再び、虎と龍
金曜日の夜。
柳が東京へ来た。
石神はオペがあったので、双子に迎えに行かせた。
間違いが無いように、新幹線の改札を待ち合わせにした。
「柳ちゃーん!」
ルーが柳に手を振った。
「あ、ほんとに二人が迎えに来てくれたんだ!」
「「うん!」」
「ありがとう。ここまで大丈夫だった?」
「「うん!」」
ハーが柳の荷物を持とうとする。
「大丈夫よ。自分で持てるから」
「ダメ! タカさんから言われてるの」
柳は笑って、じゃあお願いしますと言った。
キャリアーが付いているとはいえ、大きく重い荷物だった。
しかし、自分よりも小さなハーが軽々と引く。
ルーが柳の手を取り、案内する。
「タカさんがね、どこかの喫茶店でお茶でも飲めって」
「そうなの? 嬉しいな」
「柳ちゃん、疲れたでしょ?」
「そうね。電車って乗りなれてないからな」
ルーは嬉しそうに笑い、構内の喫茶店に入る。
「何でも注文して! タカさんからお金を預かってるから」
「そう。じゃあミルクティにしようかな」
「「!」」
「どうしたの?」
「ハー、大人だよ」
「ルー、クリームメロンソーダはやめよう」
「あ、私やっぱりクリームメロンソーダにする!」
「そう? じゃあ、私たちも!」
ルーがニコニコしてクリームメロンソーダを三つ、と注文する。
「みんな元気だった?」
「「うん!」」
「石神さんも?」
双子は顔を見合わせた。
「何かあったの!」
「うーん。元気なんだけど、拳銃で撃たれて死に掛けたかな」
「え!」
「バケモノじじぃをやっつけに行ったり」
「なに!」
「フェラーリ手放して落ち込んでたかなぁ」
「あのフェラーリを?」
「でも元気だから」
「アヴェンタドールで最高に機嫌いいから」
「そ、そうなの?」
「あ、ドカティも買ったよ! おっきなバイク!」
「へぇー」
「柳ちゃんを乗せようかなって言ってた。でも六花ちゃんが泣くからどうしようかなって」
「うーん、よく分かんない」
「あ、今日はね。亜紀ちゃんと皇紀ちゃんがフレンチ作ってるって」
「「スズキのポワレ」だけど、あんまし量はないんだ。ごめんね」
「いや、私はあんまり量はなくても」
双子は無視して話を続ける。
「タカさんは今日は遅いんだって。来週から休むから、毎日オペを三つくらいやるんだって」
「まあ、大変ね」
「毎日クタクタで帰って来るんだけど、亜紀ちゃんがお風呂で癒してる!」
「エェー!」
「タカさんはイヤラシー大王だからね!」
「ナニソレー!」
柳は双子に早く飲めと言い、早く帰ろうと急かした。
タクシー乗り場へ行き、ルーが運転手に行き先を告げた。
「出来るだけ急いで!」
柳が後ろから注文する。
「分かりました! シートベルトをお締めください」
ルーが「じゃあ高速使って下さい」と言った。
「ルーちゃん! ナイス!」
運転手が笑った。
「柳さん、いらっしゃい!」
亜紀ちゃんが玄関へ出迎えた。
「こんばんは。数日お世話になります」
柳は土産を亜紀ちゃんに渡す。
祖父母と両親から、様々な食材を預かって来た。
「明日には宅急便でまた来るから」
「えぇー、そうなんですか!」
亜紀ちゃんは礼を言い、ニコニコして食材を運ぶ。
双子が二階へ案内した。
「タカさんはまだかかるらしいので、先に食べておくようにって」
「そうなの。残念ね」
「毎日お疲れで。でも元気ですよ」
「亜紀ちゃんが癒してるって聞いたけど?」
「あー、ルーとハーが言ったんですか。大したことはしてないんですけど」
「でも、一緒にお風呂に入るって」
「はい! 最近ずっとそうですね!」
「なんでぇ?」
「だって、タカさん大好きですもん!」
「……」
柳はテーブルに座らされ、みんなで食事をした。
「亜紀ちゃん! これ美味しいよ!」
柳が驚く。
「ありがとうございます」
「皇紀くんも一緒に作ったんだよね」
「はい!」
本当に美味しかった。
「よくフレンチなんて」
「タカさんの真似ですよ。鷹さんのためにタカさんが作ったのが美味しくて。教わったんです」
「また知らないことが!」
「ああ、そうでした。タカさんの病院のナースの方です。オペ室の専属らしくて、タカさんが大分信頼されてるようで」
「石神さんの恋人なの?」
「はい。綺麗な方ですよ! 和食が本当に美味しくて」
「エェッー!」
「まあ、タカさんが戻ったらまた詳しく」
柳は釈然としないながらも、食事を楽しんだ。
近況を話し合い、本当に楽しかった。
「タカさん、お帰りなさい」
9時過ぎに、石神は帰った。
「あーつかれた! おう柳! ちゃんと着いたな!」
柳が階段を降りて、石神を出迎えた。
「お帰りなさい。今日からお世話になります」
「ああ、自分の家だと思ってな。ゆっくりしてくれ」
「はい、ありがとうございます」
「タカさん、お食事は?」
「ああ、オペが終わってみんなで食べた。でももうちょっと喰いたいな」
亜紀ちゃんの顔が明るくなる。
「タカさんの分、残してあるんですよ! 召し上がってください」
「おう、ありがたいな」
「お食事にしますか? それともお風呂」
柳が聞く。
「あ? だから食事にするって」
「じゃあ、その後でお風呂!」
「まあ、そうだな」
「私、とか」
「お前、何言ってんの?」
柳は顔を赤くした。




