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星の家族:シャルダンによるΩ点―あるいは親友の子を引き取ったら大事件の連続で、困惑する外科医の愉快な日々ー  作者: 青夜


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四度目の別荘 Ⅶ

 俺は響子を抱き上げたまま、中へ入った。

 六花の荷物は皇紀が持った。


 「ありがとうございます」

 礼を言われ、皇紀が笑顔で大したことはないと言った。

 六花は白い綿のパンツに編み上げの細い白の革ベルト。

 白地に青のピンストライプの入った、襟の細長い長袖シャツを着ている。

 モデルのようだ。

 響子は鮮やかなブルーの膝下のズボンに、薄いグリーンのサマーセーターだ。

 移動中は冷房で冷やさないように、薄い毛布を掛けて来たそうだ。


 リヴィングへ上がり、みんなでお茶にする。

 俺と六花と亜紀ちゃんはコーヒーを。

 響子には温かいミルクティーに蜂蜜を。

 皇紀と双子はメロンソーダを作った。

 今朝作ったプリンを配る。

 響子が喜んだ。


 「プリンだぁー!」

 響子はプリンが大好きだった。

 オークラの烏骨鶏プリンが終了し、響子の嘆きは大きかった。


 「世界は終わった」

 響子はそう言った。

 仕方なく俺が作ってやると、元気を取り戻した。

 以来、時々作ってやっている。

 プリンはよく濾すことと、低温で時間をかけて焼くことがコツだ。

 響子がニコニコして食べている。

 六花も嬉しそうに食べ、響子の顔を見ていた。


 「響子は大丈夫そうだな」

 「はい、今報告してよろしいですか?」

 「いや、後でいい。少し遊ばせてから寝かせよう」

 「はい、分かりました」

 「お前も少し寝ろよ」

 「大丈夫です」

 「俺が寝ようって言ってるんだぞ?」

 「ハァウッ!」


 「冗談だよ」

 「なんですかぁー」


 子どもたちが笑って見ていた。





 俺は響子に電動移動車を見せた。


 「なにこれぇー!」

 亜紀ちゃんが説明し、響子を乗せる。

 二輪で安定が悪そうだが、皇紀が小さな補助輪を付けて、転倒しないようにした。

 ハンドルを握り、体重移動で進むのだと説明する。

 10分ほどで、響子が操縦を把握した。

 楽しそうに部屋を回っている。


 それを眺めながら、俺は六花から報告を聞いた。

 食事の内容や今日起きてから移動中の様子が報告書にまとめられている。

 朝と途中で測った体温も記入されている。

 その他の気づいた点は、口頭で聞いた。

 昼食はサービスエリアの食事が前回響子があまり食べられなかったので、六花が作ったリゾットを食べたようだ。

 作り方は、オークラのシェフに聞いた。

 響子は喜んで食べた。


 「よく分かった。お疲れさん」

 「はい」

 しばらく響子を遊ばせ、六花と二人で寝かせた。

 俺もすることがないので、響子を挟んで一緒に寝た。





 夕飯は焼肉だ。

 カルビなどの下ごしらえは子どもたちが昼にやっている。

 夕方に起き、俺はバーベキュー台の準備を子どもたちにさせ、ネギスープを作った。

 昆布で出汁をとり、焦げ痕のついた焼きねぎをどんどん入れる。

 豆もやしと千切りの人参も入れ、塩コショウで味を調整する。

 好みで海苔を直前に入れて飲むのもいい。

 バットにロースとカルビを入れ、好きに焼かせる。

 ウインナーやハムもある。

 野菜もあるが、多分あまり食べないので少ない。


 俺は響子のために焼き鳥を作った。

 もも肉、ネギま、かしら、レバー、そして銀杏がある。

 銀杏はあらかじめ焼いて、皮を剥いている。

 それぞれ二本ずつ、計10本を串に打った。

 タレも作った。

 響子の希望で順番にタレを塗りながら焼いていく。


 焼肉は、最高級ではないが、そこそこいい肉だ。

 俺が作った何種類かのタレで、子どもたちが喜んで焼いたものを付けて食べている。

 こういうやり方にすると、大騒ぎはない。

 六花は、いつものように、本当に美味しそうに丼のご飯と一緒に頬張っている。

 響子と二人で笑ってそれを見ていた。


 響子は何本目でレバーを食べるか悩んだ。

 好きではないのだ。

 しかし俺が勝手に焼くと、観念して食べた。


 「あ、おいしい!」

 俺が徹底的に牛乳に漬け込み、臭みを取ったのだ。

 少しみりんとニンニクを塗り、香り付けもしている。

 俺を見て、食べれたよ、と言う。

 頭を撫でてやると喜んだ。


 響子は10本の串をすべて食べ、小さな茶碗のご飯もふりかけをかけて食べた。

 俺たちは、20キロの肉を食べた。





 子どもたちを風呂に入れ、俺は響子と六花と入った。

 響子が俺の背中を洗い、六花が前を洗う。


 「石神せんせー、よーく洗いますねー」

 「普通でいい!」

 響子がクスクスと笑った。

 響子の身体を六花が洗い、俺は髪を洗ってやる。

 二人で泡だらけにして、響子を喜ばせた。


 湯船に浸かると、六花が「もうちょっと洗いますねー」と握って来た。


 「六花はほんとにタカトラのオチンチンが好きね」

 「はい!」

 眩しい笑顔で六花が答えた。





 風呂から上がり、俺はジューサーでバナナジュースとメロンジュースを作った。

 それぞれをピッチャーに入れて運ぶ。

 響子には、氷なしで飲ませるつもりだ。

 各々が好きなジュースを注ぎ、六花と俺はハイネケンだ。


 子どもたちが俺を見ている。


 「今日は俺の話じゃなく、院長の話だ」

 みんなが驚く。


 「若い頃の院長の話なんだけど、プリンの話なんだな」

 俺は話出した。 

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