夕食とジェラシー
鷹が調理を始める。
エビ、マイタケ、アスパラ、ゴボウ、鳥、牛肉、豚、タラ、イカ、の天ぷら。
鯛、マグロ、ヒラメ、甘海老の刺身。
茶碗蒸し、だし巻き卵、根野菜の煮物、タコの酢の物、カレイの煮付け。
ハマグリの吸い物にトマトサラダ。
それにキノコご飯とシソご飯。
結構な量だ。
それらを各々の器に盛っていく。
テンプラは盛りきれないので、二度に分ける。
大皿に出すと戦争になるので、一人ずつの盛り付けにした。
俺は刺身の盛り合わせと他の鷹の手伝い。
飾り包丁で赤カブを刺身に盛り付け、大根の桂剥きを千切りにする。
「石神先生、上手いですねぇ」
「まーなー!」
「初めての二人の共同作業ですね!」
「そーだなー!」
栞が睨んでいる。
流石に鷹は段取りがいい。
たちまちに、調理と盛り付けが終わり、食事が始まった。
鷹はキッチンでテンプラを揚げている。
「すごい美味しい!」
みんな大絶賛だった。
テンプラをどんどん食べ、ご飯を掻き込んでいく。
テンプラの素材ごとの温度管理が上手い。
最高の仕上がりになっている。
天つゆもいいが、塩で食べると抜群にいい。
煮付けや煮物の味付けも素晴らしい。
鷹も調理を終え、シソご飯を美味しそうに食べた。
「テンプラが多いので、シソご飯がいいですね!」
「そうだな。でも、全部美味いぞ! 鷹にお願いして大正解だったなぁ!」
「ありがとうございます」
栞が睨んでいる。
戦争のない、賑やかで温かな食事だった。
「鷹さんは、洋食も作れるんですよね」
亜紀ちゃんが聞いた。
「うん。作れないことはないけど、やっぱり家の矜持があるから」
「そうなんですか」
「でも、石神先生とみんなのためなら、腕を振るうよ!」
「アハハハ」
「アハハハ」
栞が物凄い顔で睨んでいる。
後片付けは子どもたちにやらせた。
シソご飯が少し残ったので、おにぎりを作った。
作っている間に、子どもたちが全部食べた。
六花はタクシーで眠そうな響子を送りながら帰った。
「じゃあ、鷹も送って行こうか。それとも、もう遅いから泊まっていくか?」
「いいんですか!」
「もちろん。これだけ美味いものを作ってくれたんだ。ゆっくりしてってくれよ」
「ありがとうございます」
鷹が嬉しそうに言った。
「じゃあ、私も泊まろうかな」
「花岡さんは近いじゃないですか」
「どーしてよー!」
物凄い顔で非難する。
「分かりましたよ。じゃあ一緒に泊まってください」
めんどくさいことになった。
花岡さんと亜紀ちゃんが一緒に風呂に入り、鷹は双子と一緒に入りたいと言ってくれた。
「皇紀くんも一緒に入る?」
「いえ!」
真っ赤になって、皇紀が言い、鷹が笑った。
「じゃあ、久しぶりに俺と入るか」
「はい!」
皇紀が俺の背中を洗ってくれる。
俺も皇紀の背中を洗う。
二人で湯船に浸かった。
「なあ、皇紀」
「はい」
「どうも、めんどくさいことになったなぁ」
「花岡さんと峰岸さんですか」
皇紀も、こういう機微が分かってきた。
まあ、自分も二人の同級生と付き合っているためだろう。
「ああ。なんか、お互いに対抗心を燃やしてるよなぁ」
「そうですね」
「お前ならどうする?」
「ええと。どっちかを選ぶとか?」
「それができねぇからこその、めんどくささだろう」
「そうですよね」
「お前だって、葵ちゃんも光ちゃんも選んでねぇじゃねぇか」
「まあ、選ぶ必要が無いって分かりましたから」
「どうしてそう思うんだ?」
皇紀が俺を指さした。
俺は皇紀の頭を沈めた。
「お前、初体験は済んだのか?」
「いえ、キスだけです」
「そうか。じゃあ、俺が女の扱いを教えてやろう」
「はい!」
「いいか、まずはなぁ」
物凄く盛り上がった。
風呂を上がり、子どもたちを寝かせた。
亜紀ちゃんだけは残る。
大人たちで、飲みながら話した。
栞は冷酒を。
鷹も冷酒に付き合う。
亜紀ちゃんは梅酒。
俺は今日はクラウン・ロイヤルを飲む。
「ちょっと言いたいことがあるんだけどさー!」
栞が言った。




