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星の家族:シャルダンによるΩ点―あるいは親友の子を引き取ったら大事件の連続で、困惑する外科医の愉快な日々ー  作者: 青夜


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顕さんの別荘 Ⅱ

 夕食は、当然バーベキューだ。

 俺は皇紀を連れて、前に行ったスーパーに行く。

 店長さんが来た。


 「石神様、お久しぶりです!」


 覚えていてくれたようだ。

 俺たちはまた大量に買い物をし、そのカートを店長さんたちが引き受けていく。

 俺たちのためのレジが開き、優先して会計をさせてもらった。

 買い物の大量の荷物を車まで運んでくれ、俺たちは見送られて帰った。


 「夏に、また来ますね」

 「心よりお祈り申し上げます」


 別荘に戻り、みんなでバーベキューの準備をする。

 慣れたもので、食材のカットや下ごしらえは早く終わり、子どもたちは勉強を始めた。

 ルーとハーも包丁の使い方は抜群で、大体の料理を任せられる水準だ。

 亜紀ちゃんと皇紀は言うまでもない。

 他の家事も全部できる。

 全員が、いつでも独り暮らしができるようになっている。

 ついでに言うと、サバイバルの訓練もしている。

 俺は丹沢山系の一部を買い取り、「密かに」子どもたちと出掛けていた。


 十二分の成果を出していた。





 夕暮れになり、俺は顕さんを起こしに行く。

 子どもたちには、バーベキューの支度をさせた。


 「顕さん、そろそろ夕食です」

 「ああ、本当に寝てしまったな」

 顕さんは着替えることなく、ベッドに寝ていた。


 「大丈夫ですか?」

 「ああ、お陰でスッキリしたよ」

 俺は洗面所を案内し、下で待ってますと伝えた。

 全然、スッキリした顔ではなかった。

 しかし、俺は黙っていた。


 「いいかーお前ら!」

 「「「「はい!」」」」

 「今日も俺の一番大事なお客様の顕さんがいらっしゃる!」

 「「「「はい!」」」」

 「前回と同様だ! 顕さんが召し上がるのを邪魔しやがったら、縛って木に吊るすからな!」

 「「「「はい!」」」」

 「万一、顕さんに攻撃なんかしやがったら、お前らを焼いて喰うからな!」

 「「「「はい!」」」」


 「まあ、お前らの喰いっぷりは顕さんも楽しんでくださる!」

 「「「「はい!」」」」

 「お前らも存分に喰え!」

 「「「「はい!」」」」

 「いただきます」

 「「「「いただきまーす!」」」」


 俺は次々と食材を網に乗せていく。

 子どもたちは目を光らせながら、俺の合図を待っている。


 「串には刺さないんだね」

 「はい。串が武器になるもんで」

 「な、なるほど」

 顕さんは納得された。


 「よし、いいぞ!」

 一斉に手を伸ばして来る。

 誰が何を狙い、どういう動きで来るのかを、互いに読み合っていた。

 双子にはさまれた時点で、皇紀は肘が飛んでくることを読んでいた。

 皇紀は左側のハーの肘をかわしながら膝の後ろを蹴り、地面に座らせる。

 驚いたのは亜紀ちゃんも皇紀の右にいたルーに同じことをやった。

 亜紀ちゃんと皇紀が共同戦線を張っている。

 双子の連携に対する同盟だ。

 最初は双子も動揺していたが、すぐに共同戦線を張り、戦術の読み合いになっていった。


 顕さんは前回も見ているが、やはり子どもたちの攻防を心配そうに見ている。

 俺は、大丈夫ですからと言い、顕さんの皿にいい肉を乗せていく。

 顕さんは、それほど召し上がらなかった。

 分かっていた。

 ビールも1本だけだ。

 酒が好きな方だった。

 あとは楽しそうに子どもたちの大食いを見ておられた。


 俺は鍋を火にかけ、顕さんにカップを渡す。

 家で作ってきた、コンソメスープだった。


 「ああ、これは本当に美味いな!」

 顕さんも感動してくれた。

 飲んでから少し食欲が出て来たのか、時々網から取られた。


 大量の食材が、いつも通り肉食獣の腹に消えた。





 辺りはすっかり暗い。

 顕さんに最初に風呂に入ってもらい、俺たちも済ませた。

 俺は梅酒の瓶を抱え、亜紀ちゃんや皇紀に氷とグラスを持たせる。

 屋上に上がった。






 その光景を見た瞬間、顕さんが泣き出した。


 双子が背中に手を回し、顕さんを席につかせた。

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