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星の家族:シャルダンによるΩ点―あるいは親友の子を引き取ったら大事件の連続で、困惑する外科医の愉快な日々ー  作者: 青夜


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皇紀、一泊旅行。

 月曜日。

 一江からいつもの報告を受けていた。

 別段、何の問題もない。

 報告が終わって、一江が俺をじっと見ている。

 気持ち悪い。


 「おい、早く席に戻れ」

 「はい」

 動かない。

 見ている。


 「お前さ、どうでもいいんだけど、もしかして化粧変えた?」

 「はい! 変えました! よくお気づきに!」

 本当にどうでも良かった。


 「どうですか?」

 「ああ、いいんじゃないか?」

 アイシャドウを入れていた。

 細い目が、コワイほど強調されていた。

 一江は上機嫌で席に戻った。


 「サイトー! お茶!」

 斎藤が、寿司屋でもらったらしい魚の漢字が一杯ある湯呑を一江のデスクに置いた。





 俺は皇紀の彼女、葵ちゃんの親に電話をする。


 「相川さんのお宅でしょうか。私は石神といいます。皇紀の父親です」

 『ああ、葵がお世話になってる! 初めまして、葵の母親です』

 「昨晩皇紀に聞いたのですが、なんでも夏休みに別荘に誘っていただいたとのことで」

 『ええ、皇紀さんには大変にうちの娘が。皇紀さんのお陰で成績もトップクラスにしていただきまして』

 「そんなことは。うちの方こそ可愛らしいお嬢さんに、大変親切にしていただいていると喜んでおりまして」


 俺は別荘の件を詳しく聞き、送り迎えをどうするとか、女性と一緒に行っても良いのかと確認した。

 基本的に、皇紀がお世話になるのは構わない。

 相手の、皇紀に対する態度を知りたかっただけだ。


 「分かりました。それでは申し訳ありませんが、皇紀を宜しくお願いいたします」

 『いえいえ、こちらこそ。今後ともお付き合いいただけると大変嬉しゅうございます』

 俺は電話を切った。


 夏休みに入ってすぐの旅行らしい。

 軽井沢だ。

 本当は一週間ほど一緒に過ごしたいらしいが、皇紀が一泊ならと受けたようだ。

 別に一週間いなくても構わないのだが、あいつは家の方がいいのだろう。

 帰りはJRの駅まで送ってくれるらしい。

 チケットも用意するとのことだったが、俺がお世話になるのだからと断った。

 土産は銀座鈴屋の栗を持たせよう。

 俺も喰いたい。



 



 その晩、家に帰り、皇紀に旅行を受けた話をする。

 

 「タカさん、すみません」

 「何で謝るんだよ。楽しんで来いよ」

 不安そうな顔をしている。


 「お前、女の扱いはこないだ教えたよな」

 「はい」

 「そういう場面になったら、楽しめ!」

 「はい!」

 男の子だなぁ。


 亜紀ちゃんがまた風呂に入って来た。


 「皇紀が彼女の別荘に行くぞ」

 「はい、聞きました」

 「軽井沢らしいなぁ」

 「えぇー!」

 「なんだよ」

 「私たちも行きましょうよー」

 「なんでだよ」

 「だってぇ。あの温泉良かったじゃないですかー」

 「無茶言うな!」


 「ほら、皇紀が大人になっちゃうのか、見たくないですか?」

 ちょっとだけ興味をひかれた。


 「そんなこと言っても、今から予約はもう無理だろう」

 「分かりませんよ」

 「それに、あのホテルの近くとは限らねぇ。軽井沢ったって広いんだしな」

 「ちょっと確認してみます!」

 亜紀ちゃんは風呂から上がった。

 カワイラシイお尻を眺めた。


 風呂から上がると、亜紀ちゃんが自分のノートPCを持って待っていた。


 「タカさん! 予約取れますよ!」

 そのようだった。


 「それに皇紀に聞いたら近くですって!」

 「マジかよ」

 「マジマンジ」

 「でも、双子はどうすんだよ」

 あの暴走列車たちを、二人で置いていくわけにはいかない。

 亜紀ちゃんはニヤリと笑い、またPCを見せてきた。

 翡翠の間が空いていた。

 7名まで泊まれるらしい。


 「栞さんも誘いましょうか!」

 しょうがねぇ。

 まあ、亜紀ちゃんと二人きりでなく、良かった。






 丁度土日の予定で良かった。

 皇紀に土産を持たせ、送り出してから俺たちも出発した。

 もちろん、皇紀には内緒だ。

 栞をピックアップする。

 四人とも上機嫌だった。


 「おい! 一つだけ言っておくが、食事は食べ放題じゃねぇからな! 節度だぞ、せ・つ・ど!」

 「「「はーい!」」」


 「石神くん、楽しいね!」

 助手席で栞が言う。

 俺にベタベタと触って来る。

 時々、スッと股間を撫でて俺を見る。

 まあ、楽しいらしい。


 「それと! ホテルにはテレビも何もねぇ。だから皇紀の偵察以外は勉強か寝てるしかねぇぞ」

 「「「はーい!」」」

 「じゃあ、子どもたちが勉強している間、私たちはどーしよーかー?」

 栞が更に嬉しそうに言った。


 「寝てますよ」

 「ダメよ! 子どもたちが同じ部屋にいるんだからー!」

 栞が俺の腕を叩く。

 何か、非常に不安になってきた。


 「じゃあ、散歩とか」

 「そ、外でぇー! まあ、そういうのもいいかな」

 「……」





 その頃、皇紀は狭いワゴン車の中で、二人の女の子に挟まれて難儀していた。


 「皇紀ちゃん、今日は一緒に寝ちゃう?」

 「えー! そんなのありー!」

 「いや、それは」


 「ハッハッハ! 皇紀くんはモテモテだねぇ」

 葵の父親が笑っていた。

 もう、帰りたかった。

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