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星の家族:シャルダンによるΩ点―あるいは親友の子を引き取ったら大事件の連続で、困惑する外科医の愉快な日々ー  作者: 青夜


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四度目の別荘 Ⅴ

 帰ってすぐに、夕食の準備を始めた。

 フレンチはとにかく手間が多い。

 子どもたちは勉強だ。

 しばらくすると、栞が起きてきて手伝ってくれた。


 メニューはオードブルにスモークサーモンとウズラのキャビアのせ、薄く辛子を塗ったポテトとラディッシュのブルーチーズはさみ。

 長ネギとえんどう豆のスープ。

 ウニとアサリのジュレを間に。

 ポアソンはスズキのパイ包。

 ソルベに洋ナシのシャーベット。

 ヴィアンドはシャトーブリアンの岩塩焼きトリュフソース。

 デセールは面倒なのでレアチーズケーキ一品だ。

 ソルベとデセールは事前に作ってある。

 スープとジュレもそうだ。

 

 最初にオードブルの皿を作り、栞にオーブンで肉の仕上がりを見張ってもらう。

 その間に俺はバーベキュー台の上で一気に人数分のポアソンを作った。

 途中で亜紀ちゃんを入れ、バーベキュー台のポアソンの指示をし、何とかなった。

 俺のタイミングが、食事のタイミングだ。

 俺は急いで皿を出すように言い、オードブルから始める。

 食べながら肉を調理し、ソルベの後にすぐに出した。

 一応、コースの流れは崩れていない。


 量は通常のうちの料理にしては大分少ない。

 パンは食べ放題になっているが、それほど食べない。

 しかし、雰囲気を味わい、子どもたちは満足そうだ。


 「石神くん! とっても美味しいよ!」

 栞が絶賛してくれる。

 子どもたちも、みんな喜んで褒めてくれた。


 「やっぱりタカさんの料理は違います!」

 皇紀もそう言ってくれる。

 ピラニアの双子も、味わって食べてくれた。

 ニコニコして一口ずつ食べる顔がカワイイ。

 まあ、これほど苦労して作って不味いと言ったらどうなるかは、みんな分かっている。


 「足りなかったら、亜紀ちゃんに言って何でも焼いて喰ってくれ」

 折角バーベキュー台に火を入れたのだからと思ったが、双子がウインナーを多少焼いたくらいで、みんな満足していた。

 後片付けは子どもたちに任せ、俺は栞とコーヒーを飲んだ。





 庭で花火を少しやった。

 ルーとハーがニ十本の花火を抱えて、二十メートル跳んで高速回転した。

 見事な技だった。

 子どもたちを風呂に入れ、俺はまた栞と亜紀ちゃんと一緒に入った。


 「俺は独りでのんびり入りたいんだけどなぁ」

 湯船で二人が笑っている。


 「モテすぎるタカさんが悪いんです」

 「亜紀ちゃんだって斎藤誠二がいるじゃねぇか」

 「やめてください!」

 栞が分からないでいるので、俺は部下の斎藤の弟の話をした。

 大笑いされた。


 「斎藤誠二も、亜紀ちゃんの裸が見たいだろうなぁ」

 「ほんとにやめてください!」

 「後で電話して、こんななんだよって教えてやろう」

 亜紀ちゃんが必死に口を押さえに来る。


 「乳首は乳輪が小さめで、色は…」

 「やめてぇー!」

 俺と栞は笑った。

 亜紀ちゃんが胸を隠している。


 「今日のフレンチは美味しかったですね」

 亜紀ちゃんが話題を変えて来た。


 「ああ、牛の乳首焼きな」

 「そんなの無かったですよー!」

 「俺は乳首が大好きだからなぁ」

 「もーう!」

 「亜紀ちゃんはこれが大好きだよな」

 俺は立ち上がって顔の前でプルプルしてやる。


 「やめてくださいー!」

 「なんだよ、一緒に風呂に入ったら見えるだろう」

 「そっと見るのが好きなんです」

 「「なに!」」


 俺と栞が同時に叫んだ。

 亜紀ちゃんは真っ赤になって湯船に沈んだ。






 屋上の飲み物は、子どもたちはオレンジジュース、俺と栞、亜紀ちゃんはミモザを作った。

 みんなで屋上に運ぶ。

 俺は双子に、「人生研究会」の様子を聞いた。


 「上手くやってますよ。会員は絞って200名のままですが、入会希望はずっとあります」

 「本体の「虎の穴」も15名のままです。「花岡」はタカさんの指示次第でいつでも教えますから」

 「そうかぁ。反発勢力はないか?」

 「馬込が相変わらず。ちょっと前に兄貴の伝手で高校生10人に呼び出されました」

 「そうか」


 栞が驚く。


 「大丈夫だったの?」

 「もちろん!」

 「「花岡」は使わずに済んだか?」

 「金属バットだけ。「金剛」で受けて、「仁王花」で曲げてやりました」

 「そのまま高校に乗り込んでねぇ」

 「うん、30人くらい締めたかな」

 「頭の奴を血まみれにしてやって。傘下に置く予定です」

 「あんまり使えねぇだろう、そいつらは」

 俺がそう言うと、「そうなんだけど」と言う。


 「でも、組織的には年齢が上の人間もいた方がいいかなって」

 「まあ、あんまり大事にするなよな」

 「「はい!」」

 「恨みを買うというのは、辛いこともあるんだぞ」

 「「はい」」




 「じゃあ、ちょっと俺の高校時代の話をするか」

 亜紀ちゃんが慌てて皇紀と双子に耳打ちをする。


 「なんだよ、お前ら?」

 「いえ、ちゃんとタカさんの話を聞くようにと」

 「皇紀、なんて言われた!」

 「はい! ちゃんと拍手して褒めるようにと!」

 亜紀ちゃんを見ると慌てている。


 「だって! 去年私たちの反応が薄かったら、タカさんものすごく機嫌悪かったじゃないですかぁ!」

 「そ、そんなことあるか!」

 「栞さん、ひどいんですよ。私の目玉焼きにお醤油をかけて、ルーとハーの大好きなウインナー全部食べちゃって。皇紀なんて味噌汁でうがいされて戻されたんですから!」

 栞は大笑いした。

 俺も笑って言う。


 「今日の話はウケを狙ってねぇから心配すんな。むしろ、あんまりいい話でもないし、お前らに聞かせたい内容でもないんだけどな」

 俺は話し出した。





 中学から高校時代の話だ。 

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