「紅六花」、出撃
俺たちは別荘から戻り、子どもたちは日常の生活に入る。
俺には、もう一つやることがあった。
夕飯後、亜紀ちゃんと話した。
「じゃあ、明日は一泊していないからな」
「はい」
「家のことは頼むぞ」
「はい。タカさんもお気を付けて」
早朝、俺はドゥカティに跨り、六花のマンションに行った。
六花はマンション前で既に待っていた。
「じゃあ、宜しく頼むぞ」
「はい。タケたちには連絡してます」
「うん」
俺たちは六花の故郷へ行く。
今日の9時には到着するはずだ。
そのまま、みんなで群馬に行く。
長距離のドライブだが、六花の意気は高まっている。
「総長!」
タケが俺たちに駆け寄ってきた。
「おう! みんな集まってるようだな!」
「はい! 総長たちのお越しをお待ちしてました!」
タケの食堂の広い駐車場に、多くのバイクや車が集まっている。
現「紅六花」のメンバーだった。
総勢、約50名。
メンバーはもっといるが、今日は中心的な連中が集まった。
みんな純白の特攻服を着ている。
「紅六花」のチームスーツだ。
全員の前に、六花が立った。
「みんな! よく集まってくれた! 今日はあたしの大事な方と一緒に行くぞ!」
『オォーーーーゥ!』
大きな怒号が響いた。
みんな、事情は分かっている。
俺に銃弾を浴びせ、響子と六花を殺そうとした死王へのケジメだ。
死王は既に日本にはいない。
だから、裏で糸を引いていた花岡斬へケジメを取らせる。
最初は俺一人で行くつもりだった。
しかし、六花がそれを止めた。
「あたしを、「紅六花」を使ってください」
俺は六花に、今後の禍根を断つという話をしたことを後悔した。
詳しい事情を知っている六花に、安心してもらうために話した。
「お前はともかく、「紅六花」まではまずいだろう」
「いいえ。あの仲間たちは、きっと石神先生の役に立ちます」
「危険なことになるかもしれん。死人が出てもおかしくねぇんだ」
「分かってます。宇留間とは比べ物にならないバケモノですよね」
地下の惨状は、俺が六花に真実を話していた。
俺は丹沢の山の一部を買った。
そこで子どもたちと一緒に、「花岡」の技を研究した。
同時に、必要はないかもしれないが、サバイバルと戦闘訓練も交えた。
子どもたちは驚異的なスピードでそれを吸収する。
そして、ついに花岡を超えるものを双子が生み出した。
すべては、いつか来るであろう死王への対策だった。
六花は途中から参加してもらい、訓練をした。
まだ子どもたちのようには行かなかったが、才能は認められた。
「あたしは今後、「タイガー・レディ」を名乗る! あたしの大事な方のことは「虎」と呼べ!」
「おい、聞いてないぞ」
六花は無視して俺に熱烈なキスをする。
大歓声が沸いた。
出発前に、タケの食堂でみんなで腹ごしらえをする。
俺はタケと小鉄にチャーハンの作り方を教えた。
「いいか、ポイントはラードだ」
「え、そんなものなんですか?」
「見てろよ!」
俺はラードを水を入れた中華鍋に入れる。
「そのままじゃねぇんだ。こうやって熱したラードが溶けていく。その上澄みを掬うのな」
「なるほど!」
「贅沢なやり方だけど、こうすることで上質なラードが分離できる。やってみろよ」
そのラードを使ってチャーハンを作る。
「あ、ほんとだ!」
「美味い! この味だ!」
タケと小鉄がじゃんじゃんチャーハンを作り、みんなに振る舞う。
「「虎」の旦那が秘伝を教えてくれたんだ!」」
『オォーーーーゥ!』
また大歓声が沸く。
腹ごしらえは終わった。
俺たちはマシンに火を入れ、斬の屋敷へ向かった。




