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星の家族:シャルダンによるΩ点―あるいは親友の子を引き取ったら大事件の連続で、困惑する外科医の愉快な日々ー  作者: 青夜


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二度目のクリスマス

 来週はクリスマスだ。


 去年は結構高価なプレゼントをみんなに渡したが、今年は岡庭の結婚式などもあり、非常に忙しかった。


 押し流されて、誕生日会もやった。


 どうだ、やらなくていい理由は揃ったんじゃないか?


 俺は家長として宣言した。


 「いいか! 今年はクリスマスの祝いはやろう。だけどプレゼントは用意しない。いいな!」


 「「「「はい!」」」」


 あれ? 

 ちょっとは反発や文句が出るかと思ったが。

 まあ、ないならそれでいい。


 こころなしか、子どもたちが笑顔でいる。

 おかしい。

 まあ、いいか!







 食材の準備はした。

 まあ、それも去年のような豪華版ではない。

 あいつらの喰い散らかしは、別に高級なものでなくても良かった。

 それなりのグレードではあるが。

 俺がいいものを喰いたいだけだ。


 去年は七面鳥は不人気だった。

 だからチキンをまるごとローストする。

 10羽。

 それと、ローストビーフを大量に用意した。

 俺も手を出すが、基本的に子どもたちに手伝わせた。



 ローストビーフの味見に、双子が絶叫して喜ぶ。

 

 あとは去年と同じく、大量のカナッペ。


 それと恒例の鍋は、カニだ。

 幾つもの頂き物で、相当な量のカニが集まった。



 それと、子どもたちの切望で、また辰巳芳子のコンソメスープを作らされた。

 今回は寸胴でやったから、本当にめんどくさかった。




 それと、スペイン大使館でのクリスマス・パーティに誘われていたが、家族で過ごすと断ったところ、大使のサンチェスからまたハモンセラーノを頂いてしまった。

 子どもたちと、楽しく過ごして欲しいというカードに感動した。



 これだけ揃えば、プレゼントのことも、少しは勘弁してくれるだろう。





 パーティには響子、六花、栞も誘った。


 



 当日の三時に全員が集合し、パーティ開催。


 うちのでかいオーブンがフル稼働で出した成果のローストビーフは、大絶賛だった。

 六花は5センチほどの厚さの肉にむしゃぶりついていた。


 俺は響子にも少し切り分けてやる。


 「美味しい」


 笑顔で俺を見てくれた。

 

 子どもたちには、1センチほどで切る。

 すぐに食い終わって空の皿を出してくる。

 わんこローストビーフだ。

 俺は面倒になって、あとは自分たちで好きなように喰えと言った。


 すぐに食い終わり、ローストチキンも3羽ほど無くなった。



 メインのカニ鍋は、予想外の事態になった。


 カニを喰うのに、みんな一定時間を取られていた。

 前にもカニ鍋はやったが、その時はまだ異常な食欲ではなかったので、気付かなかったのだ。


 身を穿り出す手間があるため、いつもの戦争状態にならない。



 てっきり、皇紀がカニの爪で攻撃されるのかと思っていたが、みんなニコニコしながら食べている。


 「美味しいね」


 ハーが会話している。




 


 うちで初めて鍋らしい雰囲気が味わえた。


 最後にコンソメを配り、また大絶賛される。


 いい雰囲気じゃないか。


 俺は調子に乗って、『ホワイト・クリスマス』を熱唱した。






 うちで初めて、食材が余った。

 




 「さて、じゃあケーキでも切るか」


 俺が言うと、全員が立ち上がり、俺に座っていろと言う。


 亜紀ちゃんと皇紀が出て行って、リボンのかかった大きな箱を二人で抱えて来る。


 響子が俺をニコニコと見ている。




 「タカさんにプレゼントです!」

 亜紀ちゃんの声に合わせ、全員がクラッカーを鳴らした。


 「「「「「「「メリークリスマス!」」」」」」」



 双子がかぶせのフタを取った。





 驚いた。





 ブロンズの、全長50センチほどのフェラーリ・スパイダーだった。


 しかもタダモノじゃない!


 運転席には俺と思われる男が座っており、その周辺だけが滑らかな、本来のフェラーリだ。

 しかし、それ以外の部分はゴツゴツとした、荒々しい仕上がりになっている。


 色はブロンズの黒が基調だが、俺の周辺だけは俺のフェラーリの赤が塗装されている。


 見事な芸術だった。




 「おい、これは」


 「みんなで作りました。毎日、タカさんに隠れて作るのは大変だったんですよ。ゴールドのいた部屋でやってたんです。気付かなかったでしょ?」

 亜紀ちゃんが説明してくれる。


 「響子ちゃんも、このエンブレムを作ったんですよ。あ、ここには来てません。病院で作ったものを私たちで取りに行って、はめ込んだんです。六花さんはハンドルを。栞さんはホイールを。他の部分とタカさんはルーとハーで。私と皇紀はスベスベの部分を担当です。塗装は私がやりました!」



 「みんな……」


 不覚にも耐えられなかった。

 宇留間にやられて以来、どうも涙もろくなったような気がする。


 「タカトラ、泣いてるの?」

 俺は響子の腹に顔を埋めた。


 「よしよし」

 頭を撫でられる。


 「「「「「「やったぁーーーー!!!!」」」」」」


 全員が叫んだ。

 やられた。

 たしかに。





 落ち着いて、ブロンズを見る。

 本当に素晴らしい出来だ。

 うちの子らは天才なのかもしれない。



 「この全体のデザインは誰が決めたんだ?」


 「ルーとハーです」

 

 「スゴイな、本当に」

 二人を抱き寄せて、頭をグリグリしてやる。


 

 


 「今日は誰と寝るのかな?」

 栞が楽しそうに聞いてきた。


 「そうですね、もう全員で寝たいですね」

 「じゃあ、そうしよう!」




 みんなで俺の部屋に、亜紀ちゃん、皇紀、客室のダブルベッドを運んだ。


 夜中まで大騒ぎし、みんなで寝た。







 忘れられないクリスマスになった。

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