再び、虎と龍 XⅣ
翌朝。
俺たちは荷物をハマーに積み込む。
ノーマルのハマーH2は5人定員だが、俺のものはカスタムカーだ。
後ろに収納式のベンチシートがあり、最大12人まで乗れる。
助手席に柳、後ろに亜紀ちゃんと双子、ベンチシートの一つに皇紀が座る。
皇紀は荷物の番も兼ねていた。
ちなみにリムジンタイプに改装され、全長は約1メートル伸びて6メートルを超えている。
そのため、後部には更に二輪が追加され、六輪になっている。
サイズ感は、大体2トン車のロングタイプと同じだ。
エンジン回り、足回りも強化されている、本当の特別仕様だ。
普通は運転しにくいが、六花などは運送業の仕事をしていたので慣れていた。
俺の知り合いだと、他には便利屋なども大丈夫だが、他の人間は慣れてもらうしかない。
子どもたちを引き取るために探して出会った。
ガチガチにカスタマイズされているのが、一目で気に入った。
これも運命と思う。
「今日のお昼はなにかなー」
ルーが出発してすぐに言った。
「さっき朝食を食べたばかりだろう!」
俺が言うと、隣で柳が笑った。
「じゃあ、いつも通り芸で俺を満足させてからだな!」
「「「「はーい!」」」」
亜紀ちゃんが『オー・チン・チン』を歌う。
夕べネットで覚えたそうだ。
大爆笑になる。
「御堂家の方の前で下品な歌をうたうな!」
「えぇー!」
柳が更に笑った。
皇紀がシューベルトの『糸を紡ぐグレートヒェン』を高らかに歌った。
みんなが聞き惚れる。
「お前も食事中はすっかり安らぎがねぇもんな」
「はい」
「いつかゆっくり一緒に食べられる嫁さんをもらえよ!」
「はい!」
双子が例によって、『日本印度化計画』を歌う。
盛り上がる。
「御堂家でも歌うか!」
「「うん!」」
柳が笑いながら、絶対やって、と言う。
「じゃあ、次は柳ちゃんね!」
ハーが言った。
「えぇー、私も?」
「当たり前だろう。お前ももううちの家族なんだからな」
柳はプッチモニを歌う。
曲名は知らん。
みんなは手拍子をして盛り上げた。
「柳、お前今日の昼はふりかけご飯な」
「なんでぇー!」
みんなで笑た。
「じゃあ、タカさんですね!」
亜紀ちゃんが嬉しそうに言う。
俺はエックスの『紅』を熱唱した。
大盛況で、口々に子どもたちが褒め称える。
「柳ちゃん、ここでタカさんを褒めると、お昼にサーティワンが食べられるよ!」
ルーが言った。
柳が必死に褒める。
いい気分だった。
俺は斬のじじぃの精神攻撃の話をした。
柳のために、簡単な経緯も話す。
「あれは「花岡」の奥義の一つでな。交感神経と副交感神経を激しく揺さぶる技だそうだ。六花の仲間たちは全員潰れそうになった」
子どもたちも柳も真剣に聴いている。
「その時になぁ、六花が叫んだんだ。「みんな、気合を入れろ! お前たちの「紅」を見せろ!」ってなぁ。あれはカッコ良かったぞー!」
みんな大感動していた。
双子は泣いていた。
「タカさん、もう一回歌って下さい!」
亜紀ちゃんが言った。
「おう! 任せろ!」
途中のサービスエリアで昼食にする。
テーブルを二つ取り、子どもたちに食事を集めるように言った。
今日は喰いたいだけ持って来ることを許可する。
亜紀ちゃんが即座に指示を出した。
俺と柳はそれぞれテーブルを確保して待つ。
「これって、またとんでもないことが」
「そうだな!」
「えぇー!」
俺は笑った。
しばらくすると、子どもたちが大量の食事を運んでくる。
寿司50貫、が3つ。
ラーメン3つ。
ソバ3つ。
ピザ4枚。
カレー7つ。
ハンバーガー30個。
焼き鳥や唐揚げ多数。
亜紀ちゃんがどこからかゴミ箱を借りてくる。
テーブルをあと2つ借りた。
柳は口をあけて驚いていた。
「いただきます」
「「「「いただきまーす!」」」」
「さあ、柳喰え」
「は、はい」
「亜紀ちゃん、ふりかけがねぇぞ?」
「えぇー!」
みんなで笑った。
すぐに周囲の人間が気付く。
次第に集まり始める。
俺たちは気にしない。
「あー、撮影の途中なんであまり止まらないでください!」
俺が言うと、離れ始めた。
日本人は素直でいい。
俺はカレーを持って来たルーに聞いた。
「なんで7つなんだ?」
「だって、みんなカレー好きじゃん」
「あーそうか」
よく分からないが納得した。
柳は圧倒されながらも、ソバと寿司をつまんでいた。
食べ終わると、亜紀ちゃんがゴミ箱を抱えて行った。
「「「「ごちそーさまでしたー」」」」
子どもたちが言うと、周囲で拍手が起きた。
柳が笑っていた。
「石神さんって、本当に面白いですよね」
「そうかよ?」
「タカさん、あっちにサーティワンがあったよ!」
ハーが俺の手を引いた。
みんなで笑いながら向かった。
御堂の家に近くなる。
「柳、楽しんでもらえたか?」
「はい! 最高でした」
「そうか、よかった」
柳が左手で俺のオチンチンを突いた。
「石神さんはオチンチンは大丈夫ですか?」
「お前! 何を」
「あーまたイヤラシー大王だ」
後ろで双子が叫んだ。




