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星の家族:シャルダンによるΩ点―あるいは親友の子を引き取ったら大事件の連続で、困惑する外科医の愉快な日々ー  作者: 青夜


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美しい姉妹 Ⅲ

 六花のマンションに着き、俺は一緒に中に入った。


 「綺麗なマンションですね」


 風花が感動している。


 俺はそのまま帰っても良かったのだが、気になることがあった。

 もちろん、六花のろくでもないもののことだ。


 俺の指示で、一応ちゃんと仕舞うようにはなったが、油断はできない。

 折角姉妹仲良くなったというのに、一瞬で破壊されてたまるか。


 


 しかし、マンションの中は綺麗に整理され、ちゃんとフタされていた。


 「じゃあ、俺は帰るな」


 六花が俺の服を掴んでいる。


 「帰らないでください!」


 風花が見ている。


 「おい、ふざけるな。今日は姉妹で一緒に過ごせよ」

 「お願いですからぁー」


 涙目で見る。



 「取り敢えず、風花に荷物を置かせろ。疲れてるだろう」

 「はい。あ、すぐにお風呂を沸かしますね!」

 「ああ、そうしてやれよ」


 「じゃあ、一緒に入りましょうね!」

 「……」


 俺じゃねぇ。

 こいつ、緊張から逃れるために、違う世界へ行こうとしている。



 「とにかく、風呂を沸かせ」

 「はい!」






 俺が風花を部屋へ案内する。

 なんかおかしいだろう。


 「石神さんは姉と恋人同士なんですか?」

 「ああ、まあね」

 「そうだろうとは思ってましたが」


 「やっぱり年が離れているし、おかしいかな」

 「そんなことはないです!」


 必死に否定してくれる。


 「石神さんはステキな方ですし、姉も幸せそうです。今後とも、姉をよろしくお願いします」

 「ああ、任せてくれ」


 俺は、六花が呼びにくるから、のんびりしてくれと言い、部屋を出た。

 風呂場を見に行く。


 


 六花が裸になっていた。


 

 「お前、何やってんだ?」

 「あ、お風呂に入ろうかと」

 「風花のためだろう!」

 「あ、そうだ」



 大分混乱している。

 仕方がないので、俺は風花を呼んで六花が一緒に風呂に入ろうと言っていると伝えた。


 俺はそのまま帰った。

 何か、名前を呼ばれた気もしたが、無視した。










 翌日、俺は響子の病室に来ていた。

 間もなく、六花が風花を連れてくるはずだ。


 「六花の妹って、どんな感じ?」

 響子が俺の膝に乗って聞く。


 「六花と同じでとても綺麗で、それに同じく優しい人かな」

 「ふーん」


 「前にも話したけど、生まれて間もなく母親が死んで、施設で育った。でも本当にいい子だよ。苦労をした分、人に優しいし、今勤めている会社の社長さんにもの凄く感謝していて、自分が幸せになるよりも、恩義を返したいって言ってた。な、いい人だろ?」


 「うん」

 響子が明るく笑い、俺を見た。

 基本的に、響子は六花が大好きだ。

 だから、その妹にも興味を持っている。




 足音がした。

 六花と風花が入ってきた。

 響子は俺の膝から降りる。


 「響子、私の妹の風花です」

 「初めまして、響子ちゃん。風花です」


 「私がタカトラのヨメの響子です!」


 やるとは思ったが。

 六花と風花が微笑んでいる。

 きっと六花が響子がそう言うことを教えていたのだろう。



 「風花も、本当に綺麗」

 「ありがとう」


 風花は、響子に小さな包みを渡した。


 「これは響子ちゃんに買ってきました」

 「ほんとにー?」


 響子が喜ぶ。


 「私、あんまりお金がなくて、高いものじゃなくて」

 「いやいや、響子にまで気を使ってくれて、ありがとう」




 響子は包みを開く。

 虎の小さなストラップだった。


 響子は大喜びした。


 「後でスマホに付けてあげる」

 六花が言った。


 「ありがとうございます」

 響子は頭を下げて礼をした。

 日本式の感謝の仕方を学んでいた。



 しばらく話をし、俺たちは帰った。


 「風花、今日はほんとうにありがとう」


 響子が笑顔でそう言い、手を振った。






 廊下を歩きながら俺たちは話す。


 「風花、響子にありがとう」

 「いいえ、私も響子ちゃんに会えて良かったです」


 「響子は多分、長いこと病院から出られないし、一生ほとんどベッドで過ごすことになる」

 「そうなんですか……」


 少し驚いているようだ。


 「親はアメリカで、滅多に響子には会いに来れない。普段は俺や六花が病院にいるけど、夜や特に土日は一人だ」

 「はい」


 「あいつはいつも窓を見ているんだよ」

 「はい」


 「俺たちが、外にいるからな」

 「……」






 「六花は、それを知っているから、休日なのに響子のところへ来ていることもある。まあ、俺は基本的に辞めろと言っているんだけどな」

 「お姉ちゃん」


 「でも、辞めろと言われて辞めないっていうのは、俺は大事なことなんじゃないかと思う」

 「そうですね」


 「人生は間違ってたっていいんだ。結果的に人に迷惑をかけたり、悲しませてしまうこともある。でも、それでもいい。それが人生だよ」

 「はい」


 「もしも風花が間違って、困ってしまったら、必ず六花も俺も助けるからな。だから思い切りやってくれ」

 「はい! 分かりました」





 「石神先生、ありがとうございます」

 「何でお前が礼を言うんだよ」

 俺は笑って頭を撫でてやる。





 二人は、このまま東京見物だ。

 コースは俺が作ってやった。

 レストランも俺が予約してやった。


 昨日に比べ、六花は緊張を解いていた。

 まあ、あいつは裸になれば素晴らしい奴だからなぁ。










 今晩は、俺の家ですき焼きパーティだ。

 楽しみにしていろ、風花。

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