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星の家族:シャルダンによるΩ点―あるいは親友の子を引き取ったら大事件の連続で、困惑する外科医の愉快な日々ー  作者: 青夜


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岡庭くん、結婚します! Ⅲ

 広い披露宴会場だった。


 既に岡庭と新婦の親族が大勢席に着いている。

 8人掛けの丸テーブルが、数え切れないほど用意されていた。


 「石神! こっちだ」


 ひな壇の目の前の席だった。

 俺は御堂と栞に挟まれ、丁度ひな壇を正面に見る席だった。


 「まいったな、これは」


 通常は主賓が座るべき配置だ。

 岡庭の家は地方の有力者だから、国会議員レベルで出席者がいるはずだった。

 それらしい人物が、近くの席にいる。



 「なんかスゴイ席だよな。こんなんじゃ酔っ払ってられないよなぁ」

 同期の連中が口々に言う。


 俺たちは始まるまでの間、懐かしく話した。





 いよいよ式典が始まり、新郎新婦が入場した。

 司会は俺もテレビで知っている人間。

 名前は知らねぇ。



 「まーこーとー!」

 「こんぐー!」


 新婦側の席からでかい声で女性たちが叫ぶ。

 見ると、みんな身体が大きい。


 新婦が笑って手を振った。

 岡庭も手を振っている。

 俺は後ろを振り返った。

 誰に手を振ったんだろう?


 新郎と新婦の身長差は30センチというところか。

 体重差は50キロくらい。

 でかい新婦だった。





 新郎の紹介、新婦の紹介。


 新婦は女子プロレスラーだった。


 「あ、コングまこと!」

 栞が言った。


 「あのね、一時有名になったレスラーなの。ヒールだったけど、結構強かったのよ」

 説明してくれる。

 そーなんだ。


 岡庭はともかく、新婦の紹介が凄かった。


 「新婦は成績優秀で、気立てがよく学校でも友人が多かったそうです」


 写真は新婦が真ん中でロングのスカートで大股を開いて座り、周囲は茶髪の連中だった。

 バットを担いでる奴もいれば、明らかに高校生でタバコをくわえてる奴もいる。


 「卒業後、女子プロ団体○○に所属し、一世を風靡するスター選手となりました」


 写真はドレッドヘアーにした新婦がフォークで相手選手の額を抉り、激しく流血させている。


 「しかしその後、新郎と運命の出会いをし、ここにめでたく夫婦として……」


 会場で拍手が沸いた。

 先ほどの女子プロの仲間らしい連中が絶叫している。






 「なんか、すごいな」

 「うん」

 「そうだね」


 来賓の長い長い挨拶の数々が終わり、豪華な食事が配られ、乾杯。


 俺たちは楽しく話しながら、食事を楽しんだ。



 俺は御堂やテーブルの仲間を連れて、早目にひな壇へ行く。


 「岡庭おめでとう! グアム以来だけど、元気そうだな」

 「いしがみくーん!」

 

 「お前、何泣いてんだよ。しっかりしろよ」


 新婦が俺をすごい目で睨んでいる。


 「あ、奥さん。石神といいます。岡庭とは同級生で」

 「よく知ってる」


 ドスの効いた声で言われた。

 俺は他の人間に挨拶を譲り、退散した。


 何度もお色直しが入り、最後は岡庭がウェディングドレスを着て、新婦がタキシードという趣向だった。

 初めて見た。

 岡庭が嬉しそうに俺を見た。






 4時間にも及ぶ披露宴が終わり、俺たちは岡庭が用意してくれた二次会の会場へ移る。

 最初に食事をした1階のレストランだった。



 新郎新婦の親しい友人たちだけの、気楽な会だった。


 岡庭はスーツに着替え、新婦は真っ赤なドレスで現われた。




 通例のビンゴ大会があり、俺は新巻鮭を手に入れた。

 

 「子どもたちが喜ぶぜ!」

 「もうすっかりお父さんね」

 栞に皮肉を言われたが、気分がいい。





 楽しく飲み食いしていると、新婦とその仲間たちが近づいて来る。


 「おい、石神」

 「なんだ?」


 「ちょっと面貸せ」

 「あ?」


 岡庭が、女子プロの仲間に羽交い絞めにされている。

 ふざけているのかと、俺たち以外は気付いていない。


 俺は騒ぎを起こしたくないので、一緒に付いて行った。

 栞と御堂もついてくる。





 ホテルの裏庭に行く。


 「お前、俺の旦那が惚れてる男らしいな」

 「はい?」


 「許せねぇ! 俺がボコボコにして旦那の前に持ってってやる!」


 何のことか分からない。

 しかし、百キロ近い巨漢が迫ってくる。

 しょうがねぇ。


 タックル狙いだ。

 プロレスラーらしい。


 俺はタイミングを合わせ、後ろに飛びのきながら膝を顔面に入れる。

 しかし新婦はそのまま俺の腰に手を回そうとした。

 すごいタフさだ。


 俺は膝を伸ばし、絡めて新婦の背に乗った。

 延髄に拳。


 新婦は地面に突っ込んだ。

 起き上がる。

 俺は驚いた。


 女たちが怒号をあげ、喝を入れる。


 女がパンチを放ってくる。

 遅い。

 俺は肝臓に蹴りを入れた。


 身を折ったところで、もう一度顔面に膝。

 俺の腕を掴んでくるので、もう一度膝。


 右脚を刈り込んで正座させ、俺は新婦の頬を平手で殴り続けた。

 意識が無い。


 俺は髪を掴み、地面に寝かせた。


 女たちは呆気に取られている。


 「つ、つえぇー!」


 


 岡庭が駆け寄ってきた。


 「石神くん! 無事?」

 「ああ。だけど悪かったな。いきなり奥さんが突っかかってきたもんだから」

 「うん、いいんだ。ごめんね」


 「まことちゃん!」

 岡庭が新婦を呼ぶと、起き上がってきた。

 タフだな。


 二人は泣きながら抱き合った。










 なんかよく分からんけど、いい話? 

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