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星の家族:シャルダンによるΩ点―あるいは親友の子を引き取ったら大事件の連続で、困惑する外科医の愉快な日々ー  作者: 青夜


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再び、虎と龍 Ⅲ

 土曜日は、10時くらいまで寝た。

 亜紀ちゃんに言ってあったので、双子も起こしには来ない。

 夕べは4時くらいまで話した。

 亜紀ちゃんも柳もゆっくり寝ろと言ったが、二人とも8時には起きていたようだ。


 「若いな、やっぱり!」

 二人が笑った。


 「タカさん、お食事はどうします?」

 「ああ、コーヒーだけでいいや。半熟卵だけもらおうかな」

 「はーい!」

 亜紀ちゃんがコーヒーを淹れ、ルーが卵を作ってくれる。

 

 「柳は食べたのか?」

 「はい、いただきました!」

 「昼食を食べたらちょっと寝ておけよ」

 「大丈夫ですよ?」

 「いや、今晩ドライブに行こう」

 「それは! 楽しみにしてます!」


 コーヒーを飲み終わり、柳を三階に連れて行った。


 「客用の部屋が二つあるんだが、どっちの部屋がいいか見てくれ」

 「え! 本当ですか!」

 俺は笑って案内した。

 どちらの部屋も12畳ほどだ。

 柳は、亜紀ちゃんの隣の部屋を選んだ。

 亜紀ちゃんと同じく、廊下を隔てて俺の寝室の向かいだ。


 「じゃあ、用意しておくから、絶対に受かれよな」

 「任せてください! またテンションが上がりましたからね!」

 今はダブルベッドが二つ入っている。

 小さなソファセットにテーブルとイス。

 一応ワードローブも付いている。

 ベッドを一つどかし、デスクや書棚、タンス、テレビなどを入れても空間は十分にある。

 そういう話をした。


 「何か希望はあるか?」

 「いいえ、大丈夫だと思います」

 「家のものは自由に使っていいからな。地下の施設なんかもそうだ。まあ、一部立ち入り禁止もあるけどなぁ」

 「どういう場所ですか?」

 

 「俺の部屋だぁ!」

 「アハハハ」


 「それと、本当にマズイ場所もあるからな」

 「え?」

 「ゴキブリが出るとかなぁ」

 「やだぁー!」

 まあ、一緒に住むようになったら話さなければならなくなるだろう。




 昼食は稲荷寿司を作った。

 もちろん大量だ。

 それにキジの山椒焼きだ。


 「キジなんて、珍しいですね」

 柳が言う。


 「懇意にしているお肉屋さんがあるんです」

 亜紀ちゃんがニコニコして説明した。

 六花の妹の風花の話をする。


 「へぇー! 六花さんに妹さんがいたんですね」

 「ああ。あいつに似て美人だぞ。亜紀ちゃんの一個上か?」

 「そうですね。綺麗で優しくて、いい方ですよ」

 「六花と違って、ぶっ飛んだとこはないよな」

 「ひどいですよー!」


 「そういえば、バイクに乗せてもらうのに六花さんが泣くからって」

 「ああ、そんなこと聞いたのか。じゃあ、確認してみるか」

 「?」


 昼食後、柳は少し寝た。


 


 3時過ぎに柳が起き、シャワーを浴びてリヴィングに降りて来た。


 「すいません、休ませていただきました」

 「おう、じゃあドライブに行くか!」

 「はい!」

 子どもたちに夕飯はいらないと言って、アヴェンタドールを出した。


 「凄い車ですね!」

 「そうだろう!」

 俺はニコニコして、シザードアの開け方を説明する。

 柳はそれにも驚き、座って俺にオッパイを揉まれる。


 「何するんですかぁ!」

 「この車の最初の儀式が決まってるんだ」

 一緒に来た亜紀ちゃんが笑って、「そうなんですよ」と言った。

 それが見たかったらしい。


 


 「ちょっと病院に寄るぞ」

 「あ、響子ちゃんですね!」

 「ああ。それと六花も来ているはずだ」

 「分かりました」


 「タカトラ!」

 響子がセグウェイで走って来る。


 「柳を連れて来たぞ」

 「リュウ! 久しぶり」

 「響子ちゃん、こんにちは。また来ちゃった」

 二人はニコニコして話している。


 「セグウェイ、いいだろう。響子が夢中なんだ」

 「へぇー。カッコイイね!」

 「エヘヘヘ」


 「柳さん、こんにちわ」

 「六花さんもお久しぶりです」

 「六花、折角柳が来たんで、ドカティでどこかに連れてこうと思うんだけど」


 六花が大粒の涙を流している。


 「え!」

 柳が驚く。


 「な、やっぱダメだ」

 「どうしたんですか?」

 「それは私の「お仕事」なんでズゥー」

 まじ泣きだ。


 「六花さん、私はバイクなんて乗らないですから!」

 「ボンドデズガァー」


 「ぼんどだよ! 悪かった、冗談だ。柳はアヴェンタドールだけだ」

 六花が俺に泣きついてきた。

 抱きしめてやる。

 響子まで泣く。

 柳も目を潤ませやがる。

 何とか落ち着かせ、響子と一緒にセグウェイで遊び、六花も笑顔になった。



 俺たちは再び出発した。



 「石神さん、、六花さんを泣かせちゃだめですよ」

 柳が俺を叱る。


 「まあ、悪かったよ。でもお前も分かったと思うけど、六花が泣くと、ほんとにこっちが辛い気持ちになるんだよなぁ」

 「そういえばそうですね」

 「響子なんか、泣くとカワイイんだよ」

 「あ、分かります」


 「でも、六花はどうしようもなく辛い。あいつってさ、美味いものを喰うと、ニコニコしてそりゃ美味しそうに食べるのな。あれはたまらないものがあるんだ」

 「それも分かりますねぇ」

 「な! あいつが幸せそうにしてると、こっちも幸せになれるのな。でも反対に泣かれると辛いんだよ」

 「天使みたいな人ですね」


 「天使と言うよりも、「バカ」なのな」

 「ひどいですよー!」

 俺は笑った。


 「あいつはバカだから、心底相手を信用してるんだ。俺に対しては一層な。だからあいつを泣かせると何かあいつの純粋を裏切ったような罪悪感がある」

 「なるほどー」

 「それでもあいつは俺を怒らないんだよ。他の人間のように文句を言ったり非難してくれればいいんだけど、あいつの場合はただただ悲しむのな。だから余計に辛い」

 「そうですね」


 「六花は本当にカワイイよ。あんな世界中でも見ないような美人のくせに、本当に純粋なんだからなぁ」

 「じゃあ、石神さんが一番好きな人なんですか?」

 「そうでもあるし、他の女性にだってそれぞれの思いがあるんだけどな。他の人間だって悲しませたくはない。でも、六花の場合は、一番辛くなるんだよなぁ」

 「私はどうですか?」


 「あ? お前は泣くと面白いって言うか」

 「ひどいです!」

 柳は俺の腕をつねった。


 「お前! ゴールドの部屋にするぞ!」






 柳は笑って俺の腕を撫でてくれた。 

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