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星の家族:シャルダンによるΩ点―あるいは親友の子を引き取ったら大事件の連続で、困惑する外科医の愉快な日々ー  作者: 青夜


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再び、御堂家 Ⅷ

 御堂が帰って来た。

 柳と一緒にいる部屋に入って来た。

 いつもと違う、動揺した雰囲気だった。


 「石神!」

 「なんだよ、折角これから柳といいことしようと」

 「ああ、それは悪かった。後で宜しく頼む」

 動じない奴だった。


 「そんなことより、オロチを見たって」

 「ああ、そうなのかもな」

 「見たんだろ?」

 珍しく、御堂が焦っている。


 「いや、俺も顔を知らんし。まあヘビの知り合いもいねぇし」

 「おい、頼むよ」

 「じゃあ、これから確かめに行くか?」

 「え?」

 「全員集めてくれよ」

 「わ、分かった」


 俺は柳と玄関前で待った。

 御堂家の全員と、家にいた手伝いの人たち全員、そして俺の子どもたちも集まった。


 「じゃあ、行くか」

 「おい、どこへ」

 御堂が聞いて来る」


 「そんなの、さっきの場所がいいんじゃねぇか?」

 それ以上の場所は思い当たらん。

 みんな付いて来る。

 正巳さんは興奮している。

 御堂は一眼レフカメラを持っていた。

 澪さんは卵を二つ握っている。


 卵が喰われた軒下に来る。


 「おーい、オロチ! いたら顔を見せてくれ!」

 呼びかけた。

 御堂が俺に何か言おうとして、やめた。

 みんな沈黙して待った。

 ズルズルと音が聞こえ、全員が緊張する。

 呆気なく顔を出した。


 「おー、さっきの御堂家謹製卵はどうだったよ!」

 俺が頭を撫でると、また小さな舌を出し入れした。


 「なんかよー、御堂家のみなさんがお前のことを大事に思ってて、顔を見たかったんだと。来てくれてありがとうな!」

 御堂が腰を抜かした。

 正巳さんは震えている。

 泣きそうだ。

 菊子さんは手を合わせて何かを唱えていた。

 俺は動けない澪さんから卵を受け取り、割ってやる。

 地面に置くと、またオロチが食べ始めた。


 「石神、写真を撮ってもいいか?」

 「なんで俺に聞くんだよ」

 「いや、なんかな」

 しょうがねぇ。


 「オロチ、俺の大親友がお前の写真を撮りたいそうだ。いいだろ?」

 オロチが顔を上げ、ちょっと上下させたように見えた。


 「なんか、いいっぽいぞ?」

 「うん」

 御堂が一礼し、レンズを向けた。

 

 「フラッシュは焚くなよ」

 「分かった」

 何枚かシャッターを切る。

 俺はもう一つの卵を割り、傍に置いた。


 「ありがとうな! ゆっくり喰ってくれ! ああ、俺んじゃないけどな! アハハ」


 「じゃあ行こうか」

 全員を連れて戻った。





 座敷で全員が座った。

 正巳さんの様子が尋常ではない。

 御堂家の人間が動けないので、俺は子どもたちにお茶を煎れて来いと言った。

 全員にお茶を配り、一息ついてもらった。


 「石神、お前は何者なんだ?」

 「あ? 何言ってんだよ。御堂がよく知ってるじゃないか」

 正巳さんが両手で俺の手を握った。

 泣いている。


 「まさかこの自分の目でオロチが見られるなんて」

 「良かったですね」

 「石神さん! このことは一生忘れん!」

 「はい、ありがとうございます?」

 その後は大変だった。

 祝いの準備だと、全員が奔走した。

 魚屋に鯛をありったけと、伊勢海老を。

 それでも足りないと、御堂が遠方まで車で出かけた。

 正利もそれについていった。

 澪さんは新たに呼び寄せて増やした料理人たちを使って、厨房で忙しく動く。

 陣頭指揮に、菊子さんまで立った。


 俺と子どもたちは「主役だから」と何もさせてもらえない。

 俺は菊子さんに頼み、子どもたちを使ってもらう。


 「こんな忙しい現場はいい経験になりますから」

 そう言って、無理矢理突っ込んだ。

 全員が目の色を変えて動いていた。





 「ところでお前は何なのよ?」

 目の前にいる柳に聞いた。


 「はい、石神さんの相手をしろと」

 「別にいらないんだが」

 「そんなこと言わずに。取り敢えず、お風呂に入ります?」

 「お前はそれしか考えられねぇのか!」

 まあ、やることもねぇし、柳のオッパイでも見るか。

 別に嫌いなわけじゃないしな。




 

 「はぁー、やっと一緒に入れましたね!」

 「まあ、お前の裸も見飽きたけどな」

 「またそんなことを」

 「石神さん、もううちでとんでもない人になっちゃいましたよ?」

 「やめてくれ」

 「だってもう、なんだろう、「蛇神様」?」

 「俺は石神だ」

 柳が笑った。

 俺はネコカフェ「ネコ三昧」の話をしてやった。


 「ゴールドが死んでからさ、どうも動物に懐かれちゃってな」

 「あ、昨日の河原でも!」

 「ああそうだな。ゴールドに頼んで一時は平和になったんだけど、また頼むと寄って来るんだよ」

 「へぇー、石神さんってやっぱり不思議ですよね」

 「それで栞に誘われてネコカフェに行ったのな。もう店中のネコが全部乗って来て。大変だったんだ」

 「今度、是非連れてってください!」

 俺は笑って、一緒に行こうと言った。

 そこで俺は店長たちから「猫神様」と呼ばれているのだと話すと、柳が大笑いした。


 「でも、これでいつ私に手を出しても大丈夫になりましたね!」

 「ばかやろー」

 「なんですか、照れてるんですか?」

 「お前をもらうことは、昨日御堂に話してある」

 「え!」

 「お前は俺の女だ、柳」

 柳が俺の足の上に跨り、抱き着いて来る。


 「うっとうしいな」

 「もうダメですよ。それって、石神さんの照れ隠しだって分かっちゃいましたから」

 「そうかよ」

 俺は笑った。


 「おい、柳」

 「はい、なんですか」

 「ちょっと動くなよ」

 「なんでです?」

 「いいから」

 俺が柳の脇に手を入れてどかそうとした途端、俺が持ち上がった。

 柳の少しぬめった部分にあたる。


 「あ!」


 



 「うっとうしいな」


 俺たちは笑った。

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