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星の家族:シャルダンによるΩ点―あるいは親友の子を引き取ったら大事件の連続で、困惑する外科医の愉快な日々ー  作者: 青夜


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スイーツ・ファイター

 最近、響子の食欲が増した。


 今日はカレイのムニエルにチキンライス。


 全部食べた。


 俺と六花は拍手する。


 「ありがとー」

 

 響子が片手を振って応える。


 「ケプッ!」


 カワイイ。




 「おい」

 「なんですか」

 「気のせいか、ちょっと太ったんじゃねぇか?」

 「そうですねぇ」


 響子の顔がふっくらしてきたような気がする。

 食べたばかりのせいか、お腹がぽっこりしている。


 胸は……ねぇ。

 安心した。





 「体重はいつ測った?」

 「二週間前です」

 「よし、今日測るぞ。データを用意しとけ」

 「はい!」



 俺は響子を抱いて、健康管理室へ行った。

 明らかに重い。




 「身長140センチ。体重25キロ」


 「おおー!」

 俺と六花は喜んだ。

 身長はアメリカ人のせいで高いのは元々だが、体重は20キロそこそこしかなかった。

 しかし、二週間で5キロも増えている。


 「体重が4800グラム増えました!」

 「やったな、響子!」


 響子が嬉しそうに笑う。


 「最近ね、食べるのが好きなの」

 「そうか」


 俺と六花は早速、響子のメニューを再検討し、オークラの調理場へ伝えた。





 二週間後。


 響子がイベリコ豚のカツ丼を食べている。

 箸の使い方が上手くなった。

 丼を掻き込む様子なぞ、日本人そのものだ。


 「あー、ちょっと足りないかな」

 六花がバナナを剝いて手渡した。


 もりもり食べながら、指を一本立てる。

 もう一本ということか。


 「ゲッフ!」



 「おい」

 「なんですか」

 「気のせいか、ちょっと太ったんじゃねぇか?」

 「そうですねぇ」



 顔がぼってりしている。

 食べたばかりのせいではなく、お腹がいつもぽっこりしている。


 胸は……ねぇ。

 「……」





 おかしい。

 食欲があるのはいい。

 大変にいい傾向だ。

 しかし、俺たちの考えるメニューでは、こんなに太るはずはねぇ。





 六花に問いただした。


 「何か間食をやってるか?」

 「いいえ。決まったメニューの食事と、おやつも決まった通りに出してます」

 「そうかぁ」


 一応、病院の栄養管理士もメニューを確認している。

 今まで、栄養管理士から訂正が入ったことはない。

 俺たちのカロリー、栄養素の計算は完璧だ。






 体重は15キロ増え、40キロになっていた。






 俺の部屋まで運ぶのがきつい。

 

 「おい、響子。自分で歩け」

 「いやー」

 俺の首に抱きついて離れない。


 


 膝に乗られていると、足が痺れてくる。

 体力がついたせいか、なかなか眠くなってくれなくなった。



 「大森! 替われ!」

 「はい!」

 「いやー」

 俺の首に抱きつく。




 俺は我慢できず、響子を病室に戻し、眠らせた。

 イビキをかいている。



 「おい」

 「はい」

 「ニセモノじゃねぇか?」

 「何言ってるんですか!」





 分からない。

 何かの病気か?

 





 「石神先生!」

 売店のおばちゃんが、食堂へ行く俺を呼び止めた。


 「ああ、なんですか?」

 「あのさ、ちょっと口止めされてるんだけど」

 「はぁ」

 「先生の患者さん、あの響子ちゃんね」

 「響子がどうかしましたか!」




 「いや、あのね。こないだから大量に棒飴を買っていくんだよ」

 「はい?」


 「ちょっと半端な量じゃないからさ。一応先生に話しておかないとと思って」

 「どれくらい買ってるんですか?」

 「二日に一箱。50本だよ」

 「……」


 「子どもが甘いものが好きだっていってもさ、ちょっと食べすぎなんじゃないかな」

 「ありがとうございました」


 「いや、響子ちゃんは他にも一杯買ってもらってる、超お得意だからね。黙っててくれと言われてたんだけど」

 「他にもあるんですか?」


 「ス○ッカーズは週に一箱、あとケ○ッグのバナナチョコ味が好きみたいで、これも週に1箱は買っていくねぇ」

 「……」

 「他にもチョコレートを何枚も買うし、あとね……」

 「……」




 俺は六花を部屋に呼び出した。


 「お前、一体何を管理してるんだ!」

 「すみません。全然見たこともなくて」

 「すみませんで済むかぁー!」

 頭をぶん殴る。



 「すぐに部屋を探せ!」

 「は、はい!」


 六花は駆け出して戻っていく。


 10分後。


 「何もみつかりません」

 六花は内線でそう言った。




 俺も部屋に行き、探した。

 響子はぐっすりとまだ寝ている。


 「ねぇな」

 六花が頭を押さえている。


 「お前、何か言いたいことがあるのか」

 「いえ、別に」




 響子の行動範囲は狭い。

 部屋になければ。





 俺は二つ隣の用務室へ行った。

 ここには未使用のカルテのダンボールや、入院記録の日誌や診療報酬の点数表などを入れたダンボールなどが大量にある。

 俺が幾つかのダンボールを持つと軽い。


 開けてみると、大量の棒飴の白い棒や、菓子の空き袋が出てきた。


 六花と一緒に、それらを響子の部屋に運んだ。






 響子が起きた。

 俺の顔を見てニコニコするが、足元のダンボールの数々を見て蒼褪める。


 「タ、タカトラ?」


 俺は六花を廊下へ連れ出した。

 手を叩き、床を蹴ったりする。


 「六花ぁー! お前がちゃんと見てねぇからだぁー!」

 「ああー、許してくださいー!」

 「お前はもうクビだー! 二度と響子に近づくなー!」

 「じゃあ、もう私は死にますー」




 「タカトラ! まって! 私が全部悪いの!」



 響子が慌てて駆け出してくる。

 泣いてる。



 俺と六花は肩を組んでニッコリ笑った。





 響子はベッドの上に座り、泣いて謝った。

 「黙れ! デブ!」

 「ひどいー!」



 売店での買い物は、六花と一緒にするようにさせた。

 少しは甘いものも買ってやる。

 まあ、ストレス発散だ。


 









 響子の体重は、甘いものをやめたら、2週間で適正体重よりやや下に戻った。

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