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星の家族:シャルダンによるΩ点―あるいは親友の子を引き取ったら大事件の連続で、困惑する外科医の愉快な日々ー  作者: 青夜


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愛のライダース

 月曜日。

 いつものように、一江の報告を聞いていた。


 「先週も今週も何の問題もないな!」

 「はい」


 「おーす!」

 俺は窓の外の部下たちに手を上げる。


 みんな片手を上げるが、半分くらいは棒飴を咥えている。

 響子の在庫処分だ。

 数週間が経ったが、まだ引きずっていた。





 「ところで部長」

 「あんだよ」


 「先週も六花と一緒に走ったんですか?」

 「いや、先週はうちの子どもたちを乗せてな」

 

 「はい?」



 俺は新しいバイクが嬉しくて、一生懸命に一江にその時の様子を話した。



 「なに、短時間だけどな。ああ、亜紀ちゃんとはちょっと長くて、羽田まで行ったんだよ。また綺麗だったなぁ」


 「ちょ、ちょっと待ってください! また来ます」


 「お、おーう!」





 一江が自分のPCとスマホで何か検索している。

 数分が過ぎた。



 「ぶちょー!」


 「なんだよ!」


 「また、こんなことになってますってぇ!」

 「へ?」


  スマホの画面を見せられた。




 ≪みんな見て見て! ライダースーツの美しきカップル降臨!!!≫




 展望デッキで肩を寄せ合っているライダースーツの男女がいる。


 動画だ。


 俺の声がはっきり聞こえる。


 「愛を語る美男美女にうっとり、ですって!」


 「はい?」


 「二人はどこまでも走り続けるんでしょう、ですって!」


 「いや、すぐに家に帰ったけど?」





 「部長、本当にいい加減にしてくださいね!」

 「悪い」


 「全然反省してないじゃないですかぁ!」

 「おっしゃるとおりで」


 一江が俺の脳天にチョップを入れた。


 「てめぇ!」


 後ろを向いて窓の向こうにガッツポーズをする。

 部下たちが「おおーぅ」と唸って小さく拍手をした。

 俺はその尻を蹴った。







 拡散はしないが、関係各所に通達すると言われた。

 要はいつものメンバーに教えたいだけだろう。


 しかし、文句の言える俺ではなかった。








 響子の部屋に行く。


 やっぱりタブレットで見てた。




 「ターカートーラー!」

 響子が腕を組んで、俺を睨んでいる。

 なんかカワイイ。



 「浮気したのね!」

 「ちょっと待て、亜紀ちゃんだって!」


 「石神せんせー」

 六花が泣いている。


 「どうしたんだよ!」


 「私の「お仕事」なのにぃー」


 「お前の仕事は響子の世話だろう!」


 マジ泣きしている。




 「だから、子どもたちを順番に乗せてだな。最後に亜紀ちゃんと羽田に行っただけだよ」


 「でも随分といい雰囲気だよね!」

 「それはこの画像だけ見ればそうかもしれんが」


 「石神先生! 今晩一緒に羽田に行ってください!」


 「やだよ!」



 また六花が泣く。





 「分かったよ! お前とはまた週末にいい所へ行こうな!」


 「ぼんどでずがぁー」


 「ボンドだよ!」




 「私も行きたいー!」

 

 「ほら、響子とはセグウェイ・ラヴァーズじゃねぇか!」


 「でもー」


 「響子とは是非、セグウェイで愛を語り合いたいものだよな」


 「うん」


 なんだ、この誤魔化し感は?







 栞から内線が来た。


 「石神くん、今日は私ちょっと遅めの昼休みなんだけど、一緒に出れないかな!」


 「分かりました。じゃあ「ざくろ」で」


 「うん、あと十分で出るから!」


 俺が支度して部屋を出ると、一江が「ひっひっひ」と笑っていた。

 一江の椅子を蹴り飛ばし、床にしりもちをつかせた。




 


 「あのねー、あれって亜紀ちゃんでしょ?」


 「そうです。分かってるなら何でそんなに怒って」



 「石神くん! 亜紀ちゃんに告白させたでしょう!」


 「!」






 「もう! やっぱりそうじゃない。どうするのよ、これから」


 「どうするって、今まで通りですよ。それより、花岡さんって亜紀ちゃんの気持ちに気づいてたんですか?」


 「当たり前よ。見てれば分かります! 石神くんはずっとお父さんのつもりだったから分からなかったのかもしれないけど」




 そんなことは無かった。

 でも、人を好きになることは止められないし、そうするべきでもない。




 「亜紀ちゃんは苦しかったと思うよ」

 「はい」


 「でも、石神くんに恩義を感じてるから」

 「はい」






 「まあ、告白して、かえって良かったのかな」

 「どうでしょうね」


 「もう! 他人事じゃないんだからね!」




 俺はしゃぶしゃぶを食べながら説教された。




 「何人もの女から動物まで。今度はロリ?」

 「いや、そんな」


 「次はホモかぁ。あ、岡庭くん!」


 「勘弁してください」



 栞は少し笑った。







 「石神くんの周りって、本当に集まってくるよね」

 「そんなことは」


 「それで、みんなが石神くんを好きになるの。それはどうしようもないけどね」


 「……」



 


 「亜紀ちゃんを大事にしてね」

 「それはもちろん」


 



 「私のこともね」



 「任せて下さい」









 栞は美しく笑った。

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