表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
星の家族:シャルダンによるΩ点―あるいは親友の子を引き取ったら大事件の連続で、困惑する外科医の愉快な日々ー  作者: 青夜


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

324/3163

風になろうぜ。

 「あー、キスの一つもできるかと思ったのにー」


 帰りの車で亜紀ちゃんがそう言った。


 「そうそう、娘にキスなんかするかよ」

 「えー」

 「むしろ亜紀ちゃんの年齢だと、親父のパンツを一緒に洗濯しないって感じじゃないのか?」

 「そんなことないですよ」

 「じゃあ、ちょっと俺のとくっつけて洗ってくれ」

 「分かりましたー!」


 俺はフェラーリを飛ばした。


 「お昼はどうしましょうか?」

 「亜紀ちゃん、いいことを教えてやる」

 「なんですか!」


 喰いついて来る。


 「あのな、大食いしながらキスはできねぇぞ」

 「あぁー! 台無しです」


 俺たちは笑い合った。


 俺たちは新宿の焼肉屋へ行った。

 去年、みんなで買い物へ行った時に使った店だ。


 「さあ、大食いを見せてくれ」

 「やめてくださいよ!」


 亜紀ちゃんは特上ロース5人前、カルビ8人前、テールスープ、ご飯を3杯食べた。


 「今日は松坂牛はいいのか?」

 「え、じゃあ一枚だけ」


 ステーキ1枚。


 「テールスープって、こんなに美味しかったんですね!」

 「お前ら、あの時は肉しか食わなかったもんなぁ」

 「残り物には福があるって奴ですね」

 「意味がちょっと違うと思うぞ」

 「いいんです。私も残り物だから」


 俺の女性関係を言っているのか。


 「いい福が残ってたな」

 「エヘヘヘ」


 亜紀ちゃんが嬉しそうに笑った。







 「「「おかえりなさいー!」」」


 皇紀と双子が出迎えてくれた。


 「みんなごめんねー。何もなかった?」

 「「うん」」

 「大丈夫だよ」


 亜紀ちゃんが俺の荷物を引き受けてくれる。

 俺はリヴィングに行き、ルーがコーヒーを淹れてくれた。

 軽井沢で買った土産の菓子を亜紀ちゃんが持ってきた。

 まあ、そんなに美味しいものはないが、双子は特に喜んだ。





 俺は一休みし、六花に電話をしてから、ドゥカティに乗って響子の顔を見に行った。


 「タカトラー!」


 響子が嬉しそうに抱き着いて来る。

 抱き上げて鼻をペロペロしてやる。


 「どうだった、六花のマンションは?」

 「うん、楽しかったよ」

 「何したんだ?」

 「うん、一緒に映画観たりね」


 ものすごく、不安になった。


 「ちょっとねぇ…」

 「ち、ちょっとなんだ!」

 「コワイの」

 「良かった」

 「良くないよー」


 『マッドマックス』を観たらしい。

 二人で映画の話をして盛り上がる。


 六花が来た。

 ライダースーツを着ている。


 「あー、二人で走るんだぁ!」

 「響子とセグウェイで走ったらな」

 「ほんとにー!」


 三人で、屋上で遊んだ。






 「じゃあ、響子。行ってくるな」

 「うん。今度またバイクに乗せてね」

 「ああ、また今度な」


 俺と六花は首都高を走り、戻って来て、また麻布のハンバーガー屋に行く。


 「やっぱ、ここに来ちゃうよなぁ」

 「もう、定番ですね」


 店長たちが大喜びで俺たちを迎えてくれた。


 「タケたちは変わりないか?」


 斬の家でのこともあり、気になっていた。


 「はい。昨日も電話で話しましたが、何も変わらないと言ってました。石神先生とまた是非来て欲しいと」

 「そうか。あそこも楽しいからなぁ」

 「はい!」


 「そうだ、今度は墓参りに行こう」

 「ありがとうございます」

 「しかし、今年のゴールデンウィークもいろいろあったな」

 「最初がアレでしたからねぇ」


 店長が電話している。

 珍しい。

 注文のハンバーガーが来た。

 食べていると、店が混んできた。


 「今日は結構混むな」

 「早めに入って良かったですね」


 食事時だ。

 そう思っていた。


 テーブルやカウンターがすべて埋まった。

 

 「なんか、みんなこっちを見てませんか?」

 「そうだな。お前が綺麗だからだろう」

 「石神先生がカッコイイからですよ」

 「「アハハハ」」


 立って喰ってる奴も出てきた。

 外には行列が並んでいる。


 「ちょっと長居すると悪いな。早めに出るか」

 「そうですね。急いで食べます」

 「あ、気にしないで、ゆっくりしていってください」


 店長が頼んでもいないハンバーガーを持って来て言った。


 「お飲み物も持ってきますね!」


 俺は異常さの原因を悟った。

 こいつ、何か仕込みやがった。


 「おい」

 「はい」

 「なんだ、これは」

 「はい」

 「何かしたな」

 「ちょっと、お待ちのお客様をお呼びして」


 問いただすと、俺たち目当ての客に知らせるライングループを作ったらしい。


 「パンダじゃねぇんだ。こんな雰囲気で喰えるか!」

 「すいません」

 

 まったく、動物は恥の概念がねぇ。

 俺は恥を知る人間だ。

 説教して、次からはせめてテーブルが埋まるまでにしろと言う。

 二度と来なければいいのだが、ここのハンバーガーは美味い。

 まあ、サービスしとくか。


 「おい」

 「はい」


 「そろそろ風になろうぜ!」


 「は?」


 後ろで大爆笑が起きた。

 俺は真っ赤になった顔を手で覆って隠した。

 俺たちは店を出た。


 「風になるって、どういうことですか?」

 「う、うるせぇ!」


 六花が笑いながら聞いて来る。


 






 風になった六花は、やっぱり綺麗だった。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ