム二枚。

 柳は優雅に啜り、すべて食べた。




 響子と六花が起きて来た。

 柳と挨拶を交わす。


 「リュウー!」

 響子が抱き着き、柳も嬉しそうに笑った。

 俺は響子と六花、柳を連れて散歩に出た。


 「悪いな柳。来た早々に連れ回して」

 「いいえ」

 響子は電動移動車だ。


 「響子ちゃん、それいいね」

 「うん! タカトラが用意してくれたのよ」

 「へぇー」

 しばらく歩き、俺は響子と六花を先に返した。

 柳と二人で、倒木の広場に行く。


 二人で座り、柳に水筒の冷たいダージリンティーをカップに注いで渡す。


 「柳、オロチがやったことを聞いているか?」

 「はい、父から聞きました。何かのエネルギーを吐いたって」

 「ああ。うちでは亜紀ちゃんしか知らない」

 「分かりました」

 「柳、済まなかった」

 俺は頭を下げた。


 「石神さん、何を」

 「御堂の家まで標的になるとは思わなかった。オロチがいなければどうなっていたか。今でも恐ろしいよ」

 「そんな! 石神さんのお陰で私たちも無事だったんですから」

 「いや、オロチはお前の家の守り神だ。俺のせいじゃないよ」

 「でも、石神さんがオロチを強くして下さったんですよね」

 柳はすべて聞いているようだった。


 「まあ、全部俺の思い付きだけだったけどな。でも、本当に助かった」

 「石神さん」

 「御堂を、みなさんを、柳、お前を喪わなくて良かった」

 柳が俺を抱き締めて来た。


 「お前を喪ったら、俺は鬼になっていただろう」

 柳は俺を抱きながら泣いていた。

 俺は柳を隣に座らせた。

 肩を抱く。


 「こないだ、お前の家に行って、俺たちはコンバットスーツでたびたび出掛けただろう?」

 「はい。運動とかで」

 「あれは、お前の家の周辺を見回って、防衛対策をしてたんだ。皇紀が詳細に資料を集めて今も解析している」

 「そうなんですか!」

 「御堂には少し話しているが、俺の敵がまた動き出す。お前の家は必ず守るからな!」

 「それでオロチに」

 「不思議な感覚があったからな。それが良かったらしい」


 俺は柳にキスをした。

 口に舌を入れた。

 柳はぐったりとした。


 「どうだよ、大人のキスは」

 「ダメです。立てません」

 「だらしねぇな。そんなんじゃ、とても俺の「相手」はできねぇぞ?」

 柳は立ち上がった。


 「よし、じゃあ帰るか!」

 俺は柳を背負った。

 荷物は柳に持たせる。


 「今日は大人のオッパイ触りをやるからな!」

 「え、ちょっと待って下さい」

 俺は笑い、揺らしてやると柳が笑った。


 「子どもの頃に戻ったみたいです」

 「お前、まだ子どもだろう?」


 柳が俺の頭を叩いた。

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