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星の家族:シャルダンによるΩ点―あるいは親友の子を引き取ったら大事件の連続で、困惑する外科医の愉快な日々ー  作者: 青夜


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襲撃者の夜 Ⅱ

 派手なアロハを着た聖が、入国審査を終えて出てきた。

 大きなヴィトンの旅行鞄を提げている。


 「お前、ちょっと太ったんじゃねぇか?」

 「バーカ! お前と違っていいもん食ってるだけだよ。これは貫禄と言うんだ」

 「腹が出てるだけだろう。もしかして髪も薄くなったんじゃねぇか?」

 聖が回し蹴りを放って来る。

 俺は左手で受け止め、聖のパナマ帽を蹴り飛ばした。

 頭頂が薄くなっていた。


 「あー! 俺のボルサリーノを!」

 「さっさと拾って来い、ハゲ!」

 「喧嘩売ってんのかぁ?」

 「お前がなぁ!」

 俺たちは殴り合った。

 聖は衰えてはいなかった。

 社長になっても、自ら実戦に出ている。 

 警備員が来る。

 俺たちは肩を組んで手を振りながら逃げた。





 「お前の車かよ」

 駐車場で聖がハマーを見て言った。


 「おう」

 「どこバカ?」

 「やめろ、時間がねぇんだ」

 殴りたいのを抑えて、聖を助手席に乗せた。

 聖は、病院ではなく、一旦俺の家に入れるつもりだった。

 運転しながら、聖に事情を話した。

 なにしろこのバカは俺が助けが必要だと言っただけで飛んできた。

 一切の説明もしていない。

 

 真正のバカだ。

 俺以上だ。


 「それで、お前がその「花岡」って空手使いの家と揉めたってこと?」

 「お前の場合、それでいいよ」

 「俺は何すりゃいいのよ」

 「珍妙な空手も結構な威力だけど、問題はガンを持って来そうだってことだ。アサルトライフルくらいはあるかもな」

 「なんだ、武道家の風上にもおけねぇ連中だな」

 「俺たちも強いけど、うちの子らは何しろ「戦争」を知らねぇ。プロフェッショナルが必要だ」


 「なるほどな」


 「お前、実はよく分かってねぇだろう?」

 「俺は理解しなくてもできる天才だからな」

 本当のバカだった。


 「まあ、お前は俺の言う通りに動けばいいぞ」

 「まあ、俺に任せておけよ。ところで、俺のガンはあるんだろうな?」

 俺は道の脇に車を寄せ、後部の荷台を見せた。

 掛けていたシートをめくる。


 「すげぇな」

 聖が満足そうに言った。


 「ブリガディアは俺のだからな」

 「なんでだよ! 俺の方が似合うだろう!」

 「お前は主にスナイパーだ」

 「いつも通りだな」

 「ああ」

 俺はバレットM82とステアーAUGを示した。


 「サイドアームはM629でいいだろ? まあ天才のお前なら武器は選ばないけどな」

 「おう!」

 バカを乗せ、再び走った。


 「トラ、ところで俺のハンバーガーは?」

 「あ! 忘れた」

 「ふざけんなよ! 俺はハンバーガーの夢を見ながらジェットで来たんだぞ!」

 丁度マ〇クが見えた。

 聖に好きなものを買って来いと言い、一万円を渡した。

 店員が戸惑っているのが見える。


 「聖! 日本語で話せ!」

 「あ、ああ!」

 バカだった。


 「おい、美味いな日本のマ〇ク」

 「おう、日本人の舌に合わせていろいろ調整してっからな」

 どうなのか知らん。


 「そうかー! スゴイぞマ〇ク!」

 聖は美味そうに喰っている。





 家に着くと、亜紀ちゃんが駆け寄って来た。

 コンバットスーツを着て、家の中でもブーツも履いたままでいる。


 「なんだ、こいつ!」

 聖が亜紀ちゃんを見て驚く。


 「俺が親友の子どもを引き取ったって話したろう!」

 「すげぇ美人じゃん」

 「お前、うちの子に手を出すなよ!」

 「あ、俺は年上じゃねぇとダメ」

 聖は熟女好みだった。


 「トラはロリだったかぁ」

 「子どもを引き取ったんだだから、子どもに決まってるだろう!」

 亜紀ちゃんが目を丸くしていたが、俺たちの遣り取りで笑いだした。


 「突然悪いな。こいつが「聖」だ。大分バカなのは分かったろ?」

 「え! 前に話してくれた、ニューヨークの人!」

 「ああ。今日から数日一緒にいるから宜しくな」

 「はい! 聖さん、よろしくお願いいたします!」

 「おう! 俺が来たからには何があっても大丈夫だぜ!」

 「取り敢えず、今日は俺の部屋に泊めてくれ。ああ、何も構う必要はないぞ。さっき食事も済ませた」


 「は、はい」


 俺はハマーから聖の荷物と俺の「荷物」を降ろして、聖を部屋へ案内した。

 亜紀ちゃんも付いて来る。


 「トラ、随分でかい家に住んでんなぁ」

 「まあな。お前薄汚いからあちこち触るなよな」

 「ああ」

 「ここで今日は寝てくれ」

 「トラ! エロビデオは?」

 俺は無言で棚を開いた。


 「ウオォー! 久しぶりの日本人だぁー!」

 亜紀ちゃんが後ろで笑った。


 「明日シーツは捨ててくれ」

 「分かりました!」


 俺はまた病院へ向かった。

 途中で六花と鷹に電話する。

 今のところ異常はない。

 しかし、俺は嫌な予感を感じていた。






 その夜、俺の家と鷹が襲われた。

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