表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
星の家族:シャルダンによるΩ点―あるいは親友の子を引き取ったら大事件の連続で、困惑する外科医の愉快な日々ー  作者: 青夜


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

419/3164

ハー、ドライブ。

 家に帰り、俺は御堂に電話した。


 「おう、変わりはないか?」

 「うん、何もないよ。みんな元気にやってる」

 電話の向こうで柳が騒いでいる。


 「柳には後で電話するから離れろと言ってくれ」

 御堂は笑いながら柳に言っている。

 柳がでかい声で「絶対だからね」と言ったのが聞こえた。


 「なんだ、随分勘が良くなったんじゃねぇか?」

 「アハハ。そうだね。石神のことは逃さないようだよ」

 俺も笑った。

 俺は先ほど栞の家で会った、蓮花の話をする。


 「そうか。よく分からないけど、良くないものではない気がするよ」

 「ああ、俺もそうだ。今も気味が悪いけどな。一緒に飯を喰って俺もそう感じた」

 御堂が言った。


 「この前持って行ってもらった「虎王」なんだけど」

 「ああ」

 「こちらでも少し調べてみた。どうやらうちの先祖が諏訪大社から預かったものらしいよ」

 「随分な話だな」

 俺も驚いた。

 諏訪大社は長野県の大きな神社だ。

 日本最古のものであり、軍神であるとされる。

 タケミナカタノミコトとヤサカノトメノカミを祭っている。


 「詳しいことは分からないけど、日本を襲う国難に立ち向かうための刀ということだ」

 「お前んちに返すよ」

 御堂が笑った。


 「そういう神託があって、どういう経緯かうちで預かっていたものらしい」

 「明日の午前着で送るからな!」

 「ダメだよ、石神。もうお前のものになったんだから」

 「じゃあ諏訪大社に返す!」

 「いや、逆に函が見つかったから送るよ。明日の午前中着でいいか?」

 御堂が笑って言った。


 「今の内容は、箱書と中の文書に書いてあった。どうして梁なんかにあったのかは不明だけどね」

 俺たちは近況を話し、電話を切った。


 数分後に柳から電話が来る。


 「なんだよ、俺が掛けるって言っただろう」

 「絶対石神さんは忘れると思ったの!」

 忘れていた。


 「来週は別荘に伺うからね!」

 「分かってるよ」

 俺は笑って答えた。

 

 俺たちは栞も連れて今週の土曜日から別荘に向かう。

 栞は月曜に帰る。

 柳は翌週の水木金で二泊する予定だ。

 響子と六花は栞と入れ替えで月曜日から来る。

 鷹はまた次の機会だ。

 柳ははしゃいで、いかに楽しみにしているかを語る。

 俺は笑って聞いていた。


 「何もねぇところだから、お前は一日中俺にオッパイ触られてるぞ?」

 「いーですよー! 一杯触ってください」

 「ああ、最近テンガも手に入ったからな。俺を楽しませろ」

 「え?」

 「知らないのかよ。ちゃんと調べておけ!」

 「はい!」


 数分後に柳から「ヘンタイ!」とメールが来た。





 俺は双子をドライブに誘った。

 一人はこれから横須賀でハンバーガーを喰い放題。

 もう一人は夕食後に羽田空港、でかいチリドッグ付き。


 案外すんなりと、横須賀はハー、羽田空港はルーが希望して決まった。

 二人とも喜んでいる。


 ハーは最初から大興奮でアヴェンタドールに乗り込んだ。

 走り出すと、一層ニコニコして景色と俺の顔を交互に見た。


 「今日はどうして乗せてくれるの?」

 「今までお前らとドライブって、あんまりなかったからな」

 「ハマーでちょっとだけだよね」

 「ああ。お前らもドライブの良さが分かって来たかと思ってな」

 「うん!」

 湾岸に入ると、ハーは海の輝きを嬉しそうに見ていた。


 「後でみんなにも話すんだけどな」

 ハーが俺を見る。


 「今朝、栞の家で「蓮花」という女と会った」

 俺は蓮花が蓮華の双子の妹だと話した。

 そして蓮華の記憶の一部を蓮花が得ていること。


 「お前も双子じゃない。そういうことってあると思うか?」

 「あるよ」

 「!」

 「他の双子がどうだかは知らない。でもルーの考えが分かるってしょっちゅうだし」

 「そういえば、同じ夢を見てるようなこともあったな」

 「うん!」

 ハーは、夢は一緒に見ているかは、すぐに分かるのだと言った。


 俺は突っ込んで、蓮華と蓮花が正反対に物事を受け止めるという話をした。

 俺の実感が無いので、随分と曖昧な説明だった。


 「うーん、それは分からないけど。でも量子的にはそういうものもアリじゃないかなー」

 「なるほど。ボーズ粒子とフェルミ粒子か!」

 「うん」

 ハーはハートリー積の偶置換と奇置換で説明を始めた。


 「だからね、双子に常時結束があれば、それを入れ替えることも理論的には可能ってことかな!」

 俺はハーの頭を撫でた。


 「おい、ハンバーガーは好きなだけ喰えよ!」

 「はい!」





 横須賀のいつもの店に入った。

 迷わず、カレーとのセットを頼む。


 「セットでまた注文してもいいし、どっちかだけでもいいからな」

 「うん!」

 ウェイトレスが子どもが一人前に頼むのを見て、微笑んでいた。

 その顔は15分後に豹変する。

 三回セットでお代わりをしたハーは、メニューの端から順に持って来て、と言った。

 俺は笑っている。

 アメリカの海軍兵も来ていて、ハーの食欲に驚く。


 「Her Mother is Greet White Shark.(この子の母親はホホジロザメなんだ)」

 俺が言うと、みんなが大笑いした。

 店員は驚いている。

 メニューを喰い終わり、俺はまだ入るならもう一軒行こうと誘った。


 「行くぅー!」

 「She eats More!(まだ喰うってよ!)」


 俺が言うと、みんながついてきた。

 ハーも楽しそうに後ろを見ている。

 第七艦隊バーガーを喰わせた。

 ハーは4つ食べた。


 「Aer You OK ?」

 店を出ると、一人のでかい男が心配して聞いた。


 「そんなに喰って大丈夫か、だってさ」

 ハーは笑って15メートルを飛び、見事な「カッシーナ」を見せて着地した。

 大歓声が起き、みんながハーを褒め称え、抱きかかえる。

 俺たちが帰ろうとするとまだ付いてきて、アヴェンタドールに乗り込むとまた大歓声が沸いた。

 ハーが手を振りながら別れた。


 「楽しかったな!」

 「うん! 美味しかったし!」

 「そりゃ最高だ」


 ハーが笑顔で「また来ようね」と言った。

 俺はもちろんだ、と約束した。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ