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星の家族:シャルダンによるΩ点―あるいは親友の子を引き取ったら大事件の連続で、困惑する外科医の愉快な日々ー  作者: 青夜


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仲良きことは。

 翌日の午後。


 俺は亜紀ちゃんと双子を連れて、栞の家に行った。

 双子には、できるだけでいいから「虎の穴」の幹部を集めてくれと言ってある。

 皇紀には


 「デートでも行って来い!」


 と言う。

 皇紀はすぐに電話して、出掛けた。

 あいつぅー。






 栞の道場にはうちの子どもたちの他、15人の子どもが集合した。


 「召集をかければ、絶対だから!」


 ルーが自慢げに言う。




 俺と栞は、まず幹部たちの技を見る。


 ブロックは、栞が用意してくれていた。

 一人ずつ実演してもらい、全員がブロックを割った。


 手刀ではなく、拳だ。


 栞が俺に小声で伝える。



 「全員、花岡の「震花」が使える」

 「人を殺せますか?」

 栞が頷いた。




 ハーに聞く。


 「幹部の中に、これ以上の技が使える奴はいるか?」


 「うん、筆頭幹部の早苗と小西はブロックを5個は壊せる」


 見せてもらう。


 台に乗せたブロックがすべて割れた。

 手前の一つはほとんど粉砕している。


 「極震花ね」

 「……」


 他にも、双子が教えた技を見せてもらう。


 『ブロックバスター』= 『震花』 = ブロックを割る

 『ブロックバスター改』 = 『極震花』 = ブロックを粉砕し、残り4つを割る

 『タートルガード』 = 『金剛花』に類似 = 身体を硬くし、打撃を軽減する

 『ガメラガード』 = 『金剛花』類似の延長 = バットで殴られても平気

 『スリップガード』 = 『流れ』に似ている = 相手の攻撃を滑らせて無効化する。但し、子どもたちが使っているものは未熟

 『花岡バスター』 = 『虚震花』 = 亜紀ちゃんと双子のみが習得。離れた敵を粉砕する




 大体、こんなものか。

 恐ろしい連中だ。


 双子に言わせれば、訓練すれば、もっと威力が増すそうだ。

 しかし、今の段階ではこれ以上進めるつもりはない。

 分に応じた技を習得させているそうだ。

 忠誠度によっては、次の段階を考える、と。



 


 しかし、仮に敵対勢力が出来た場合、双子軍団は飛躍するのだろう。





 俺は双子に聞いてみた。


 「花岡さんはほとんど教えてないと言ったけど、よく『花岡バスター』ができるようになったな」


 「うん、花岡さんが、皇紀ちゃんのロケットを壊したでしょ?」

 「ああ、そうだったな」


 「あの現象がなんだったのか、二人で話してたの」

 「すごいな」


 ルーとハーは、俺が驚いているのを見て、嬉しそうに笑った。


 「あのね、それでね、あれは「反物質」じゃないかって考えたのね」

 「!」




 「ほんのちょっとのことで、あれだけの破壊力って、そうそうはないでしょ?」

 「だから「対消滅」なんじゃないかって」


 俺は驚愕していた。

 栞はまだ理解していないが、真剣に聞いているようだ。


 「だから、ディラックの方程式から、どれだけの反物質があれば、あれだけの現象が起きるのか計算してみたのね」

 「そーしたら、ほんのちょっとだったのね」



 「でも、反物質は巨大な粒子加速器が必要なんじゃないのか?」


 「うん、でもね、それは無理矢理作る場合よね」

 「そうそう。多くの粒子をぶつける場合だからね」

 「ちょっとの粒子を、もっと効率よくぶつければ、反物質はできるのね」

 「エネルギーはそれなりに必要だから、地球の自転を利用するわけよね」


 「分かった、もういい!」



 俺は二人の話を遮った。

 双子は「その先」について話そうとしたからだ。

 栞には聞かせたくない。





 次は亜紀ちゃんだ。


 「亜紀ちゃんは、双子の動きから何が分かったんだ?」


 「え、あの、説明が難しいんですが、双子の動きを見ていたら、何をしようとしているのかが分かったんです」

 

 亜紀ちゃんは一生懸命に説明してくれる。



 「最初に足をねじるじゃないですか。あの動作って地面からエネルギーを得るためのものですよね。こう捻ると足裏からこう昇ってくるんで、膝をこう動かすと、そのエネルギーが収束して一気に強くなります。だから腰をこう動かして……」


 「それを一旦頭の上に流すと、今度は背中の上にある管みたいなものから足の付け根の間に下って、それを……」


 「最後に手首をこう動かすと、狙ったものの手前で、何て言っていいんでしょうか。特殊な状態が出来て、そのままぶつかって壊れる、というか」


 明確すぎる。

 もちろん、聞いたからと言って真似できる人間はいないだろうが。


 双子は聞きながら、何度も頷いていた。

 栞が俺の肩を痛いほど掴んでいる。


 合ってるらしい。



 俺たちはそこまでで解散し、買ってきたケーキをみんなに配って食べた。






 俺の前に幹部たちが集まって挨拶に来る。


 「今日は「タカさん」さんにお会いできて光栄です!」


 俺は質問責めにあい、閉口した。


 双子がそれを見て号令をかけた。


 「集合! 今日はタカさんに接触するのはそこまで! また機会を作るからね!」

 『はい!』


 見事な教練の成果だった。







 俺は花岡さんを誘い、道場の隅で小声で話す。


 「どうですか?」

 「どうですかって、どうすんのこれ?」


 「見なかったとか」

 「できるわけないじゃない!」


 「「うーん」」



 「取り敢えず、目的は果たしたということで」

 「まあ、そうね。私は現状維持を推奨します!」

 「賛成です」







 「でも、とにかく私は関係なさそうでよかったー!」

 「ちょっと、なんで逃げるんですか」

 「だって、「タカさん」さんの組織でしょ?」

 「頼みますよ」

 「響子ちゃんにでも相談したら?」

 「なんで響子が出てくるんですか」

 「だって、「タカトラのヨメ」じゃない」


 「ああ、分かりましたよ」

 「え、ちょっと」

 「花岡さんは俺の恋人でもなんでもないですからね」

 「待って、うそうそ」

 「あ、俺が持ってきたケーキは食べないでくださいね」

 「ごめんって! 冗談だからぁー」

 「知らない人に言われても」

 「ごめんなさい! 一緒に考える!」










 俺たちの遣り取りを、子どもたちが不思議そうに見ている。

 二人で肩を組んで、ニッコリと笑った。

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